第4話

「なんだそれ。じゃあ片方はホモサピエンスじゃねえのか?」


 そう言って俺はバイクにまたがる。


「スクリーンに投影するよ」


 そのままバイクを発進させると目の前に半透明のスクリーンが展開。

 ドローンが撮影した動画が再生される。

 緑色の二足歩行の生き物が木製の車両に乗った人々を襲撃してた。

 襲撃されてるのは人間の女性。

 銀髪で尖った耳の美少女。

 やだかわいい。

 外部と接触のない惑星の人が特殊な進化をする例はわずかに確認されている。

 日の光の弱い惑星で、口から発した超音波で周囲を地形を確認する能力を得た人種の例が有名だ。

 共和国放送協会のドキュメンタリーでやってた。

 耳が長いのもこの惑星が長い間外部と隔絶された状態にあった証拠だろう。

 もちろん襲撃者もだ。

 こればかりは生物学的な検査をしなければわからない。

 俺はフルスロットルでバイクを走らせ木々の間を縫うように走る。


「そういえばお兄ちゃんって15歳だけどバイクの免許持ってたっけ? つか中型免許って20歳からじゃ……なんでそんなに運転上手なの?」


 ……。


「おーい黙るな~」


 ……俺が法律だ。


「開き直った!!!」


 俺はなぜか運転できるバイクで樹海を走行する。

 するといきなり森が開けた。

 そのまま走ると馬車が見えてくる。


「どうやら集団は盗賊のようだよ!」


「じゃあ殺ってもいいな」


「わからない。お兄ちゃんアドリブでお願い!」


 やれやれ、ひどい話である。

 まあ現実問題として馬車を使っているような文明に我々が負けるはずがない。

 物質精製プリンターと惑星日本の日本人が一人いれば世界の王になるのも難しくないだろう。


「おめえしかできねえよ! いいかげんにしろよお兄ちゃん!」


 ふ、惑星日本の精鋭兵。

 人鬼は赤ん坊のころに他の惑星に送られ侵略ミッションを開始すると聞く。


「うん、お兄ちゃん。やったみたいね、それ」


 だがさすがにそれは人鬼でもなければ難しい。


「だからおまえ! おまえのことだから!」


 だが共和国歩兵として成し遂げなければならない。

 要するに俺が味方する勢力がジャスティスである!


「ヒャッハー!!!」


 俺はバイクで飛んだ。

 必殺モテたくてなにが悪いアタック!!!


「最低のネーミングセンスだ!!!」


 空から襲撃者の一人に突っ込む。

 ぐちゃっと緑色の頭部が潰れる。

 俺は着地するとバイクを降りる。

 バイク搭載のマシンガンを使ってもよかったが優先するのは被害者の保護。

 要するに殴った方がはやいってわけよ。


「○△■!!!」


「なに言ってるかわからねえ! セレナ翻訳!!!」


「はーい」


 バチンと頭の中で音がして理解のできる形で言葉が聞こえてくる。


「てめえ、弟分をやりやがったな! てめえも殺しちまうぞ!!!」


 巨大な鉈を持った片眼の男が汚い声で怒鳴った。


「なぜ襲ってる?」


「バカかてめえ! 人間もエルフも俺たちの食料に決まってるだろ!!!」


「そうか」


 そう言うと俺は男の体に拳をねじ込んだ。

 身体中のありとあらゆる骨を粉砕した音がした。ぐびゃっと汚い悲鳴が上がり、男は血を吐きながら場に倒れる。


「人肉食か……どっちに味方するか決定な」


「賛成。一応、法的な義務を履行するね」


 ドローンが飛んできてセレナの声がする。


「この星は共和国に接収されました。ゆえにこの地では共和国法が適用されます。貴兄らの行為は殺人及び死体損壊罪が適用され、この場合裁判は省略され警告なしに兵の判断で死刑が執行されることをここに宣言します」


 はいセレナ、よくできました。

 別の緑の怪物が驚いたような声を出した。


「はあ? なに言って……ってなんで人間に俺たちの言葉が通じてるんだ!?」


「うるせえ。いいから死んどけ!!!」


 バンッとビームライフルで頭を撃つ。

 破片すら残さずに頭部が消滅した。


「たしか原住民の一人に宣言すれば次は省略してもいいんだよな?」


「うん! ぶっ殺しちゃって♪」


 俺は別の緑の怪物の前に立つ。


「お、おいやめろ! なあ降参するから!!! な、なあ! そこのおもちゃにしていいからよ!!! 頼む! 話が通じるからあんたも魔族なんだろ。なあ、そこの女の指ちぎって遊ぼうぜ! きっと楽しい気持ちになるから……」


「悪いな。お前らのような連中は共和国にはいらん」


 俺は手刀で怪物の首を切り落とす。

 あと6人。

 逃げ出した3人を後ろからライフルで撃ち殺し、鉈を振るってきた3人の首を手刀で斬り落とす。

 終了。

 泥臭い。

 俺のような落ちこぼれではなく惑星日本の日本兵だったらもっと鮮やかだっただろう。


「寝言は寝てから言え、な?」


 俺はそのまま馬車に近づき。

 ぺたんとその場で座って固まっていた女性の方を向く。

 セレナ、翻訳。頭の中でバチン。


「大丈夫ですか。本官は宇宙海兵隊所属工兵の白銀誠であります」


 本当は大統領で大将だけどって真顔で言えるかよ!!!


「うん、言ったら通報されるよね」


 てめえが言うな!!!

 心の中でAIを罵倒していると、銀髪の女性が声を出した。

 結構背が高い。モデル体型の美しい女性だ。

 もう一度言うモデル体型の女性だ。

 3年ぶりくらいに遭遇したおなごだ!!!


「落ち着け童貞」


 AIがいじめる。


「か、感謝……する……。わたしはアルファート男爵家のシャルロットだ……うッ!」


 よく見ると足から血を流している。

 槍が突き刺さっていた。

 それだけじゃない片手が食われてちぎれていた。

 気づかなくてごめんね。

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