第27話

 演奏を終えると……というか持ちネタをドラマの主題歌やアニソンにいたるまでやりつくす。

 スコットさんが人を呼んだらしい。

 女官さんや身なりのいい女性の人だかりができていた。ニチャア。


「気持ち悪い笑いすんな」


 気持ち悪くたっていいじゃない

 だって童貞だもの

 まこと


「そういうずるいのやめろ」


 セレナ……お前はわかってない。

 10代男子は女の子にモテるためには手段を選ばないということを!!!


「お兄ちゃんは婚約者いるやろが!」


 恋愛がしたいんじゃああああああああああッ!!!

 たくさんモテたいんじゃああああああああッ!!!


「素直すぎる!!!」


 という心の叫びは封印。

 クールぶって余裕の笑み。

 拍手に承認欲求が満たされる。

 だけどここでアクシデント。


「失礼いたします」


 と人をかき分け、おっさんがやって来た。

 はげ頭で脇に白い髪の毛が残った小柄な老人。

 白い服、アリシアの着てたやつとデザインが似ている。

 その豪華バージョン男版といった感じだ。

 というかアリシアもすぐ後ろにいる。


「ああ……救世主様!」


 おっさん、いきなり俺に抱きつく。

 しょぼーん。

 テンションだだ下がり。

 この世の終わりみたいな顔してる俺にアリシアが言った。


「新たなエルダーであらせられるマコト様によるご寄贈への謝意を伝えるためまかり越しました」


「え? なに?」


「例の神像の件です」


 ……忘れてた。

 そういや寄贈したっけ。

 するとおっさんがその場にいた全員に向かって宣言する。


「我が教会はマコト様と一心同体! マコト様とともに歩むことを宣言しいたします!」


「アリシアさん、どういうこと?」


「あの像が古文書に記されてた神様の一柱と一致したんです」


 あー!!! ビリケンさんか!!!

 そりゃ国の始祖が惑星千葉出身の鬼瓦権蔵だしな。

 古文書に名前があってもおかしくないわな。


「そこでマコト様が国と神殿に寄贈した像を管理するために新しい神殿を建てることになりました!」


 へぇー……ってそこまでする!?

 という顔をしてるとアリシアがぶにぶに頬を突いてくる。


「マコト様、おわかりになりますか? (ぷにぷに)あなた様は善意でも本気を出されると騒ぎが大きくなるのです。(ぷにぷに)これからもっと事前に根回しとか連絡とかお願いしますね!」


「スンマセン」


「と、いうわけでこちらは枢機卿です。そして私が! あなた様の! 担当になった! アリシアです!!!」


 ぷにぷにぷにぷに。


「なんかスンマセン」


「……アリシアちゃん! お兄ちゃんの扱い方がうまい!!!」


 なんだろうか。

 サーシャとは違うタイプの圧だ。

 なんかくっころに至る前に屈服されてしまう。

 とりあえず逆らわないでおこう。

 するとスコットさんがやってくる。


「はっはっは。猊下、ならびにアリシア嬢。こちらをご覧ください」


 あー、さっき作ったダイヤのダルマ!!!


「……んー? マコト様。これはなんですかぁ?」


 アリシアにっこり。


「え、ええっと……さっきクラウザーくんと遊びで作ったダイヤの像です……」


 と言って逃げようと思ったら回り込まれた。


「どうやって作ったの? 怒らないから言って」


「えっと……石炭を樽ごとぎゅっと鯖折りして……」


「うーん、これからはお姉さんに相談してくれるかな?」


「ふえーん! 了解ッス!!!」


 圧が怖いよー!


「宇宙最強生物のランキング最高位にアリシアちゃんが登りつめちゃった!!!」


 するとアリシアは今度はモブと化してたシャルロットの前に行く。


「シャルロット様!!!」


「ひゃいッ!!!」


「マコト様を止めねばならないのは婚約者のあなた様でしょ!!! しっかりしてください!!!」


「ひゃい!!!」


 とうとう巻き添え事故が!

 なんという多重事故!

 なお俺をスターのように見ていた令嬢&女官さんは巻き添えを恐れて退散。

 く、みんな逃げ足速いじゃないか!!!

 残されたのはエリック親分、シャルロット、俺、クラウザーくん。

 逃げ遅れたいつもの面々である。

 というかスコットさん……計りやがったな……。


「はっはっは、残ったのは関係者だけのようですな」


 スコットさんが手を叩く。


「まずはシャルロット嬢、貴女は騎士学校に戻り所定の単位を履修していただきます」


 中退は嫌だよね。

 わかるわー。


「お兄ちゃんは、小学校中退だもんね……」


 工兵学校出てるもん!!!


「そしてマコト殿」


 へーい。


「まずは大量のゴブリンがわいた原因。ダンジョンの攻略を手伝っていただきたい」


 ダンジョン?

 完全にRPGじゃん。


「つまり犯人は人間、もしくは同等のレベルの知的生命体ってことだね、お兄ちゃん」


 人型労働生物?


「それはわかんないけど……魔法にダンジョンにって、ここまでRPG、それも出宇宙前の古典を模倣するなんて……おかしいと思わない?」


 うん?

 発想が古いってこと?


「そう、発想が古すぎる。まるで……古代人が思いついたみたいに」


 まーた帝国民かよ。

 千年以上前に行方不明になった鬼瓦権蔵が生きてるって?

 いくらなんでも当時の技術じゃ無理だろ?

 DNAだって子孫複数人のDNA採取してやっとわかるレベルだし。


「それが問題なんだよね……」


 ま、いいや。

 ダンジョン攻略すればなんかわかるだろ。

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