第24話

 酒の入ったヒャッハー騎士を連れて王都に到着。

 王族パワーでまともだったゴードンの兄貴が門番に事情説明。

 袖の下として酒を大量に置いていく。

 なお酒は銀河一まずいと評される惑星さいたまのローカルスーパーのプライベートブランド缶チューハイ。

 ……の複製品。

 味見で飲ませたら門番さん大喜び。

 大量に置いてきたら恐縮されまくった。

 このランクでよかったのか……。

 初めて見るバイクに市民たちは興味津々。

 サイドカーからクラウザーくんが市民に手を振る。

 前々から思ってたけどクラウザーくん……王族に向いてると思う。

 隙あらば酒飲んでるお兄ちゃんより陽のものだぞ。

 なお、お兄ちゃんが飲んでるのはソーマね。

 中身は舌噛みそうな名前のヴィンテージワインとウイスキー。

 量があるからエリック組長と二人で味見名目で飲んでいる。

 すでに味見の量は超えたと思うのよ。

 たぶん俺は悪くない。

 俺は共和国の法律上酒が飲めないので、ふて腐れながらバイクを運転。

 そのまま進むと宮殿の門が開き、俺たちは中に入る。

 お兄ちゃんとクラウザーくんの顔を知らないやつがいるわけもなく、あっさり中に通される。

 待合室的なところでエリック親分とシャルロットと待機。

 するとエリック親分が笑顔で話しかけてくる。


「婿殿、王室と話し合いが整いましたぞ! 婿殿がエルダーと認定されれば新たな公爵家を興すことになります」


 うーん。ぴんとこない。


「あの……エルダーってそんなに少ないんですか」


 こっちの質問にはシャルロットが答えてくれた。

 すでに薬指と小指以外は再生したようだ。


「少ないんじゃなくて存在しないんだ。建国神話にあるような力を持つ王族はここ二百年生まれてない。これは王室が公式に認めたことだ」


「でもクラウザーくんは俺を同類だって見抜きましたけど」


「我々にそれを証明する手立てはない。王族も同じだ」


 なるほど。

 逆に言えば俺が科学の力で奇跡を起こせば王族がエルダーであると証明できる、と。

 よくできてるなー。


「え? ……科学? いやお兄ちゃん、普通に暴れてれば証明できると思うけど……」


「日本人だったら誰でもできるだろ!」


「できねえよ!!!」


 もーね、AIが頑固すぎて。

 すると扉が開き、かつらをつけた少年が入ってくる。


「見習い侍従だ。ついていくぞ」


 とシャルロットに耳打ちされ席を立つ。

 たぶん小姓ってやつだな。

 そのまま広い部屋に案内される。

 中にはトランプのキングみたいな顔のおっさんがいた。

 たぶん凄く強いスタンド使いだと思う。

 このおっさんが王様だろう。

 ゴゴゴゴゴっって音が聞こえてきそう。

 するとセレナがやる気なさそうに言った。


「あー……充分なDNA情報が集まって特定できたわ。市民名『鬼瓦権蔵おにがわらごんぞう』、出身地帝国領惑星千葉の鎌ケ谷地区。職業は貨物船船長。出宇宙期に貨物とともに行方不明。宙域不明。家族が失踪宣告を申し立て。一年後に死亡扱いに」


 ちょっと待てシュトロハイム成分どこ行った?


「えーっと、失踪する3ヶ月前にゴンゾー・グレート・シュトロハイムに改名だって。思いっきり日系だね。DNAの改変手術を受けたみたい」


 お、おう。

 つかDNA改変って?

 俺が惑星日本で受けたやつ?


「その簡易版かな。見た目の変更とか。目を青くしたり。昔は流行ってたみたいよ。いまはDNA強化は兵士の義務だから、わざわざ受けようと思う人いないし。こういう意味ないのは完全に廃れたよねー」


 謎が深まってきたぞ。しょうもない謎っぽいけど。


「失踪前の積み荷は帝国軍の機密みたいね。大統領権限で共和国側の資料見たけどよくわかんないや。時代的に人型労働生物かなあ」


 それだったら共和国側に資料あるはずねえべ。

 当時でも大事件だったんじゃね?


「了解。もうちょっとデータベース漁ってみるね」


 通信が終わると王が俺を見て宣言した。


「あらたなエルダー、我が家族、我が息子が現われた! めでたきことである!!! 新たな公爵家の門出を祝して宴を我が名で執り行う! 民に知らせよ! 王家は安泰であると!!! 皆のものよきにはからえ!!!」


 よくわからん。


「ちーっす。この兄ちゃんは家族でーす。みんな夜露死苦!!! これからパーリィナイやっちゃうぜおい!!! みんな仲間呼んでくれよ!!! って意味だよお兄ちゃん」


 よくわかった。

 とりあえず軍事拠点が丸々手に入りそうな予感である。

 すると文官の人が巻物を王様に渡した。

 あれか……献上品の目録。

 王様はそれを見ると偉そうな顔のおっさんを呼び寄せた。


「婿殿、財務大臣閣下です」


 なる。


「大臣。これ間違ってない?」


「いえ、私も三回確認して、自ら見に行きましたが間違っておりません」


「金の量おかしくない? あとソーマって書いてあるけど」


「間違っておりません」


「騙してない?」


「本当ですって!」


 二人が俺を見る。


「こほん、親孝行に感動した!!!」


 お、おう。

 そのまま会談は終了。

 部屋を用意されてそこで着替え。

 なんか倉庫からドバッていう鼻血の音と「本当にあった!!! 嘘だろ大臣!!!」って声が聞こえたような気がする。


「とりあえず……セレナ。酒追加頼む。安いやつで」


「はーい了解。チューハイ大量に送るね」


 無意味に疲労がたまる会話をしているとクラウザーくんがやってくる。


「マコトくん! 遊ぼ!!!」


 なんだろうか。

 いま一番の癒しはクラウザーくんだわ。

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