第2話

 ひゅるるる。ちゅどーん!!!


 山が一つなくなった。

 俺の宇宙空間からの降下が原因だけどな。

 火の玉になった俺はこの惑星に降り立った。

 で、爆発に炎上っと。

 火山だらけの惑星日本だったら日常的出来事と言えるだろう。

 桜島マウンテンとかすぐ噴火するし。


「言えねえよ!」


 情緒不安定なAIがツッコミを入れる。


「ねえねえお兄ちゃん! どうして生きてるの!? 普通だったら大気圏突入で燃え尽きるよね? しかも大気圏から山に突っ込んで山の方が破壊されるって意味わかんねえよ!!!」


「日本人なら誰でもできる!!!」


 俺は仁王立ちで答える。

 元気があればなんでもできる!

 元気ですかーッ!!!


「答えになってねーッ! しかもふんどし無事じゃねえか!」


「……えっち」


 AIが俺を性的な目で見てる!!!


「ちっげええええええええッッッ!!! あー、もう! わかったこの不思議生物お兄ちゃん!!! はいはい次はどうするの!?」


「せっかく樹海に墜ちたんだしここをベースキャンプに設定。セレナ、戦艦撃沈時に放った衛星はどうなった?」


 呼吸ができるので大気は地球型惑星。

 爆発したってことは酸素もあるしな。

 酸素があるってことは水もあるだろう。

 見慣れた形態の広葉樹もあるし。


「いま通信を試みるけど反物質砲で壊れたかもしれない。あんまり期待しないで……って生きてる!!! この惑星の軌道を巡回中。どうやらこの惑星にバリアみたいなのがあってそれで反物質砲の衝撃を防いだみたい。やったデータベースも無事! 物質精製プリンターあるからドッグも製造可能!!! お兄ちゃん! 時間をかければ宇宙艦を製造できるよ!!!」


「宇宙艦の製造にかかる期間は?」


「ドックの建設からだから軽く1年はかかるかな。お兄ちゃん閣下、宇宙に転がるスペースデブリの再利用と接収品の使用許可を!!!」


「許可する。ただし遺体は敵味方関係なく発見次第軍規に則った処理をせよ。それと小型偵察衛星を作ってくれ。人が住んでいるかもしれない」


 勝手に死体使ったら怒るからな。

 それマジで戦争の原因になるくらいの禁忌だからな。


「ほいほーい! 死者の冒涜はAIの禁則だから安心して。まずはデブリの回収ドローンを製造っと。偵察衛星、明日の朝には完成するよー。ねえねえ、お兄ちゃん。このバリアの解析していい? あとさあ、この惑星の資源や生物の調査もしていいよね?」


「許可する。ただし知的生命体を実験台にするのは軍機上認められない。絶対守れよ」


 こいつ俺の言うこと聞かなかった前例があるからな。


「ういーっす! 軍規……いやお兄ちゃんとの約束は守ります! この巨乳にかけて!!!」


「こいつ……アバターすらない巨乳……いや虚乳にかけやがった……」


「やんのかコラ!!!」


「やーい虚乳!」


「バーカ!!! ざーこざーこ!!!」


 と不毛な言い争いをして相互理解を深める。

 一日目は爆発で折れた木の枝を拾って簡易テントを作ろうと思う。


「ふん!」


 手刀で倒れた巨木を切る。

 日本人なら誰でもできるし、これすらできないものは成人式に行われる百人組手に勝ち残ることはできないだろう。

 なお七五三は宇宙怪獣とのステゴロタイマンだ。


「どこの蛮族だよ!」


 はいはい。

 目標はフレームシェルターだ。

 いつ気候がかわるかわからんからな。

 大気の成分も不明だし。

 本当は木の葉も毒がないか調べたいけどセンサーもないのでわからん。

 いまのところ皮膚に刺激もないし大丈夫な気がする。


「衛星へ通達。サバイバルキット要請」


「もう作ってるよ。武器に軍服、それに食料と医薬品も明日衛星軌道上からドローン飛ばして配達予定。ぷーックスクス! そんなこともわからないの雑魚お兄ちゃん!!!」


「虚乳。ステイ」


「あ、お兄ちゃん! また虚乳って言ったな!」


 一見すると険悪そうなじゃれ合いだが、実際はいい暇つぶしである。

 AIだからちゃんと心理的ストレスを検出して適切なアドバイスをしているはずだ。

 あれ……?

 これが適切なアドバイスとすると俺は罵倒されて喜んでるドM……。


「おっと、それ以上考えるなお兄ちゃん」


「お、おう。考えたら負けだな!」


 俺はそう言いながら手刀で枝を落とす。

 そのまま手刀で木材加工。

 さすがにカンナがないと加工は難しい。


「そういう問題じゃねえよ!」


 木を並べて落とした枝を貼り付けて屋根が完成。

 地面に葉っぱを敷いて簡易シェルターのできあがり。

 兵士に埋め込まれてるナノマシンで対処できない毒虫や菌類がいたらアウトだが、それは運。


「生身で大気圏突入して無傷な化け物を殺せる菌や虫がいるとでも?」


「セレナ……人間は毒キノコ食べたら死ぬんだよ。AIだからわからないと思うけど」


「ああー!!! どんだけ強固なんだよ、この洗脳!!! かわいそうな子を見るような目すんな!!!」


 と、無駄な言い争いをしていたら日が落ち始める。

 慌てて木と木をこすり合わせて火種を作る。


「うわーい。お兄ちゃんパワーだけで生木から火をおこしやがったよ♪」


 なんかやたら煙いが気にしない。

 そのまま木に火をつける。

 学校での毒ガスの中で生活する訓練を思い出した。

 みんなにおかわり自由のカレー腹一杯食べさせて上から嘔吐ガス流すんだよな。

 ふふっ。なつかしいな。


「頭おかしいだろ! その学校!!!」


 こうしてキャンプ気分で一日が終了。

 二日目の物資投下と偵察衛星に期待する。

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