第19話

 シャルロットの所に帰る。

 アリシアちゃんも一緒だ。

 すると「ぎゅおおおん! ききききききッ!!!」とシャルロットを載せた神輿がやって来た。

 俺を見るとシャルロットが興奮した様子でまくし立てる。


「ま、マコト殿! う、腕が生えてきた」


 手首くらいまで再生し終わったようだ。


「あ、はい。生えかけはかゆくなりますよね。引っ掻くとばい菌入ってかゆくなるから気を付け……」


「そうじゃなくて!!! 足の怪我も! 折れてた骨がくっついた!!!」


「そういう薬ですので」


 正確にはナノマシンだけど。

 ゴードン兄貴の場合、内臓なんで死ぬ確率が高かったのでカプセルだった。

 でもシャルロットの場合は止血して消毒して血を補給すればとりあえずは死なないのでナノマシンと。

 出宇宙以前は手足が取れた方が致命的だったらしいってどこかで聞いたな。

 いや内臓の方がヤバかったんだっけ?

 どっちか忘れた。


「どっちも死んでたみたいよ」


 うわーお!


「……本当にエリクサーだったのか?」


「エリクサーは知りませんが、故郷の薬で精霊が失った組織を再生してくれます。ただ前にも言ったとおり原料が必要なんで、ちゃんと肉と野菜食べてください。特に骨の再生にリンが必要なので肉や魚、それに卵をちゃんと取ってください」


「その……マコト殿……その……私には財産も、なにもない。渡せるのは男爵家当主の立場だけだ」


「そんなものいりません」


 無償ッス。


「あ、ああ。これから迷惑をかけてしまうな」


 なんだかかわいそうだな。

 セレナ、なんかいらないもので換金可能なものってあるか?


「金なら置く場所ないくらいあるよ~」


 へー、なんで余ってるん?

 配線に使うじゃん。


「だって反物質砲でこの辺の星域ごと吹っ飛んでるもん。岩盤ごとデブリになってそこらじゅう漂ってるから採取するといくらでも出てくるんよ。あとはダイヤモンドにルビーにサファイヤに……置く場所なくて採取やめたくらいだよ! こっちまでデブリ来たら氷河期になっちゃうから取り除いてるけどさー!」


 なんかごめんな。悪いの偉い人だけど。


「んじゃ適当に見つくろって」


「はいよー」


 さてどう切り出すか。

「金いります?」なんて聞けるはずないしな。

 ……うん、考えたら面倒になった。


「シャルロット、安心してください。復興の費用は出しますので」


 と言った瞬間、コンテナが空から投下された。

 だんだん物資運搬が雑になってるな。

 にしてもすぐ来たな。


「スペース圧迫するから超特急で送った」


 なるほど。

 発煙筒がもくもく煙を出してるとこにコンテナがあった。

 男爵家邸宅の敷地内に着陸させたのは偉いと思う。

 脳の端末認証をすると扉が開く。

 あー、貴重品グレードの認証なのか。

 実際は産業廃棄物だけど。

 中には金塊が大量に入っていた。

 あとなんかビリケン像とシャチホコも。

 おう、スペース狩野派の金屏風まであるぞ。


「各地の名物回収したけど、よく考えたらいらなかったわ。入れとくね!!!」


 おう、本当にいらなかったんやな。

 とりあえずシャルロットに見せる。

 見た瞬間、シャルロットはドバッと鼻血をふき出した。


「シャルロットおおおおおおッ!?」


 血が足りないのに大丈夫か?


「姫様なにが……ブシュッ!!!」


 今度はゴードン兄貴が鼻血をふいた。

 あ、ごめん。

 とりあえず次の犠牲者はアリシアで。

 ドバッ!!!


「なななななななななな、あーたなにしとんですかあああああッ!!!」


 アリシアが鼻血出しながらツッコミ。

 動けて偉い!!!


「いやなんか妹が送るって」


 ブシュッと三人が鼻血。

 惑星岩手の金色堂見たらどうなるのだろうか? こいつら。


「なななななな、なにをくれとるんですかああああああああッ!!!」


 シャルロットが俺の肩をつかんでガクガク揺さぶる。

 処分困るよなー。特にシャチホコ。


「お、落ち着いて姫様!!!」


 アリシアがシャルロットを止める。

 その間、ゴードン兄貴はケツアゴを押さえて考えていた。

 先に鼻血ふいた方がいいと思うのよ。


「姫様……このリヴァイアサン像を王室に献上いたしましょう」


 それシャチホコ。


「それだ!!!」


「なにか物語をつけましょうか。これなる流浪の騎士にして錬金術師マコト殿が作られた芸術作品……とか」


 うーん、弱いな。

 つかシャチホコと言い出せなくなった。

 もういいや、話盛っちゃえ。


「それだったらゴブリンジェネラルから奪い返した古代文明の品ってことにしたらどうですか?」


「よろしいので?」


「不満は特にありません。より面白く尾ひれをつけていただいた方が面白いかと。魚だけに!!!」


 ドヤッ!!!


「お兄ちゃん! ギャグは一つも伝わってないよ! 三人とも直球で受け取ってるよ!!!」


 ……審議中。

 三人とも真剣に話し合ってる。

 俺だけ置いてきぼり。いいもん。次はウケるもん!!!


「それで行きましょう。金塊は……物資の支払いに少しずつ使うことにすればいいかと……孫の代までありそうですが……」


「あの……」


 アリシアがおずおずと手を上げる。

 ちゃんと鼻血ふいたな。

 女子力一番高いのはアリシアと。


「この像どうします? 異教の神像みたいですが」


 ビリケンさんだ。


「あ、それ。少数民族が崇めてた神像らしんですけど。その民族絶滅してしまったので」


 つい数日前に。


「古代の神像か……うーん、どうしたものか……売れる物ではなさそうだし」


 シャルロットがうなるとアリシアが元気よく主張した。


「あの! 神殿に寄付しては!? 王室だけに献上すると寄付を求められますので。古代の神像の調査名目で像を送って、一緒に調査費として少量の金塊も送れば恩を売れますよ!」


「なるほど。大規模な寄付だが低位領主の露骨な買収にはならない。他の領地に財力をアピールしつつ恨みも買わない。良い手だ。この金があれば、だがな」


 シャルロットが笑う。

 あのーそろそろ鼻血ふいた方が……。


「大量になければこんな無駄な金使いませんよ」


 うむ。よくわからんが現地の宗教団体に課金するといいことあるんだな!

 理解した!!!


「どうやら宗教団体がなんかしらの利権を握っているようですね」


 難しい!!!


「ところでさーお兄ちゃん! 純金製のカーネ○サンダース像も見つけたけどいる?」


 いらない。

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