第31話
瓦礫の山。
崩れた塔。
死骸すら残らず地面のシミになった怪物。
建物もほとんど残っておらず、死の都を通り越して遺跡のようになっている。
ふむ、都市が壊滅したな……。
「まるで宇宙怪獣が暴れまくったようだね! バカお兄ちゃん!!!」
正直やりすぎた。
張り切りすぎたかもしれない。
やはり素手の方がよかったかもしれない。
サイコ○ラッシャーアタックで都市ごと……。
「同じ! 同じ結果だよ!!!」
そのときだった。
俺は気配を感じた。
殺気!
「ふはははははははははー! 我こそは吸血鬼の!!! え? いつの間に後ろにぎゃあああああああああああああッ!」
崩れた塔のかろうじて残ってる高いところで「ふはははー!」ってやったので後ろに回り込む。
そのまま手刀で頭から一刀両断。
「よ、容赦ねえ……台詞くらい言わせてあげて!!!」
いやさー、気配からなんとなく一匹残したかなあって思ったんだわ。
お残しはよくないなあって思ってたんだけど、バカでよかったぜ。
「ひ、ひいいいいいいいいッ! いきなり殺された! さ、再生ができない!!! なぜだ! なぜ再生できない!?」
なんか両断した右と左の体が面白い感じでくっついている。
それを手で押さえながらギャーギャーわめいてる。
「ううーん? ちょ、この人、ナノマシンの集合体? あー、これ、出宇宙時代に流行った延命手術だ! 欠陥だらけで違法になったやつ!!! えっと吸血鬼、名称登録したよ」
ういー了解。
へー。昔はいろいろやってたんだな。
「当時は夢の技術だったんだよ。永遠の命が手に入るって。でもさー、脳の生体部品が完全になくなると思考が極端に狭くなるのよ。理由もなく攻撃的になるし、自分が人間を超えた存在だって思い込むし。結局、あんまりおかしいんで調べたら、自分を人間だって思い込んでるポンコツAI搭載のアンドロイドだってわかってさあ。そのまま駆除対象になったんだよねー。あと体液の交換が必要なのが致命的なんだわ。アンドロイド用の白いやつじゃないと超時間活動できないし」
欠点だらけ!!!
なんかもうちょっとなかったの?
「人間ってたまーに愚かなことするよねー。お互い全滅する兵器撃ち合ったり。アホみたいな人体改造思いつくし。宇宙戦艦生身で撃墜できる兵士作るし」
なんか日本人までこすられた!!!
「ぶぶー違いますー。お兄ちゃんだけをこすったんですー!」
ねえねえ、セレナ。俺に当たりきつくない?
「ぜんぜん!!!」
ひどい!!!
もー八つ当たりしよう。
「んじゃとりあえず痛めつけるか」
さすがに平均値はこんな雑魚じゃないだろ。
こいつで吸血鬼の倒し方憶えておこうっと。
「ま、待て! 我を殺せば数万の吸血鬼の軍団がお前らをいたぶりながら殺し……痛い! 痛い痛い! 顔をつかむな痛い! やめてー!!!」
麻呂のアイアンクローを喰らうでおじゃる!
「見事なアイアンクローでごじゃりまつる」
ねえねえ、もう殺していい?
「この型のAIは電子生命体の認証受けてないから生き物じゃないよ。ナノマシンの機体番号調べたら帝国製だし。壊してもいいよー」
「ういー了解」
ばきん。
頭蓋骨破壊。
なんかこの力入れるといきなり壊れる感じ。チタン合金ぽいな。
「チタン合金握りつぶしたことあるのお兄ちゃんだけかなあ……」
「き、キサマァッ! 殺す!!! 殺してやる!!!」
ジタバタして俺から逃れようとしている。
両断して頭蓋骨つぶしたというのにまだ余裕がありそうだ。
「うーん、これくらいじゃ死なないようだな」
「クソ! クソ! クソ!!! 夜でさえあったら貴様など恐れるまでもないものを!!!」
「え……本当? もっと強くなるの?」
吸血鬼をぽいっと捨てる。
「よーし夜まで待つぞ。逃げるなよ。逃げたら消滅させるから」
そうかー、もっと強くなるのかー。
楽しみだなあ。
「お兄ちゃん、ナノマシンタイプのアンドロイドは体液を交換しないと紫外線とか放射線とかの外部刺激で性能落ちるみたい。夜になると30%くらい性能が上がる計算かな」
ふーん。ま、戦ってみないと本当の強さはわからんからな。
セレナ、アンドロイド用の体液パックちょうだい。
「普通だったらあんまりオススメしないけど、お兄ちゃんだし。倒すのに一万体は必要だからいいや。送るわ」
体液パックを空輸。
なぜかガタガタ震える吸血鬼に投げる。
「ほらよ。これ食って強くなれよ」
「いいのか!!! 俺は夜の帝王だぞ!!! たかが人間如きがかなう相手ではないぞ!!!」
「いいから。俺は本読んでるから日が落ちたらやろうぜ」
本を読んで暇つぶし。
なぜか吸血鬼は必死に話しかけてくる。
「なあ! 俺を殺さなくていいだろ!? もう殺す気ないんだろ」
「うーん、お前、命乞いをした市民にどう答えた?」
「……お、俺を殺すのか? 高貴なる夜の種族を殺すのか!?」
「妹が言うには、お前はもう生き物じゃないらしい。正確には『壊す』だ」
「お、俺を殺したら数万の夜の種族がお前を殺しに来るぞ! いいのか!」
「うん、かまわないぞ。お前ら狂ったアンドロイドは一体残さず駆除対象だ」
なにを当たり前のことを。
危険なアンドロイドを野放しにするわけがない。
もー、ポンコツAIだなあ。
そんな不毛な話をしているとだんだん暗くなってくる。
俺はタブレットをしまい吸血鬼と向かい合う。
「さ、そろそろ時間だ。準備体操でもするか?」
俺はレーザーブレードを抜いて素振りする。
さーって、ファイナルジャスティススラッシュのお時間がやってきたよー。
「嘘だ! 嘘だ嘘だ嘘だ! 人間が俺を殺す!!! 俺は吸血鬼に認められて、人を超えた、完璧な存在なのに!!! 嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!!!」
「あれま、無になる恐怖でAIがバグった。処理能力低ッ! さすが出宇宙前のAI!」
そして日が落ち闇があたりを支配する。
「きえええええええええええええええッッッ!!!」
もはや正気を失ったAIが叫んだ。
完全に知性を失ったかのような醜態。
吸血鬼は叫びながら俺に突進してきた。
と見せかけて。
「霧になって逃げ……」
ナノマシンが体を分散させる。
ああん、逃げ専用のフォームか。
「お兄ちゃん! 逃げちゃうよ!!!」
問題ない!
ポーズ、からの!
「ファイナルジャスティススラッシュ!!!」
必殺技名は叫びながら。
日本の伝統、絶対の掟である。
敵の横を通り抜けながらのバツ字の二連撃。
日本の様式美と言えるだろう。
ゼロ距離からの攻撃。
そう、金属の日本刀を蒸発させるほどの二撃。
レーザーソードの光がナノマシンを飲み込む。
圧倒的出力の前に大きさなど無意味!!!
ナノマシンが次々と光に飲み込まれていく。
相手が小さくなって逃げるのなら、デカくて、速くて、重い、最強の一撃をくれてやればいい。
「お兄ちゃん……物理ガン無視しやがった……」
一瞬の間をあけ俺の後ろで爆発が起きた。
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