第28話
で、ダンジョン探索の前に観光。
勝手に鋳造した貨幣がどっさり。
手に入れた銀貨と銅貨から成分を検出。
同じ量で……というか本来理想だった量で鋳造。
精度にばらつきがあるのでそれもAIで補正。
完璧な。むしろ元よりもいいものを作成。
違法っちゃ違法なんだけど、元の銅貨よりクオリティ高いもん。
金貨も偽造。
でもこれは一般商店の決済に使えないので保留。
金貨は騎士団の装備一式とか、領地間の戦略物資というか食料取引なんかに使うんだって。
あと国への税の支払いとか、領主間の賠償金の支払い。
で、金貨から銀貨への交換は交換所を通さなければならなくて、それは実質国営。
国が手数料を取ると。
でも高額コインの金貨だと運搬するときかさが減るので手数料の方がマシ。
しかも運搬オプションで国軍の護衛がつけられる。
これも傭兵よりは安い。
なにをするんでもコストがかかる。
うーん、発想がヤクザ。
「初期文明の惑星はどこもそんなもんだよ。流通コスト高いし」
まーいいんだけどねえ。資金実質無限だし。
「惑星レベルの金があるからねえ。種もあるし。昆虫とエビのプランテーションもあるし。芋と野菜も作れるし」
もー、なんでもできるよね。
と俺たちが無駄な万能感に浸っているのは王都の広場。
そこに私服のシャルロットがやってくる。
「待った?」
「ぜんぜん」
キリッ!!!
「涙ぐましい童貞の斜め上のアピール……」
うっさいわ!
話を聞いたらシャルロットは17歳。
二個上だった。
大丈夫。
年上とかぜんぜん気にしないから……。
「向こうが気にするんじゃない。人生のほとんど監禁生活で15歳なのに小学生みたいな中身だし」
やめろ! それ以上童貞をいじるな!!!
もう女子とお出かけというだけで、いっぱいいっぱいの童貞を追い詰めるな!!!
「マコト殿、このまま学園に戻ってしまったらいつ会えるかわからない……今日は遊ぼう!!!」
シャルロットがそう言ってはにかんだ。
うん、かわいい。
シャルロットの指はすでに治っていた。
王都の医者の診断では、問題がないとされた。
そして俺の薬、というか治療用ナノマシンはエリクサー認定。
つまり伝説のエリクサーの正体が治療用ナノマシンなわけだ。
出宇宙初期の治療用ナノマシンってドカ食いしないと治らなかったような。
部位欠損も見た目は治るけど、なんとか動く程度だったらしい。
リハビリに壮絶な努力が必要だったとされている。
セレナの送ってきたアーカイブより。
要するにエリクサーを超えた薬なわけである。
ま、いいか。
問題はナノマシンである。
たしかナノマシンの環境破壊が提唱されたのが20年ほど前。
帝国と共和国が条約を締結したのが10年前。
もちろんアホの両国が約束を守るはずもなく、暴走したナノマシンにどこかの惑星が滅ぼされたのがつい半月前のニュースと。
「魔法の正体、ぜったいナノマシンだよねえ……」
それが問題なわけよ。
ダンジョンの意味もわからんし。
わからんことだらけだな。
でもいいや。今日は遊び遊び。
今日はお祭りだった。
なにかのイベントではなく、俺の戦勝報告や持ち込んだ像や財宝を祝うものだ。
ここ数年、地方の領土は荒れ放題、貴族は滅亡しまくりとしけたニュースしかなかったらしい。
なので明るいニュースに市民がはじけた結果がこのお祭り騒ぎである。
無許可の屋台出まくりの、酒飲みまくりの、歌って踊るのとやりたい放題である。
「いっしょに踊る?」
一応シャルロットに聞く。
「もう、踊らない!」
おお! なんかちゃんとデートできてるぞ!!!
俺凄くね!?
屋台で果物を買いまくる。
で、無許可屋台が適当に置いた席に座って二人で食べる。
実際問題、こういうのしか美味しいのないのよ。
果物はあまり見たことのない品種が多い。
「原生植物みたい」
なるほど。
食べられることさえわかれば完全にテラフォーミングする必要ないもんな。
小さなピンクの果実。
少し眺めてからぱくり。
中身は白い。
林檎っぽい味……でやたら酸っぱい。
地球型の植物だとレンブってやつに似てるのかなあ。
けっこう美味しい。
次は見た感じマメ科。
なんか乾燥してるやつ。
さやを割ると中に干し柿みたいなのが入ってる。
パクリと食べてみると干し柿……のすっごい酸っぱいやつ。
なんだろこれ?
ものすごく甘くて、ものすごく酸っぱい。
うん?
俺が鳩みたいな動きになっていると。
シャルロットが笑う。
「面白い動きしてる」
「初めて食べる味なんだ。故郷にはないものばかりだ」
「エルダーの里は何もかも違うんだな」
ですよねー。
こっちも笑ってごまかす。
でもわかった。
果物が甘くないから甘さが正義なんだ。
「うーん……もしかして砂糖って儲かる? お兄ちゃん、覇権取れちゃう?」
儲ける必要ないじゃん。
「いやー、砂糖とコンテンツ力で世界征服できないかなーって」
「なにその危険思想」
「生存戦略の一つとして考えただけだよ。ありとあらゆることをシミュレートする。それがいまのAIなの!」
シャルロットが屋台のおっちゃんにお茶を注文する。
木の器に入ったお茶が運ばれてくる。
緑色。
「エルダーの里にはこれはあるかな?」
飲むと強烈な清涼感が。
あー! ミントティー!
すっげ濃いやつ!!!
「こ、これは強烈な……」
「庶民はこれを飲むんだ。刺激が強いが香りがいいだろ」
たしかに香りがいい。
ただすっごい辛いけど!
「学校の帰りに屋台でよく飲んだなあ。つい先日のことなのに、ずっと昔のように思える」
シャルロットが黄昏れる。
思い出がいっぱいあるのだろう。
「学校の話もっと聞かせて」
俺は聞き役になる。
シャルロットが学校の話をする気持ちはわかる。
実はシャルロットは両親の葬儀が一年後に決定した。
遺体が見つからないのが原因だ。
戦争に巻き込まれてから一年後、王都の許可をもって死亡と相続が確定する。
いまは宙ぶらりんな状態だ。
領地経営の引き継ぎやら代行やら、やることが多すぎて悲しむ暇もないくらいだろう。
シャルロットは男爵家当主のまま、俺の所に嫁に来ることになった。
学校卒業して相続するまでの時間が与えられた。
俺の公爵位はダンジョン攻略後、空気を読んで。
サーシャも学校に戻る。
うん、サクサクっとダンジョンクリアしてダラダラしてようっと。
遊びまくってやるぜ!!!
「お兄ちゃん、最後の一行に本音が凝縮されてるよ!」
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