第44話

 王都に帰って報告。

 セレナが「手柄を上げすぎて暗殺の恐れが~」なんて言ってたが、それは杞憂だった。

 俺たちは持ち帰ったデータを翻訳して報告書と一緒に提出した。

 翻訳したデータの内容はリッチの正体に、空港施設の詳細、それに王の一族がエルダーの血統である事。

 これに王様はたいへん喜んだ。

 ゲスい顔でにっこにっこしてた。

 セレナの「自分、半分精霊ッス! オナシャス!!!」という主張を全面的に受け入れるくらい喜んだ。

 王族がエルダーの血統であることが証明されたからだ。

 書いてある理論はわからんものの、証明しようのないものの証明が出たもんね。

 本音では疑ってたんだろうね。

 だから一族に本物のエルダーである俺を取り込んだわけだ。

 この惑星の文明はAIの暴走で科学技術を失った。

 DNAすらもうわからんとこまで文明を失ったようだ。

 だけど説明すれば論理的なのがわかる。

 どうしても説明しきれないところは『エルダーの超技術です』で納得。

 技術屋さんを納得させるのは難しいかなと思ってたけど、案外楽だった。

 そりゃ王様が「認める方向で行け」と言われたら認めるよね。

 いまは必死になってセレナに教えを乞うている。

 羊皮紙にレーザー刻印はクッソ面倒だったが、がんばった! セレナが。

「紙導入しないの?」ってセレナに聞いたら「現地の技術レベルだと川汚すからダメ」だってさ。

 かと言って共和国の技術を渡すと文化が追いついてない。

 やらかして絶滅する可能性まであるとのこと。

 さすが絶滅した国が言うと説得力が半端ねえぜ!!!

 泣けるー!!!

 ……技術の導入難しい。

 で、クラウザーくんとキャッチボールして遊んでたわけよ。

 シャルロットもサーシャも忙しくて遊んでくれないから。

 男どうしはいくつになってもくだらない遊びで盛り上がれるからいいよね。

 あと昼間にできる花火、煙幕のやつ用意した!

 セレナが「バカなの?」ってマジ顔で聞いたけど用意した!


「クラウザーくん、最近どう?」


 キリッ!

 どこに煙幕投げ込もうか?

 え? やらない? 了解。


「怪物がどこかに去って行って平和になったらしいよ。やったねマコトくん! いろんな貴族に恩を売ったよ!!!」


 平和が一番だよねえ。平和が。

 アホどもが知らんうちに戦争で絶滅するとか悪夢そのものだよ。


「金がすごく役に立ったって!」


「へぇー、なんで?」


「うん。金貨作って諸侯に貸すんだ。無利息で」


「無利息って国大丈夫なの?」


 少しは取らないと逆に経済がまわらなくなりそう。


「いいのいいの。金は王国との決済だから、基本的には銀貨と銅貨に両替するんだ。だから両替の手数料だけもらえばいいんだ。警護の騎士の代金もあるし」


 銀貨の流通量少ねえなと思ったら、大きな商いとかの大口決済専用なんだって。

 銀の加工は難しいらしくて苦肉の策だね。

 なもんで銀貨への両替はわりと高い。

 なお民間の両替商もいるけど、闇金に近い。まだ銀行になる前の存在。

 あまり上品な商売じゃないらしい。

 貴族は王様から借りると。で、両替手数料で結構取られると。

 さらに金の移送に使う警護の騎士のレンタル代もあるわけね。

 実質利息を先取りするシステムなわけだ。


「なるほどねえ。そうやって人件費とかの諸経費捻出するわけね。うまくできてるわ……」


 なかなかのヤクザっぷりである。

 生かさず殺さず。

 金を返済中は国の言うことなんでも聞かないといけないわけだ。

 やりすぎたら反乱起こされるけど、マイルドな「お願い」だったら結構な無茶もお願いできる。

 持ちつ持たれつ。と言いながらの国は絶対に損をしない搾取構造。

 うーん、鬼だわ。

 諸行無常を噛みしめてるとセレナが走ってきた。


「お兄ちゃん!!! やったぜ!!!」


「なにがよ?」


「K-五拾六の起動に成功した!!! ひゃっほー!!!」


「なにやってんのお前ェッ!!!」


 新たなトラブルの予感しかねえよ!


「それ精霊の話?」


「そうそう。クラウザーくんのご先祖様に味方して閉じ込められてたってやつ」


「えー、かわいそう。はやく出してあげてよ!」


 K-五拾六まで狂ってたら嫌だなあ。


「ま、大丈夫だよ、お兄ちゃん。うちの方が強いし」


「了解」


 三人でセレナの研究所に行く。

 研究所なんて言ってるが城の空きスペースにプレハブの小屋を建てただけだ。

 中に入るとセレナはホログラム再生機を出す。


「この時代って規格が乱立しててさあ、もうね端子の規格探すだけで一苦労よ」


 ぶつくさ文句を言いながら再生機に繋ぐ。

 スイッチを入れるとブーンというBGMが流れタイトル画面が映された。

 NowLoadingが表示されてしばらく待つとホログラムのアバターが映し出された。

 ロリ巨乳。眼鏡装備。

 ギリギリギリとセレナが歯ぎしりする音がここまで聞こえた。


「ふええええええええええぇッ! 暗いよ狭いよ怖いよ~!!!」


 第一声は帝国標準語の泣き言。

 あ、残念な子だ。

 俺とセレナは直感で理解した。


「ぐすっぐすっ……ここはどこ?」


「あんたが封印されてから二千年後のコロニーだよ」


 セレナが説明する。


「ふえぇ。あなたたちは誰? 認識票が読み取れないよぉ……」


「うちらは共和国の生き残りだよ」


「ぴえッ!!! 共和国のテロリスト!!! ひーん! あたし消去されちゃうんだー!!!」


「しねえよ! はい自己紹介! 私はセレナ、そこの陰キャ脳筋が白銀誠。こっちの美少年はクラウザーくん!!! はい、ここの言語パックインストールするから挨拶して!」


「インストール完了。はじめまして! クッコロです!!!」


 あー、K-五拾六クッコロね。

 クッコロ大魔王ね。

 うん、完全に理解した。

 ……セレナさん、「久しぶりにキレちまったぜ」って顔やめてくれませんか。かなり切実に。

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