第10話

 結局会議は平行線。

 だって有効な手段ないもん。

 俺は善意で協力してるだけだし。

 シャルロットからすればこれ以上俺に借りを作りたくないと。(AIの分析による)

 信用って難しいね。

 結局、「そろそろできたようですね」と料理を披露する。缶詰だけどな!

 パンの缶詰を開ける。かぱん!

 それをゴードンに渡す。


「こ、これが……パン……」


 あまり美味しくないよねえ。

 特に風味が。

 プロテインとビタミンとカルシウム添加されてるし。


「なんという甘さとやわらかさだ……」


 おーっと。

 いきなりのイレギュラー。

 俺は焦りながら焼き鳥缶を開ける。かっぱん!

 こっちは皿に空けてゴードンへ。

 培養セルロース樹脂の皿はいくらでもあるぜ!

 同じ素材のフォークも添えてっと。

 パンに和食だからちょっと合わないよねー。


「うまい!!!」


 おおっと!

 予想外の反応。


「これは酒が欲しくなりますな!!! がはははは!!!」


 するとみんなの視線が「はよよこせ!」と鋭くなった。


「う、うむ。毒はなさそうだ。皆の衆! 食べてヨシ!!!」


 はいはい。

 シャルロットに最初に盛って。

 あとは順番どおりに。

 ガキどもと妊婦さんにはお菓子と栄養バーも渡す。

 たくさん食べて大きくなれよー!

 お腹いっぱいになったら安心したのかガキどもは眠った。

 テントに寝袋が足りてよかった。

 シャルロットも眠り、ゴードンの兄貴は寝ずの番。

 時間的にはまだ深夜帯ではない。

 三交代勤務になれた俺だけが元気っと。

 さあ、さあ、共和国兵士の時間のはじまりだ。

 寝たふりして脱出。

 まずドローンを飛ばす。

 さらに光学迷彩を入れて周囲に溶け込む。

 目的は街の奪還。

 木の間を飛んで街を目指す。

 音を出さずに森を出た。

 そこからはドローンにつかまって空から。

 少し飛ぶと街が見えた。

 城の外壁で手を離して塔の屋根にシュタッと着地。

 そのままドローンの赤外線モードで敵をマーキング。

 どれも人食い生物だった。

 あれは、はたして人類なのだろうか?


「お兄ちゃん、分析によるとあいつら野生化した人型労働生物だよ! 現在では共和国法でも帝国法でも禁止されてるよ。見かけ次第駆除が推奨。形状からゴブリンと仮称するね!」


 あれま。

 人型労働生物。

 要するに人のDNAを操作して生まれた家畜用種だ。

 ほとんどの人が字面だけでアウトと思うだろう。

 作ったはいいがたいてい設計にバグが出て最終的に人類に反乱を起こす。

 いくつかの惑星がこれで滅んだほどの存在なのだ。

 そもそも倫理的にもアウト。

 違法で作ったら死刑である。

 誰だ。作ったやつ……。完全な禁忌じゃん。

 赤外線によると敵勢力は200人。

 少なくね?


「お兄ちゃん、衛星画像によるとゴブリン数千体が別の街に進軍。今がチャンスだよ……って惑星日本の人鬼に言っても無駄かぁ……」


 なにを失礼な!

 日本人ならその数千体も追いかけて徹底的につぶす!

 二度と暴れる気も起きないほど執拗につぶす!

 それが鎌倉武士主義というものだろう。


「あ、うん、はい。がんばってね」


 AIに軽くあしらわれたので作戦開始。

 まずは音もなく外壁の通路に飛び降りる。

 見張りの背後を取って首トン。

 ぶしゅッ!

 あ、ああ、うん。どんまい。

 壁から投げ捨てとこ。ぽいっ!


「いきなり殺戮かよ!」


 力加減間違えたんじゃ!!!

 その次に別の見張りを締め落とし……ごきり。

 ……えっと……ぽいっ!

 弓兵がいたので殴って大人しく。

 ぐちゃ! ドゴン!

 あ、壁破っちゃった!


 ゴーンゴーンゴーン!


 警報の銅鑼が鳴った。


「ヒャッハー!!! 肉だ! 人間の肉だー!!!」


「おでお腹すいた! 人間殺して食べる!!!」


「指切り落として食べさせて遊ぼうぜ!!!」


 嫌悪感が自然とわいてくる汚い声が飛んでくる。


「思いっきり警報流されてるじゃん。雑魚お兄ちゃんダメじゃん」


「ふ、ふはははははははははー! ふははははは!!! まとめてかかって来い!!!」


 俺は外壁から飛び降りた。

 ついでに最後の一番気持ち悪いセリフをほざいたゴミカスの脳天に肘を落とす。

 近くにいた連中も手刀で首チョンパ&手刀突き。


「うおおおおおおおおおおお!」


 巨大な戦斧を振るってきたやつに手刀。

 斧ごと両断する。

 一瞬で片付けると勘のいいヤツが逃げようとするので後ろからライフルで頭を撃つ。

 そのままプラズマグレネードモードに切り替えてゴブリンに発射。

 密集してたゴブリンがまとめて肉片に。

 相手も戦闘員。ここで立て直して矢を一斉掃射。

 前線の仲間ごと射るつもりだ!

 だがこの程度で俺が動揺することはなかった。


「この程度で日本人が倒せると思うな」


 飛んできた矢を次々つかみ投げ返す。

 俺の矢は次々と頭を撃ち抜いた。

 ついでにゴブリンの死体も人間ミサイルとしてぶん投げる。

 悲鳴が上がり弓兵は総崩れになった。


「お兄ちゃん! 右からエネルギー反応!」


 軽機関銃モードに切り替え。

 暗黒太極拳のような動きをしてる連中を撃ち抜く。

 飛び降りてから半数を片付けるのに約2分。

 惑星日本の日本人としては失格だな。


「ぬはははは! さぞ名の知れた武人だろう! 我が名はげぶッ!」


 なんか俺とキャラ被りしてたので蹴りで頭を飛ばす。

 するとゴブリンどもが一斉に悲鳴を上げた。


「ゴブリンロード様が一撃で!!!」


「うわあああああああん! もう終わりだー!!!」


「殺される! 食い物に殺されるー!!!」


 なんかムカついたのでロケランモード。

 光子魚雷を選択して容赦なく発射!!!

 さらに半分ほどが吹っ飛んでいく。


「ひいいいいいいいい! 助け! 奴隷になりますから助け……」


 最後に火炎放射器モード。

 汚物は消毒だーッッッ!!!


「ぎゃあああああああああああああッ!」


 はい全滅。


「ひでえ……お兄ちゃんひどすぎるよ……」


 現実は常に過酷だ……。

 そう、それがゴブリンだったとしても。


「教訓風にまとめるのやめてもらっていいっすか?」


 AIがいじめる。

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