第34話 金子透の章 その12
─月曜日
結局、昨日は何もできないまま月曜日になってしまった。まあ、なにかするつもりだった訳でもないから良いんだけどね。
明日も父さんに着替えを届けるために病院に行くことになっている。またお姉さんに、柊木さんに会えるかもしれないと思うと、制服に着替えるだけで楽しい。
朝ご飯を食べるためにリビングに行くと、母さんがつけたらしいテレビが映っていて、チャンネルは地元の地方局だった。内容は、土曜日の雨が止んだことについてで、この街について調べてるらしい人が出ていた。その人が言うには、今回のさらに前に雨が止んだのは2年前らしい。すごい熱弁で、グラフとか資料がいろいろと移されたけど、よく分からなかった。
教室に着くと、孝幸達が既にいたので土曜日のことについて話したくて興奮気味に声をかけた。
「おはよう、二人とも! 聞いてよ!」
「ああ、おはよう。どうした、そんな興奮して。あのお姉さんに会えたんか?」
「おはよう…。もう少し静かにしてくれる? 頭に響く…」
ひろしがすごくだるそうに返してくる。また、徹夜したんだろうなあ。倒れないか心配だ。
「孝幸、そうなんだよ! それはそうと、ひろしはまた徹夜でゲームしてたの? ほどほどにしないと危ないよ」
「ランキングが…抜かれちゃう…から、徹夜せざるをえない!…んだ…」
ひろしは眠いらしく、しゃべる声の大きさと強さが安定しない。それにしたって、そんなになるまでしないといけないなんて、ひろしのやってるゲームって一体…。
「まあ、ひろしは置いといて、だ。例のお姉さんと会えたんだろ? 良かったな! ちゃんと話せたのか?」
ひろしが嬉しそうに聞いてくる。一緒に喜んでくれるのは嬉しいけど、そんなに心配しなくても良いと思う。親じゃあるまいし。
「ばっちり、とは言えないんだけどいろいろと聞けたよ。名前とか大学とか…あと絵! 風景画やってるんだって!」
…いや、僕も話してる内に盛り上がってきて、子供が親に嬉しかった事を喋ってるみたいになってるから、人のことが言えないや。
「そうかそうか。まあ、良かったな。そういえばなんか聞こうとしてたよな?聞きたかったことは聞けたのか?」
「いや、話してる途中で雨が止んじゃって、お姉さんがバイトに行っちゃったから、駄目だったんだ」
本当に、なんであそこで晴れてしまったのか。もうちょっとで聞け…、聞け………たかは分からないけど、あの調子なら聞けたかもしれないのに!
「あー、そういや止んでたな。さすが、いや…、残念だったな、晴れ男! 」
「その呼び方は止めてよー…。あれはたまたまだって、前も言ったでしょ」
今は、本当にその呼び方は止めて欲しい。いや、いつも呼んでほしくはないけど。いつもなら笑って済ませられるけど、さすがに今は効く。
「ははは、悪い悪い。でもな、確かにたまたまかもしれないけど、あんなにぴったり合うことなんてそうそう無いだろ。疑いたくもなるって」
孝幸が絶対に悪いと思ってない感じで返してくる。
「そうだけどさ。本当に、たまたまなんだって!」
本当に、絶対に、たまたまなはずなんだ。決して、からかわれ続けてるから意地になって否定してるわけじゃないし。
「そういえば、次はいつ親父さんとこの行くんだ?」
「明日だよ」
「ほー。会えると良いな。もしかしたら、今度は雨が止むどころか、晴れるかもしれないけどな!」
「もう! やめてったら!」
「二人とも、うるさい…」
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