第49話

 共和国宇宙海兵隊。

 兵器の進化による戦略の変化によって、陸海空軍が宇宙軍に統合されてできた存在である。

 要するに筋肉と青ひげとケツアゴ持ちなブラザーたちがヒャッハーする組織である。

 みんな死んだけどな!

 説明終わり。


 ごはんを食べてクラウザーくんたちと別れた。

 これから訓練開始である。

 なんでも隊の事前準備で1週間休みくれるんだそうだ。

 なのでこれから訓練に入る。

 さてさて、では宇宙海兵隊式の訓練とは?

 オンラインビデオ講習しか受けてないのでわからん。

 戦艦修理の溶接くらいしか憶えてない。

 あと隔壁用のジャッキの使い方と火災時の樹脂消火器の使い方とか。

 あと式典の行進くらいか。

 でもやらないからなあ。

 だって俺、工兵だもん。

 なので訓練は惑星日本式にする。

 惑星日本式は実に単純だ。


「よっし、サッカーしようぜ!!!」


「は?」


 セレナとくっころちゃんが同時に声を出した。


「やだなー。真面目に訓練しろ? するわけないじゃん。惑星日本人なんて基本遊んでるだけだぞ」


「うっわ……お兄ちゃん、ダメ人間すぎる……」


「いいじゃん。別に成績悪くても困らないし」


「そりゃそうか……」


 セレナは納得したがくっころちゃんは変な顔してる。

 もう信用ないな。


「よーし! みんなー集まれー! 集合! 終わったらおやつ食べるぞー」


「わーい!」


 子どもたち大喜び。

 そうそう、初等学校くらいの子なんて最低限の学力と規律に体作りだけすればいいの。


「たしか……惑星日本のサッカーって……」


 なによ、くっころちゃん変な顔して。

 もうやだなあ。警戒して。

 俺はボールを練兵場の地面に置く。

 まずはルールを説明。


「惑星日本のサッカーは! 最後まで立ってたものが勝利!!!」


「はいいいいいいいいいいッ!!!」


「バズーガ○ャンネル!!!」


 ジャ○プ神話体系。

 出宇宙前の地球で多数製作されたとされる神話の数々。

 その多くが漫画や小説などの形で残されている。

 現在ではすべて史実であったとされるのが定説である。

 この技もその中のサッカー漫画の技の一つだ。

 もちろんすべて史実である。

 なぜなら古代人の技を我が惑星日本では蘇らせたからだ!!!

 我々にできるのだから史実であるに違いない!!!

 それ以上の証拠は必要ない!

 証明完了!!!


「ぎゃあああああああああああああッ!」


 三人ほどが飛んでいった。


「おま、死ぬだろ!!!! 少しは手加減しろよ!!!」


 残りがぶーぶー文句を言う。


「ふ……、大丈夫だ。死なないような体にした」


「てめえ、俺たちになにしやがった!!!」


 一番背の大きい子が叫んだ。


「ナニモシテナイヨ」


「嘘だああああああああああッ!」


「安心しろ。手足がもげたくらいだったら治るから」


 断面のデコボコを除去してくっつければすぐにくっつくよ。

 短くなった分もあとでナノマシンが直してくれるし。


「怖えよ!!!」


「あーやっぱり!!! 惑星日本ってあの頭おかしい住民しかいないって評判の日本じゃないですか!!!」


「くっころちゃん……お兄ちゃんはその惑星日本最強の人鬼なのよ……残念ながら」


「ぴいッ! ひ、人鬼!!! あの惑星侵略を一人で行うって言われてる! 出会ったら命がないので有名な!!!」


「うん。それ。今は仲間だから安心して。今だってお兄ちゃん、たぶん本当に遊んであげてるだけだと思うよ」


「死人出ますって」


「組み手とかじゃないから大丈夫だと思う。ほら、さっきだって吹っ飛んだだけじゃん。本気だったら遺体が残るかどうかすらあやしいし……」


「ぴいッ! とんでもない人の持ち物になっちゃったー!!!」


「あ、そうか。くっころちゃんって、まだ人として認められてないころの端末だったわ。大丈夫だよ。うちらAIはテスト受かれば人権認められるし、くっころちゃん人間として認められてるから」


「ぴいッ! 知りませんよそんなこと!」


「だって捕虜が人間か否かってのは最初に確認するでしょ。で、共和国側に投降したから共和国海兵隊所属で共和国市民。体もあるから人間扱いね。市民IDはナノマシンが脳に精製したよ」


「なんかやたら高性能な端末があると思ったら脳の中ぁ!?」


「そそ。好きに使ってね。あ、共和国への背信行為は処刑なんで気を付けてね」


「ぴぃーッ!!!!」


 と二人がかわいいやりとりをしてると、全員がノックダウンした。

 うん、終了だな。


「はーい終了。落ち着いたらドリンク飲んでおやつ食べてねー」


 と優しく言うと子どもたちが大騒ぎした。


「し、死ぬ。絶対死ぬ」


「死なないよー」


「こ、殺される」


「サッカーで死ぬわけないじゃん。やだなー。野球ならたまに死ぬけど。マウンドで切腹したりとか」


「いやじゃー!!! 殺されるのはいやじゃー!!!」


「だから死なないって。大丈夫だ。君らには精霊の加護を与えた。肉体をいじめればいじめるほど強くなるぞー」


「鬼かああああああああああッ!」


「だいじょうぶだって。ほれ食え。食えば食っただけ強くなるから」


「こっちもなんか盛られてるー!!!」


「ビタミンとタンパク質だけだっての。甘くて美味しいぞ」


「く、くそ、食べちゃダメだってわかってるのに勝手に手が! 手がー!」


「肉体の急速修復で飢餓状態になるからな。さっさと食べろー」


 で、おやつタイムも終わり。

 そしたら子どもたちが帰ろうとするのよ。


「うん? どうした?」


「いや撤収準備を」


「なんで?」


「え?」


「次はラグビーやるぞ。俺対全員な。最後に立ってたやつが勝ち」


「嘘だろ……」


「いやだって軽く遊んだだけじゃん。次はもうちょっとハードにやろうぜ!」


「いやああああああああああああああッ!!! 心が壊れちゃうー!!!」


「まったくそんな泣き言言って。ちゃんと脳内物質操作して恐怖を感じないようにしてるっての!」


「ふざけんな!!!」


「よーし、思いっきり遊ぶぞー!!!」


 はい鬼タックル! ちゅどーん!!!


「ぎゃあああああああああああああッ! てめえ憶えてろ! いつかぶっ殺してやる!!!」


「おうおう、その調子その調子! ほれパス!」


 ちゅどーん!


「ぎゃあああああああああああああッ!」


 思いっきり遊んであげた。

 はっはっは、休みのうちに惑星日本の一般人レベルにするぞー。

 安全にね。

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