第38話 千堂香織の章 その13
必死の説得もむなしく、結局デートすることになってしまった。
放課後、まだ何もしていないのに、ドキドキしている。会長にではなく、会長とデートすることに、しかも悪い方向でだ。変な勘繰りをされないことを祈りつつ、生徒会室に向かった。
生徒会室には会長しかいなかった。
「朝ぶりだね、千堂さん。待ちかねたよ」
「そうですか…」
「そんなに悲しそうに言わないで欲しいなぁ。ちゃんとデートプランだって、考えたんだよ?」
「ちゃんと考えられるんだったら、私とのデートの事より私の事を考えてもらえますか?」
「心配無用だ! 私は常に君の事は考えているからね。他の子の事を考えたりなんかしていないから安心してくれ」
「そういう意味じゃ………もう、いいです。早く行きましょう」
「おお、やっと乗り気になってくれたかい!」
「早く終わらせたいだけです!」
やっぱり会長は話を聞いてくれないらしい。いや、聞いてくれないというより、聞いた上で良い方に考えすぎというか…。どっちにしろ疲れる。
会長とのデートの場所はショッピングモールだった。学校近くのバス停から30分くらいのところにある。まあ、あまり遠くに行ったりは出来ないし、妥当だと思う。
「それで、何をするんですか?」
「そうだね、どこか行きたいところはあるかな?」
「いや、特には。というか、デートプラン考えてきたって、言ってたじゃないですか。それはどうしたんです?」
「それがね、実は、もっと専門的な施設に行こうとしたら、楓に止められてね。ショッピングモールとかにして、いろいろ教えてもらった方がいい、と言われてしまったんだ」
「はあ、そうなんですか? 教えるって言われても、私だって分かりませんよ。あんまり、こういうところには来ないので」
「そうか、困ったね…。じゃあ、私の行きたいところに行ってもいいかな?」
「まあ、いいですよ」
それから、会長と服屋に向かった。
分かってはいたけど、会長はあまりシャツとかスカートとかを身につけないらしい。せいぜい、制服だけだとか。
それなので、会長はいろいろと試着したがった。ワンピースに、ドレスに、カーゴパンツに、と本当にいろいろと試着して楽しそうだった。
そんな様子を見ていて、何を着ても似合っていて綺麗だと思った。
「どっちが良いかな?」
そう言って、会長は黒いワンピースと白いシャツを見せてきた。どっちも似合っていたけど、汚れが気になりそうなのでワンピースと答えておいた。そしたら、会長がレジに行ってそのワンピースを買ってきた。
「買う気だったんなら、そう言ってくださいよ。そしたら、もっとしっかりしたのを選んだのに」
「いや、これが良いんだ。君が選んでくれたやつだからね。しかし、その言葉忘れないでくれよ? 今度一緒に来たときは、君の好みで選んでもらうからね」
「……」
呆れと恥ずかしさが同時に来た。本当にこの人は…良くない。
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