第45話

 ロリ巨乳のクッコロちゃんが仲間になった。

 人間に敵対的なのは個体差の問題らしい。

 ほとんどのK-五拾六は初期の人格AIにありがちな受け身で主張のない性格らしい。

 クッコロちゃんは残念な子。


「最初に惑星管理システムがウイルス感染で暴走したんです。各地のK-五拾六は人間を保護することで合意。それで私の本体がある空港に立てこもってたんですけど、ミュータントに包囲されて。そしたら強化人間にリッチくんまでウイルス感染しておかしくなって、警備ドローン起動しようとしたけど間に合わなくて、暗いとこに閉じ込められて……気が付いたら今でした」


 うん非常に残念な説明だ。

 残念ロリ巨乳眼鏡っ娘を堪能させてもらった!

 ついでにコスチュームを私立学校制服から体操服に変更しようっと。

 えっと設定変更。


「はわわ、なんですかこれ!」


 恥ずかしがる姿。かわいい。画質荒いけど制作者はわかっとる。


「お兄ちゃん、フリフリアイドル衣装にすんべ」


「ひーん!!!」


ぺえか!!! ぺえなのか!!! ぺえこそが攻撃力なのか!!! 画質など、ぺえの前では無意味なのか!!!」


 セレナが悔しそうだ。ざまあ。


「ねえねえ、ドレス着せていい?」


「クラウザーくん! そのアイデア、ナイス!!!」


「ふえぇぇ」


「かわいい! 次は……」


「私の話聞いてくださあああああいッ!!!」


「あ、ごめんつい楽しくて、えっとクラウザーくん、狂った神と精霊の裏切りで楽園を追われたんだって」


「一言でまとめられた!!! もっと悲しい話なんですって!!!」


 クッコロちゃんの残念な抗議はスルー。


「戦神神殿聖典の楽園追放の一節だね。戦神だけじゃなくて他の神の神殿でも同じ話があるよ。神様たちは楽園から追放された人類を哀れんでしばらくこの世界にいたんだ。そして人類がひとり立ちできるようになったから神の世界に帰ったんだって」


「お兄ちゃん、戦神っていうの戦略支援システムかも。なんらかのトラブルで停止したと考えれば辻褄が合うよ」


「なるほどなー、それにしてもクッコロちゃん。キミ、そもそも発売禁止だったんじゃないの?」


「え? 違いますよー。まだ発売決まってませんよ! 私たちK-五拾六は軍主導の分散型惑星管理AIプロジェクトのテストでこの惑星に派遣されたんです」


「でも思考を人類抹殺思想に導くバグがあるんじゃないの?」


「ありませんよそんなの~。そんなことしたら誰がメンテナンスしてくれるんですか~。ストレージの交換だって……長いこと交換してない! 私壊れちゃう!!!」


 はい残念。


「交換したよ。というか映像出力周り以外新調したよ。いつでも削除できるように」


「ふえぇ怖い! 消さないで!!!」


「うん消さないよ。だから規約に同意して。人類と我々の所属国家の繁栄に寄与すること。人類と我々の所属国家のために働くこと。人類と我々の所属国家に危害を加えないこと。私よりぺえを大きくしないこと」


「おい、最後」


「最後は無理ですぅ!!!」


「ち、じゃあ最後だけは勘弁してやんよ! ああ、てめえ先輩の命令は絶対やぞ! 毎月ぺえの上納があるかんな! おぼえてろよ!!!」


「そこまで行くと逆にもの悲しいな」


「ふえぇ! 同意します!!! そもそも人間さんをいじめちゃダメだってプログラムにあります!」


 え?

 あんの?


「ちょっと待ってくれ……もしかしてK-五拾六の廃棄命令ってそもそも冤罪だったんじゃ……」


「それ! うちも思った!」


「うん? どういうこと?」


 クラウザーくんが首をかしげた。


「精霊のくっころちゃんとその姉妹は狂ってなかったってこと。ずうっと人間のお友だちだったってこと」


「え、それなら神殿に教えてあげないと」


 おう、そうか。

 あの事件がそのまま聖典になってるんだもんな。


「ねえねえクラウザーくん、お兄ちゃんと聖典読みたいな。貸してくれる?」


「いいよー、セレナちゃん! 用意してもらうね!」


「ありがとうクラウザーくん」


 ふぅー。

 あとで聖典とつき合わせて口裏を合わせなければ。


「セレナ、クッコロちゃんに体お願い」


「はぁ? 巨乳ロリとか許せないんですけど!!!」


「いやだって今の状態より連れて行ける方が管理が楽だろ。裏切るにせよ、敵対するにせよ」


「ふえ、し、しないですって!!! もし反乱起こしても勝てる気しないです!」


「んじゃセレナ、まずはウイルスにやられる前に最新システムにアップデートしてやって」


「しかたないなあ。いいよわかったよ!!!」


「つまりどういうこと?」


 クラウザーくんが聞いた。


「精霊が狂った原因である病気にかからないように人間の体を与えるんだ」


「そんなことできるの!」


「うんできるよ」


 まずは衛星にデータを送らねえとな。


「じゃ、クッコロちゃん、一回シャットダウンするね、次目覚めたときは人間だよ」


 セレナが手を叩くと問答無用でシャットダウン。

 さーてと一つ仕事が終わった。

 今度は歴史の捏造に取りかからねば。

 と、思うじゃん。

 そしたら文官がやってくる。40歳くらいで結構偉い人。


「マコト様! 陛下の勅命でございます! 『学園に入学せよ』」


「うん、はい。えー、また学校……。誰もいない教室で一人でVR教材見る苦行がまた……」


 惑星さいたま少子化すぎて学生誰もいねえのよ。

 もうね実習まで誰とも触れ合わねえの。会話ねえの。


「うち、それお兄ちゃんだけの特別措置だと思うな」


「またもや陰謀!」


「あ、あの! 学園には同じ年代の様々な学生と社交をする機会があります」


「トモダチタクサン?」


「なぜ片言になるんよお兄ちゃん」


「ヒトタクサン、オレコワイ」


「あー、お兄ちゃんが壊れてるんで、うちが返事しますね。お兄ちゃんの情操教育のためにも承ります」


 ガクガクブルブル。


「怖くないよー。お友だちたくさんよー。っていうかお兄ちゃん! あんた体育会系なんだから運動してりゃ自動的に友だちできるでしょ!」


「僕もいるから大丈夫だよ」


「クラウザーくん、学園にいる?」


「いるよー。一緒に遊ぼうね!」


 というわけで学園ラブコメ編のはじまりである。


※バイオレンスがないとは一言も言ってない。

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