第47話
茶番で出迎えられた後、学園長の部屋に通される。
学園長は痩せてて髪が真っ白のおじさん。
額にしわの寄った厳しい顔だ。
たぶん軍人じゃないかな。
背筋がやたらピンとしてる。
「はじめまして。学園長のモーガンと申します」
角度45度で頭を下げた。
最敬体だ。
こちらが地位が上なので慌てて挙手の答礼。
……上官の立場で敬礼する日が来るとは思わなかった……焦ったよ。
こちとら本当だったら90歳の定年までに曹長行けばいいくらいなんだぞ!!!
「我が校は士官を養成する学校です。一年ないしは二年で子どもを戦場で使い物になるようにし、三年以降は専門家を養成するのが目標です。幸いマコト様は実戦経験豊富とのこと。どうか将来の人類の繁栄をお願いいたします」
やだ怖い。
このおじさんガチの人だ。
ガチ軍人。
「マコト様はあまりこの世の中についてご存じないとのこと。社会情勢はおいおい授業で取り上げるとして、まずこの学校の現状から説明いたしましょう」
こくんこくん。
喉から手が出るほど欲しい情報だわ。
「まず我が校は7割が騎士階級。2割が平民。1割が貴族となっており、貴族の中でも男爵以上の領主階級が3割といったところでしょう」
へー、貴族ってめっちゃ少ないのね。
話を聞く限りシャルロットちゃんってかなり偉いのね。
「平民と騎士の半分は妻帯者。彼らは13歳から18歳で結婚しますので」
おおう!
13歳で子ども?
想像がつかねえ……。
童貞と知られたら人生終わるかも……。
ひいいいいいいいいッ!!!
「子を作り次世代の兵を世に残すのは義務ですからな。我が学園ですと卒業までに三人ほどと婚姻するのが普通ですな」
童貞の生きる場所はこの世にないのか!!!
「領主未満の下級貴族も同様。寡婦の面倒を見るのは貴族の義務ですからな」
おおう、たしかにこんだけ危険な世界だと旦那さん死にまくりの奥さん余りまくりなのか。
男に生まれただけでハーレム確定か。
ただし死亡率ものすげえ高いけど。
「相手一人あたり平民で5人の子をもうけるのが義務でございます」
産めよ増やせよLV99ナイトメアモード。
「領主以上の上流階級では血統の維持が必要。在学中に子を作るのは義務ではありませんが……」
これ、子どもいないと一人前扱いされないやつな。
社会的な抑圧が強すぎて全然うれしくないハーレムゥ!!!
これだけ社会的圧力バリバリで産めよ増やせよなのに人口爆発しないのが恐ろしい。
「マコト様もエルダーとして貴族の模範になるようお願いいたします。できれば在学中に5人ほど。愛人の斡旋ならいつでもご相談ください」
と言われて説明終了。
結局、さっさと子ども作れとしか言われなかったな……。
外に出て一言。
「どえらいところに来てしまった……」
どおりで街にえっちなお店がないはずだ!!!
えっち自体に金銭的価値がねえの!
そんな余裕もねえの!!!
男性も女性も戦略物資扱いだ。
酒がやたら高いのも、やたら酒に命かけてるのも、全て男性の寿命が短いからだ!
だって酒で死ぬ前に人型労働生物と戦って死ぬもん!
どうりで庶民の中に高齢者いねえわけだよ!
さらに言えば、やけにぽんぽん嫁あてがわれるなと思ってた。
ハーレムが実質強制やんけ!
少子化が行くところまで行ってクローンで人口水増ししてた共和国もたいがいだけど。
ここはもっともっとひでえ!!!
とツッコミを入れまくったらやけに落ち着いた雰囲気の男子生徒がやってくる。
「マコト様。二年のシードです。迎えに参りました」
ムキムキインテリである。
たぶんこの惑星じゃ絶世の美形だろう。
もうね、男らしさ=美だからね!
もう俺わかっちゃったよ!!!
「シード先輩よろしくお願いします」
押忍パイセン。
童貞です。
「ここの文化は驚かれたでしょう。王族や上級貴族の方々はみな同じ表情をしますよ」
「特に自分は特殊な環境で育ったもので」
「ははは。でも野蛮だなんて言わんでください。騎士階級の連中は学園に入る前に上の兄弟全滅なんてのも珍しくありませんからな。そういう意味じゃ、アルフォート、同じチームの仲間ですがあれはよくできたヤツです」
……シャルロットちゃん。もしかしてモテる?
やべえ、童貞がバレたら……切られちゃう!?
「自ら騎士に志願する。そうそうできるものじゃありません。……嫁にしようとは思いませんがな。ガハハハハ!!! 冗談は置いて、仲良くしてください。お願いします!!!」
そう言ってパイセンは頭を下げる。
言ってる文脈はセクハラそのものなのだが、シャルロットちゃんを心配してるのはわかる。
男友だち感覚で。
かわいいと思うんだけどなあ……。
「ええ、幸せにします」
どうやれば幸せにできるかわかんねえけどな!!!
こおこは開き直っとこ。
「さすが勇者どの。なにか困ったことがあれば言ってください。かならずや駆けつけますので」
そう言って手を差し出してきたので握手。
この辺の文化は共和国っぽいな。
帝国式だと「シード学生! 大義である!!!」「ははッ!!!」みたいなやりとりだしね。
当方にバカ殿をやり通す自信はない。
そしたらセレナとくっころちゃんがやってきた。
「ういーっす! お兄ちゃん! 聞いたよ! ハーレムハーレム!!!」
「ギャハー!」と指さしやがった。
くっころちゃんは「ねえ、やめましょうよー」と止める。止められないけど。
「その、この可憐なお二人は?」
シードパイセンががっつく。……あんたロリコンやろ。
「精霊のセレナとクッコロだ」
「やっほー! パイセン! よろしくー!」
「どうもよろしくです」
パイセンはクッコロちゃんの手を取る。
「私は二年のシードです。お嬢さん、ご婚約は?」
きらんっと歯が光った。
自分も同じことしたが、他人の目から見ると……きつい。
もうやらないようにしよう。
「はわわわわわ! いません!!!」
と言うと勝利したという顔になった。
するとシードパイセンは
「去年子どもが生まれてね。どうだい? 7人目の妻に」
その刹那、くっころちゃんのドロップキックがパイセンの顔面に直撃した。
俺でなきゃ見逃しちゃうね!
すっ飛んでいくパイセン。
ふぅー、ふぅーと息を荒くしてブチ切れるくっころちゃん。
くっころちゃんはパイセンのノックアウトを確認して叫ぶ。
「7人目かーい!!!」
「え、でもくっころちゃん、お兄ちゃん相手でも4人目だよ」
「マコトさんはまだ負い目に思ってるからいいの!!! こっちは論外でしょ!!!」
こうしてパイセンを蹴り倒した三人目の危険人物にくっころちゃんが指定されたのであった。
めでたしめでたし。
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