第5話 【SIDE勇者パーティー】回復師の置き土産


 一方その頃、魔王城から離れた森深くにて。


「いやー、それにしても大収穫だったな!」

「魔王を倒してくれた勇者のおかげだ。これでオレたち、王都に帰ったら英雄だぜ!」

「ホントホント。恩賞と合わせて、この魔王が身につけてた装飾品も売れば、ワタシたち一生遊んで暮らせるんじゃない?」


 勇者と戦士のゴードン、魔導士のアリシャは三人揃って喜びを抑えきれないと言った様子で歩いていた。


 時折、「あの回復士どうなるんだろうな?」「束縛魔法がかかってるんだから、ほっといても野垂れ死ぬだろ」「その前に魔族に食い殺されちゃうんじゃない?」と、そんな会話を弾ませながら。


 三人の胸の内にあるのは、王都に凱旋した後の自らの待遇やこれからの輝かしい人生について。


「それにしても、豪華なお宝だぜ」


 高揚感からか、はたまた何か自分たちの成し遂げた偉業を少しでも実感したかったからなのかは誰にも分からない。

 ただ、勇者が麻袋から魔王の装飾品を取り出して言った言葉に反対する者はいなかった。


「おい。これ、着けてみようぜ」


 どうせ王都に着いたら売り払ってしまうのだ。

 その前にこの見事な装飾品を身に着けて、魔王討伐の余韻に浸りながら帰路につくのも悪くないだろう、と。


 勇者の提案に戦士のゴードンも魔導士のアリシャも賛同する。


 そして――。


「うがぁっ!!!」

「何だコレ!? 何だコレっ――!?」

「火が、火がぁああああ!」


 魔王の装飾品を身に着けて生じた炎によって、三人は身を焦がされる。


 体を走る、激痛などという表現では生ぬるいほどの重苦。


 皮膚を焼かれ、眼球が捉えるものは炎のみとなり、耳から入ってくるのは己のものかもわからなくなるような絶叫。


 本来であれば間違いなく死に到達しうるはずの業火を浴び、それでもなお、三人は死ねない。


 回復士のかけていた全自動回復魔法という置き土産が発動しているからだ。

 もっともそれは、かけた本人にも、かけられた者たちにも予想などしようがない出来事だったが。


「あァああああああああああああ――!?」

「アツイアツイアツイアツイィ!!!」

「誰か、助け……」


 炎によって焦がされた皮膚は立ちどころに再生され、溶け落ちた眼球も再生する。

 決して衰えない再生を繰り返すその魔法の効果は、回復士の魔法がいかに強力であるかを物語っていた。


 勇者が冠を外そうと手を伸ばし、戦士のゴードンと魔導士のアリシャも腕輪を外そうと手を伸ばすが、本人たちにとってその間に感じる苦痛は永遠にも感じられた――。

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