第24話 金子透の章 その10

ー暗い顔じゃなくなって良かった。


「そういう君は学校で部活とか、何かしてるの?」


「僕ですか? 僕は特に何も。中学の時はサッカーやってたんですけどね。練習が辛くって止めちゃいました」


「そっか~。まあ確かに、ずっとボールを追いかけてるイメージだし、大変そうだもんね。大会とかは出なかったの?」


「大会は三年生の時に何回かって感じです。一、二年の時もたまーに出たりはしたんですけど、ダメダメで。お姉さんは、絵の大会とかは出たりしてないんですか?」


「うーん、私もたまーにかな。あんまり描くのが速いって訳じゃないから、大会の締め切りに間に合わなくって~」


「そうなんですね」


「うん。賞は…、一回だけ銅賞を取っただけかな」


「すごい!」


「あはは、ありがとう。でも、全然だよ。毎回金賞取ってるような人だっているしさ」


「いやいや、本当にすごいですよ!」


 全く描けない僕が言うのもあれだけど、普通にすごいことだと思う。


「何の絵を出したんですか?」


「冬景色の絵にしたんだ。雪が降ってて、枯れた木が何本もあって、少しだけ日が差してるなかを、まだ冬眠してない動物が食べ物を探してる絵」


 想像してみようとしたけど全くわからない。


「へー。あの、その絵がどんな感じか見てみたいんですけど、写真とかってないですか?」


「うーん、写真か~。あー、ないみたい…。ごめんね」


 お姉さんがスマホの写真を探してくれたみたいだけど、残念ながら無かったらしい。


「あっ、いえいえ、こちらこそ無理言ってすみません」


 気になったので、見れなかったのは本当に残念だ。でも、どうして冬景色なんだろう? さっきの事と関係があるのかな…。


「あの、なんで冬景色にしたんですか?モチーフなら他にもあったと思うんですけど…」


 今更だけど、さっきからずっと質問しっぱなしだ。何も喋れないよりは良いんだとは思うけど…。つい、気になっていろいろ聞いてしまう。





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