第55話
ショッピングセンター。
土地が余っててある程度の人口の場所があると作られる大型施設だ。
駅前にもあるようなチェーン店、フードコート、ファッションブランド、ワンコインショップ。
ナノマシン医療ボットや映画館、スポーツジム、ディストピア食材だらけのスーパーマーケットなどもある。
通販の方が楽なので俺としては家族連れ専用の施設という印象だ。
戦艦の中にもあったが通販の方が楽だったしな。
「ショッピングセンター? 市場のことですかな? 我々の予想では古代の寺院であるとみなされてます」
学園長が追加の羊皮紙を机に置く。
惑星日本の絵師が描きそうなタッチの絵だった。
模写したので微妙に違うのかもしれない。
するとくっころちゃんが「ぶっ!!!」とむせた。
「壁の絵を模写した図です。クッコロくん、どうしたかね?」
「い、いえ、なつかしいなと……」
冷や汗を流してぷるぷるしてる。
明らかに挙動不審だ。
うん、知ってやがるな。
「くっころちゃん。もしかしてこれ知ってる?」
「あ、あああ、うん、いえ。シラナイヨ」
「知ってるよね?」
「シラナイ」
ぷいっと顔を横に向けた。
うん、知ってるな。
「検索したよ。2000年くらい前の女の子向けのアニメみたい。『戦車男子』、キャッチコピーは『俺の120ミリ砲で今夜寝かさないぜ』だって」
「なにその直球の下ネタ」
「この頃って下ネタが流行ってたみたいよ」
「違いますって!!! 90式くんは一見チャラ男風なんですけど本当は一途な男の子で……」
「へえ、詳しいじゃん」
「はわわわわ!」
焦るくっころちゃん。
アニメ好きだったのね。
あおるように性格の悪いセレナが歌い出す。
「120ミリ120ミリ120ミリ120ミリ! 水冷2サイクルV型10気筒ターボチャージド・ディーゼルが今日は寝かせないZE♪」
「へー、えっちじゃん」
またもや直球の下ネタ。
嫌いじゃないよ。
そういうの。
「ギャー!!! だから違う!!! 純愛なんですっての!!!」
くっころちゃんがぽこぽこ俺を叩く。
「セレナ、やめてあげなさい。俺もエッチなコンテンツの視聴記録見られたら死ぬ」
「え? 把握してるよ。お兄ちゃん」
「いやー!!! やめてー!!!」
と醜い言い争いをしてると学園長が驚いた顔になる。
ガクガク震えてる。
「まさか……それは古代語。そうか! あの遺跡はエルダーのものだったのか!!!」
「あ、そうか。歌は日本語か。いつもこっちの言語も日本語に翻訳されてるから気づかなかった」
「それはエルダーの祝詞ですね! そう、それを含めて複数の祝詞が常に流れているのです。やはりエルダーの寺院でしたか!」
店内BGMが流れっぱなしか。
真っ先にダメになりそうな放送施設が生きてるのか。
「発見当時は調査隊も派遣する余裕もありましたが……今では怪物に占拠され調査どころではなくなりました。どうにか奪還したいのです。あの何万、何十万もの命を奪ったリッチを滅ぼしたマコト様なら可能であるかもしれませぬ」
「わかりました。こちらでも調べてみます」
具体的に「いつ」とも「できる」とも言ってない。
いつでもできるし、しないかもしれない。
これこそ惑星日本人の秘技「タスク棚上げの術」である。
外に出て学園の食堂でみんなと話す。
「コロニーが作ったショッピングセンターかな? お兄ちゃんどうする?」
「ショッピングセンターを奪還するとなにができるか次第だな。空港とショッピングセンターを鉄道で繋いで拠点人にするとか?」
「お兄ちゃん! 全面改修してホテルリゾート併設してゆるい生活するとか! プール欲しい!!!」
と言うとシャルロットとサーシャが困った顔をする。
「マコト殿、エルダーの寺院ではないのか? それなのにリゾートとは……」
「そうですよ。エルダーによる世界征服計画のための施設ではなくて?」
サーシャさん、だんだん思想が過激な方向に進んでいるようだね。
真実を話してがっかりさせておこう。
「この施設は要するに市場。エルダーは、やたら大きな市場を作るのが好きなんだ」
「サーシャちゃん、同じようなお店をいくつも集めて売上を競わせるんだよ。そうするとお互い切磋琢磨するんで良い物を安く売ることができるんよ」
「なるほど……エルダーは合理的なんですね」
「合理的すぎて周りの小さな店つぶしちゃって地域ごとダメにしたんだよねえ。なんでもやりすぎはよくないよね」
「そうそう。エルダーも完璧じゃないんよ。そもそも繁栄と進歩の末の絶滅戦争だしね。お兄ちゃん見てればわかるでしょ」
「誰が超絶美形の最強戦士じゃい!!!」
「言ってねえよ!!!」
とお約束のやりとり。
それにしてもショッピングセンターに昔流行ってたアニメねえ。
とりあえず調べようか。
「地図の位置にドローン飛ばしたよ。少ししたらデータが送られてくるよ」
「あんまり面倒だったら爆破してもいいぞ」
「爆破!? マコト殿なにを言ってる!?」
シャルロットちゃんが止める。
「え? だめ?」
「だめに決まってるだろ。我々の祖先の歴史だぞ!」
「そっか、じゃあ了解。やっぱリゾート計画かな」
「プールいいよねえ、お兄ちゃん」
「いいよなあ。そういや空港どうなったっけ?」
「システム周りは修理したよ。ただ肝心の鉄道と飛行機は復元できないかなあ。当時の設計図もパーツもないし」
「最新型の飛行機は?」
「問題なく使えるよ。今のところ必要ないだけで。鉄道はレール交換かなあ」
なるほどな。
ふと見るとシャルロットの顔が期待に染まった。
「シャルロット……来る?」
「うむ!」
来たかったらしい。
シャルロットなら大丈夫だろう。
「今度はバルガス家も作戦参加をお願いします」
とサーシャ。
ああ、そうか手柄とかそういうのがあるのか。
「うん、わかった。じゃあ、お父さんに手紙出してくれる?」
「まあ、お義父様なんて!」
うんツッコミ入れるのやめとこ。
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