第3話

 二日目。

 物資投下の準備が整ったらしい。


「衛星からドローン切り離し。お兄ちゃん物資投下するよ!」


「了解」


「切り離し成功。惑星突入成功。速度落としながらドローン形態に変形」


 しばらく待つと上空にヘリ型のドローンが見えてくる。

 荷物の入ったコンテナが運ばれてくる。


「ドローンはそのまま偵察や物資運搬に使えるから」


「ういっす了解」


 物資のコンテナはかなり大きい。

 中を開けると食料にちゃんとしたテント、鍋などの生活用具に服と靴。各種医療品。

 缶詰と鍋とフライパンはうれしい。

 地上ドローンに浄化ナノマシン。

 これは建築用。ナノマシンは汚水の浄化とかにも使う。

 さらに漁ると着替えまで入っていた。

 下着がふんどしではなくボクサーブリーフなのが不満点である。

 俺の越中ふんどし……。俺のアイデンティティ……。チャームポイント……。


「それどうでもいいよね?」


 AIのツッコミが飛んできたので、次は武器。

 標準のビームライフルとレーザーソード。

 カードリッジが10個。

 太陽光で充電可能。

 10個もあれば数年はもつだろう。

 戦闘用のレーザーナイフと作業用の金属ナイフ。

 それに移動用の二輪車軽車両。いわゆるオートバイ。

 オフロード仕様のモトクロスタイプだ。


「テントを畳むと収納袋になるよ。バイクの後ろに取り付けられるからね」


 完璧だな。

 医療用ナノマシンの湿布薬。

 怪我をしたときに皮膚に貼ればナノマシンが入って治療してくれる。

 止血なんかもしてくれるので便利だ。

 消毒薬もある。


「この速度で生成しても大丈夫なのか?」


「反物質砲のおかげでデブリだらけだからね。原料使い放題」


 なるほど。


「いま小型偵察衛星も惑星の軌道上を航行してるよ。マップを脳内チップに送るね」


 バチッと頭の中で音がしてデータが送られてくる。

 地球型惑星。

 大気の成分は惑星日本とほぼ同じ。

 海の存在確認。川と真水も確認。

 それとこれが重要だ。

 街らしき構造物を確認。

 知的生命体が存在する!!!

 衛星軌道上からの写真では人の姿も確認できる。


「おしゃー!!!」


 ガッツポーズ。

 人がいれば生き残った共和国の惑星に連絡できるかもしれない。

 え? 惑星地球消滅?

 いやさすがに生き残りが本部作ってるでしょ。やだー!(フラグ)


「もーやだーお兄ちゃん! 住民らしき人影と通信を試みたけどナノマシンと脳のチップの反応がないよ。共和国民ではなさそう。ためしに帝国通信規格を試したけど、こっちも無反応。帝国でも共和国でもない……。そもそもこの惑星はデータベース未登録みたい。この宙域にデーターベースに存在しない惑星があるなんて……どういうこと?」


「今は考えてもしかたない。セレナ、引き続き調査を頼む」


「了解!」


 とりあえず着替えようっと。

 軍服に着替えると服の端末を操作して「洗浄」モードをタップする。

 超音波やらなんやらで体の洗浄をオートでこなしてくれる。

 くすぐったいのが難点である。

 そしたらデフォルトが礼服になっているので、制服のモードを「戦闘服」に切り替え。

 標準は黒で、迷彩モードにすると周囲の環境によって色を変えてくれる優れものだ。

 洗浄しながらボトル入りのミネラルウォーターを開ける。

 普段ならバイオ生成樹脂が使われるところだが、原料不足のため金属ボトルになっている。


「水の残りは? 現地調達が必要になるか?」


「そんな多くないよ。工業用用水も必要だから、お兄ちゃん水源の確保お願い」


「了解。とりあえず偵察ドローン飛ばすわ」


 そう言いながら俺はメシを手に取る。

 例の栄養バーだ。

 たぶん艦から切り離した部分にあった自販機の残りだろう。

 栄養バーを口に含む。

 薄いチョコレートビスケットinプロテイン味。うーん、ディストピア。

 水が無いと食べきれねえ。

 だがこれ一個で栄養はまかなえる。

 水をグビグビ飲んで朝食終了。

 サバイバルだからではなく、いつもの食事なのが恐ろしい。

 やはり毒ガスのリスクはあれど人間はカレーを食べるべきなのだ。


「おめーのとこだけだよ!!!」


 まるで俺が変態のようではないか!

 ひどい暴言をBGMに俺は荷物を運んできたドローンを軍服の端末とペアリングする。

 そのまま袖の端末で偵察モードにして設置。

 すぐにドローンは垂直飛行で飛んでいく。

 あとは動画の送信待ちである。


「とりあえずテント張るか」


 ドローンの偵察が終わるまでの仮の拠点作りである。

 一機だけなので周辺の偵察は明日まではかかるだろう。

 テントを出して広げる。自動で広がって設置完了。

 そこにランプ形の照明と寝袋を置く。

 外に組み立て式の簡易テーブルを設置。

 昔ながらのハーブの練り込まれた虫除けキャンドルをテーブルに置く。

 こういう小物は前宇宙時代から進化がない。

 テントの外に照明を設置。

 焚火をしてもいいが、今回はキャンプ用のバーナーがある。

 昔ながらのライターの動作確認。燃料充分あり。

 固形燃料充分あり。

 ただし火を使うようなまともな食料なしと。

 次はバイクの展開。

 軍服とペアリングして袖の端末から「展開」のボタンを押す。

 迷彩色の箱がバイクに変化する。

 オフロードバイク。

 複合レアメタル合金製。

 おそらく近くを航行していた軍艦の破片から精製。

 タイヤもおそらく軍艦の破片だろう。

 まさに諸行無常である。

 バイクの動力は電気。

 外に出しておけば充電される。

 緊急用に水素やアルコール、各種可燃ガスなどでも動作可能。

 歩兵の標準装備だ。

 ここまで終わり、あとはダラダラ寝てようと思ったらドローンから通信が入った。


「あん? セレナ、通信解析してくれ」


「はーい。ええっと、近くで人型生物が交戦中。襲撃者は人型の生物。襲撃を受けている方はホモサピエンス近縁種だと思う」


 なん……だと……。

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