第40話

「さあダンジョンの攻略だ!!!」


「おーっ!」


 と俺とセレナは声を上げた。

 防衛とオリハルコンは後続隊に引き継ぎ。

 次は出発の用意だ。

 セレナの服は女性軍服Sサイズに変化した。

 野郎の軍服はここ数百年変化がないのに、女性のは一流デザイナーの監修だ。

 やたら華やかである。

 シャルロットがチラチラ見てた。


「……シャルロット、服いる?」


 と聞くとブンブン首を縦に振った。

 そんなに欲しかったのか……。

 絶対もめるのでサーシャの分も発注。

 あとセレナの着替えの分も発注。

 特急便で服が来る。

 中を見ると鎧も入ってた。

 うん、鎧?

 この手の装甲は時代遅れだ。

 誰のだろう?


「あ、これ、ゴードンさんにってお姉ちゃんが」


「お姉ちゃん?」


「うん、判事AIのかなただよ。立法のシリウス、司法のかなた、そんでうちが行政のセレナ。三人まとめて三大AI。偉いんだぞ! で、上に統合AIマザーがいると」


「ふーん、三姉妹ってことか」


「そういうこと。んで、三人ともお兄ちゃんの嫁」


「はい?」


「プロジェクト・ノア。文明崩壊時の立て直しプログラムだよ。優秀なDNAで構成された肉体を持つAIとの交配で人類を保護するの」


「はい?」


「だからお兄ちゃんと子ども作るじゃん。で、別のAIが遠いDNAで体作って二世代目と交配するじゃん。で、AIが一巡するころには遺伝子の多様性が確保されて絶滅することなくなるじゃん」


「なにそれ怖い」


「幸い、この惑星には現地人がいるんで、あちこちに種をばらまくことを推奨するよ。ただなんらかのエラーがある場合に備えてAI組でお兄ちゃんの血統を維持するよ」


「種馬やん」


「うん、やったね一番の任務は種馬だよ!」


「やだ怖い!!!」


「でもしかたないのよ。現地で種ばらまきまくるコースも提案されたんだけど、シャルロットちゃんを見る限りDNAの変異が認められるし」


 たしかにシャルロットをはじめこの惑星の原住民は耳が尖っている。

 それがなんらかの遺伝なのか、病気や寄生虫のせいなのかはわからない……。


「ちなみにゴードンのおっちゃんの体を調べたところ、顔ダニと地球型のサナダムシを除いて寄生虫はいなかったよ。潰瘍と痔は治療したし。痔は馬乗りすぎ悪化したのな」


 ゴードンの兄貴……ごめん!

 本当にごめん!

 デリカシーのない妹で!!!


「で、それを報告したらお姉ちゃんがゴードンのおっちゃんにって」


「へー」


 その辺にいた騎士に頼んで持っていってもらう。

 俺はシャルロットに服を渡す。


「はいシャルロット」


 するとシャルロットは上機嫌にくるくる回る。

 すごくうれしかったらしい。


「か、感謝する!!!」


 まだどことなく態度が固いが、彼氏彼女っぽくなってきたと思う。

 健全な恋愛サイコー!!!

 俺は心の中で後方腕組みおじさんになりながらうれし泣き。

 するとシャルロットは照れながら言う。


「ま、また遊びに行こうな!」


 心の中の後方腕組みおじさん号泣。

 で、今度はサーシャ。

 サーシャはテントのテントの前に行くといきなり引きずり込まれる。


「御用ですかア・ナ・タ」


 今度は心の中の宙づり亀甲縛りおじさんがビクンビクンする。

 不健全な依存関係サイコー!!!

 なおテントの中には女官さんがいたが頭を下げて外に行ってしまう。

 なぜかサーシャは胸をなで回す。

 ら、らめ、あたまへんに……。


「うふふふふ」


「あ、あのさ、これ服」


 も、もうらめ……。


「うれしい」


 と思ったその瞬間、スパコーンと頭をはたかれる。


「なーにしとんじゃ! バカお兄ちゃん!!!」


 それは日本の心。ハリセン。

 衛星の職人ロボットが一つ一つ丁寧に作ったもの……じゃねえよ!!!

 ふ、ふう、危なかった!

 でかしたセレナ!


「あらあら、うふふ。邪魔が入っちゃった♪」


 そう言うとサーシャは扇子で顔を隠す。

 どこまで計画の内だったのか。

 この手の平で転がされてる感よ。


「サーシャちゃん、うちのバカ兄がごめんね」


「セレナちゃん。わたし、あなたのことも好きよ」


 そう言うとサーシャは抱きついてぽんぽんと頭を叩く。

 なお胸に当たる形になっていて、なぜかセレナの表情は絶望の色に染まっていた。

 あったんだな……ぺえ。


 グダグダになりながら出発。

 戦闘員じゃないサーシャには後続部隊の指揮を頼んだ。

 ダンジョンの場所は衛星写真から位置を特定済み。

 森の奥に遺跡のようなものがあったのだ。

 場所がわかっているため遺跡の近くまで一日で到達。

 ゴブリンが守ってるということもなく野営の用意。

 その間、俺とセレナは偵察。

 遺跡はツタに覆われてあちこち壊れていた。

 ツタだらけの柱を見てセレナがつぶやく。


「帝国様式、というか古代オリエント様式と思わせておいてアジア圏の文明ちゃんぽん。ホントッ、帝国人って見栄っ張りだよね!!!」


「黄金のビリケンと黄金のカーネルサン○ースもたいがいだぞ」


「そうなんだけどさー! わかる!? この悪趣味さ!」


 なんか歴史で習った古代都市全部盛りみたいだな。

 なんか小さなピラミッドあるし。

 ……うーん、さびれた温泉街の町おこし感がある。

 もしくはダメな学校の文化祭。

 両方行ったことないけど。

 工兵学校はサーバーがっちゃんこやってるだけでそういうのなかったし。

 思い出し鬱。


「鬼瓦権蔵の趣味だったんじゃね?」


「そうだといいんだけどさ……あ、あれ」


 セレナが指さした方を見ると、金属製の目玉がふよふよ浮いていた。

 まだこちらには気づいてないようだ。


「旧型の監視ドローン。骨董品だよ」


 そう言うとセレナは指を指鉄砲の形に握った。


「ばんっ!」


 次の瞬間、目玉ががたんっと地面に落ちた。


「なにをした?」


「ハッキング。メモリに直接大量の情報送りつけて、オーバーフローさせて再起動する前に共和国忠誠ファームウェアに書き換えたよ。だめだったら管理者権限乗っ取ってからバッテリーに異常起して回路焼き切ってやろうと思ってたけど。うん、うまくいったみたい」


 処理能力の暴力である。


「さーて、このアンドロイド。お持ち帰りしてストレージを漁ろうっと。ほら行くよ」


 アンドロイドがついてくる。

 なんかアンドロイドがかわいそうになってきた。

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