22.安心
バイト先での僕への人気は大暴落した。
亜美さんが誰かにデートの件を愚痴として話したらしく、それに尾ひれ背びれが着いて、結果、僕は女たらしとして、嫌悪された。女性人気は言わずもがなひどく、それに共鳴するように男性からも疎まれた。まあ、男性からの場合は「俺はあいつとは違うよ」と差別化を図ることにより、女性から一目置かれるような魂胆があるような気もするけど。
僕の評価が変わると、当然ながら僕への接し方も変わる。陰口を装って、僕に聞こえるように悪口を言ったり、あからさまに軽蔑する視線を向けてきたり、いろんな趣旨の「私はあなたを嫌ってます」的行為を様々な人々からいただいている。
女たらし系の悪口は受け流せたが、画家についての悪口は堪えた。
これまで、僕に親しくしてくれた人間が、手のひらを反して僕の悪口を言う。
その差異に、ひどい眩暈と吐き気を覚えた。
もう、バイト先の全体が僕と言う共通の敵をつくることによって、一丸となっている印象である。多勢に無勢で、そうなると天下無双の「フェイス様」でも手の施しようがないらしく、むしろその逆で、嫌われるような行動をしはじめた。
例えば、軽率に女性に話しかけたり、以前まで活発かつ好青年めいた口調も、チャラめに軽くなった。おそらく、周りがそのようなキャラを僕に求めているから、「フェイス」もそれに応えているのだろう。「フェイス」に自我はない。故に、自分を尊重しない。
相手を尊重する彼は、何があろうと、相手を優先し行動するのだろう。
ちなみに嫌われたことで、居心地が悪くなったかといえば、そうではない。
むしろ、逆でバイト先に居座りやすくなった(とは言っても、別に居心地がいいわけではないが)。僕のこれまでの人生を考えれば、嫌われていた方が楽なのは明白だ。なにせ、人生の大半、ほとんどの人間に嫌われてきたのだから。
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