第32話 小此木沙絵の章 その10
─火曜日
結局また、もやもやしたまま家に帰ったので、ちゃんと寝られなかった。どうして、いつもこうなんだろう。
朝ご飯を食べて、学校に向かう。いつも通り雨が降っているだけのはずの登校の道なのに、なんだか暗く見える。目はしっかり開いているし、眠い訳でも…いや、少し眠いけど、それでもなんだか暗く見える。病気かな? 彼に心配してもらえないかなー。
「ははは…」
良くないとは分かっているけどそんな事を考えてしまって、出てきた乾いた笑い声は雨でかき消された。
教室に着いて彼の方を見る。今日も孝幸君達と話していて、楽しそうだ。
ため息が出てしまう。どうせなら、普段から篠田さんとのもっと仲良さげな様子を見せてもらった方が、諦めはしないものの気持ちに整理がつくのに。
荷物を置いて、後ろの香織ちゃんを見る。なんだか、困ったような顔をしている。この前のこともあるので、今度は私が、何か助けになれれば良いなと思って話しかける。
「おはよう、香織ちゃん! どうしたの? そんな顔して」
「あっ、おはよう。沙絵ちゃん…。大丈夫、何でもないよ」
嘘だ。絶対に何か悩んでる。私の幼なじみとしての勘と今までの経験がそう言ってる!
「言いにくいことなら話さなくても良いけどさ。頼りないかもしれないけど、たまには頼ってくれたって良いんだよ? 私達、親友なんだからさ」
「沙絵ちゃん…」
柄にもなくかっこいい事を言ってしまって、必死に恥ずかしいのを隠そうと香織ちゃんの方を見たら、なんだか泣きそうな顔をしている。あれ、なんかまずいことでも言ったかな!?
「ご、ごめんね! 何か嫌な事でも思い出させちゃったかな? 泣かせるつもりはなかったんだけど…」
「ううん、私もごめんね。相談しても良いって言ってくれて嬉しかったから、ちょっと泣きそうになっちゃった」
「そ、そっか。いつも助けてもらってるから、何か出来ないかなって思って。あんまり力にはなれないけど…」
「ううん。そう言ってくれるだけでも、本当に嬉しい。ありがとう、沙絵ちゃん。大好き」
「えへへ。私もだよ!…恥ずかしいな~」
いやいや、恥ずかしがってる場合じゃなかった! 悩み事を聞こうとしただけなのに、こんなに喜ばれるとは思わなかった。
「それで、何があったの?」
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