第4話 転生者には九つの命がある 〈4〉


  5


 〈這いずり姫〉は、あっという間に〈大喰らい〉の背後に追いついた。

 心身に相当の負荷がかかると思い込んでいた明だが、乗り心地――といっていいものかもわからないが――は悪くなかった。

 視界を血肉の檻に阻まれて、どうして外界の様子を確かめられようかという疑問もすぐに消え失せた。龍機融合を果たしてしまえば、どうやら屠龍機の五感と搭乗者の五感はリンクするらしい。ぼんやりしていた知覚系統が次第にはっきりと働きはじめ、まるで最初から自分のものであるかのように、景色が、風が、匂いまでもが脳髄に感覚として伝わってきた。

 やがて眼前に待ち受ける白龍の姿が明の視界にも飛び込んできた。

 間違いない。あいつだ。

 明たちの世界に逃げ込み、飛行機を墜落させたあの白い龍が眼前に立ちはだかっている。

『――いけるか、ジャヤ』

 どこからともなく声が聞こえ、明は思わずあたりを探るように見回してしまう。

『いけるとか、そういうんじゃない。やるんだ。ボクは奴を殺し、この街を、皆を守る。それだけだろうがよ!』

 呼び掛けに返答するジャヤの声もまた聞こえてくる。

 凛々しく少し高めだったはずのジャヤの声が、今は低く、口調までも荒々しく変化している。

「この会話は体内通信ってやつさ。リンクさせた機体同士で直接やり取りが可能だ。もちろん同乗者がいる場合の相手との会話や独り言も可能。今のおれらみたく、なァ」

 明が抱く疑問や戸惑い。まさかそれが逐一伝わっているわけではないだろうが、トワイライトは明が聞こうとしなくても必要なことはすぐに解説を入れた。

 ありがたいなどとは到底思えないが、知らないよりは知っていた方がいいことばかりだ。

「……あいつの様子、しゃべり方とかさっきと全然違ってる」

「アー。あれはジャヤが特別なのさ。やつはどうも龍機融合するとスイッチが入っちまうらしい。すると別の戦闘狂の人格が出てきちまう。生まれ変わるときに混じり合った魂魄に気性の荒い奴が紛れてたのかもしれないね。ともかく今のジャヤはさっきとは別人格だ」

「龍を殺すための、人格……」

 そんなものを拵えなければ龍を殺せないとでもいうのだろうか。あの夜明け色の勇者が。

「理由とかそういうのは、ジャヤならいずれアキラちゃんに直接教えてくれるだろうよ。それよりほら、始まるぜ」

 トワイライトの示す先、膨れ上がる紅と純白のエネルギー。

 ……人と龍の戦いが始まる。それが明にも痛いほど伝わってきた。

『今度はどこにも行かせねえよォ? 』

 トワイライトの〈這いずり姫〉が無数の符呪を操り、呪符を飛ばして結界を起動させると四方から蒼穹に至るまでの空間が外界から隔絶される。

 ジャヤはトワイライトを呪医だと言っていた。これまでの状況やその職称から察するに、精神と肉体の改造……とてもじゃないけど認める気にはなれないが、所謂「癒し」と相手に障りを与える「呪い」を生業としているのだろう。

「きもちわるい……」

「ン? どうした、アキラちゃん。酔うにはまだはやいぜ」

 思わず本音が漏れでてしまい、明は慌てて口をつぐむ。背後で笑みを漏らす気配。気取られている? まさか――。

 どうあれ、トワイライトは明の身体をぎゅ、と抱き寄せる。黄昏色の髪の毛が頬を撫ぜた。煙草の匂い、髪の匂いに、この男自身の匂いがする。奇妙なことに嫌な感じはしなかった。絶対、気のせいだ。明はそう思うことにした。

『ってなわけでェ、ジャヤ! 殺しきれよなァ!』

『龍撃砲発射までの時間は一〇〇秒。その間、如何なる攻撃も防ぎ通せ。いいな』

 合図と共にジャヤが〈大喰らい〉を駆り、白龍の喉元へと突っ込んでゆく。

 彼の獲物は巨大な両手剣だ。明にとっては何と刻まれているか分からぬ節句が刀身に彫り込まれている。

『ッだぁぁらぁぁぁぁぁおぉぁぁぁっ!』

 大剣を振りかざし、愚直にもまっすぐに懐に飛び込んでゆくジャヤだが――速い。

 その動きを目で追いかけることなど、明には出来なかった。気がつけばもうジャヤは龍の首元にいる。まるで瞬間移動だ。

 しかし刃を突き立てるも、不可視の障壁が一撃を阻む。そのまま二回、三回とジャヤはめげずに虚空を叩いて叩いて、叩き斬った。

「バリアーか何かがある、のか?」

「冴えてるねぇ、アキラちゃん。龍は大抵強固な結界をその身に纏っている。あの白龍も同じなンだが、先の戦いでだいぶ弱っているはずさ――ジャヤ! 一端下がりな!』

 〈大喰らい〉の姿が再び掻き消え、間髪いれずに地上から放たれた一撃が炸裂する。

 爆熱。都市から発射された砲弾が結界に命中したのだ。

 激しく暴れ出した龍を抑えに、新たに数機の屠龍機が飛来する。どれも統一されたアースカラーの機体だ。ジャヤの〈大喰らい〉やトワイライトの〈這いずり姫〉とは随分違い、どことなく無機的である。

『我々が抑える。ジャヤ、喰い破れ!』

『応よぉっ!』

 援軍は別の集団のものなのだろうか、それとも日本でいう警察や自衛隊のような機関の機体なのだろうか。ジャヤたちとは毛色の違う団体のようだが、そんなことはお構いなしに全員が息を合わせて行動している。そうでもしないと龍を倒すことができないのだろう。

 そこへ再び舞い戻った〈大喰らい〉が両腕でブチブチと何か――不可視のレイヤーを引き千切っていく。暴れる龍に揺さぶられながらも、数十センチ大の穴を穿つ、が――

『こなくそがぁっ、めんどくせぁぁぁッ!』

 拘束帯か何かなのか、ばごんっ、と音をたてて〈大喰らい〉の顎が開かれ、凶悪な歯牙が剥き出しになる。〈大喰らい〉はそのまま穿った空間に齧りつき、貪り始める。

 両腕で、牙で、龍の纏う結界とやらが無理やりに喰い破られてゆく。

『しゃッおらァァ! やっと辿り、ついたっ!』

 ジャヤが雄々しく叫び、大剣を構える。

『――いかん、退け。ブレスがくるぞ!』

『ンなだっせぇことしてられっかぁ! てめぇらクソ雑魚どもは避けてマスでも掻いて寝ていなァっ!』

 散開し、龍の吐息の軌道からそれていくアースカラーの一団。それを尻目にジャヤの〈大喰らい〉は今にも龍の口から放たれんとする劫火に向かって一直線に飛び込んでいくではないか。

「正気なの、あいつ……」

「正気というより狂気が今のあいつにとっちゃデフォルトなのさ」

 狂っている――というか向こう見ずというか、ある意味ではトワイライトよりも危険かもしれない。

「止めないと……助けないのかよ!? 仲間……なんだろうが!」

「助ける? 冗談じゃない。足手まといになるだけだ。ほら、みなよ」

 灼熱の咆哮が吐き出され、劫火が〈大喰らい〉ごとジャヤを焼き尽くした――かのように見えた。だが。

 巨大な両手剣で炎ごと掻き斬って飛翔し、紅い機体は龍の喉元に今度こそ肉薄していた。

〈大喰らい〉の勢いは止まらない。否、それどころか加速していき、炎を纏ったままで龍を一直線に引き裂いていく。

『龍撃砲、発射準備完了!』

『っ――てぇッ! おるァァァァっ!』

 龍を切り刻みながらジャヤが叫ぶ。

 白龍の喉元は白い骨が剥き出しになり、宝玉のようなものが露になっていた。

「あれが龍や竜の最大の弱点。逆鱗ってやつだよ」

 言葉の最後の方は聞こえなかった。街の中心部に聳える砲台から、激しい光の奔流が迸り、龍撃砲と呼ばれる高エネルギー弾が放たれた。

 昼すら黒く焦げつくような白熱に、暫し視野が灼き尽くされる。

 やがて戻った明の視界に飛び込んできたのは――竜の逆鱗に深く刃を突き立てる屠龍機〈大喰らい〉の姿だった。

「ジャヤ……すごい……」

 明がそう言い終えるのと同時に龍の双眸から光が失せる。

 刃を突き立てられた宝玉が、粉々に砕け散った。瞬間、ぐらりと全身から力がぬけたように龍の体が傾いていき、落下してゆく。轟音を上げて、市骸区へと白龍の躯が沈み込む。

 耳が痛いほどの静寂が訪れ――一秒、二秒、三秒――そして。

 あちこちから上がる歓声が明の耳に届き始めた。彼らはついに龍殺しをやってのけたのだ。

 ジャヤの上げる勝利の咆哮が明の耳にもはっきりと聞こえていた。竜血を滴らせ、紅い機体をさらに真っ赤に濡らした〈大喰らい〉――その中にいる筈のジャヤと束の間視線を交わした気がした。

 ……あの男はたしかに明たちの仇をとり、その光景を明の目に焼き付けた。

「……アーア、あいつだいぶ怒ってやがったンだねぇ。無茶しやがって」

 背後のトワイライトがうっとおしげに溜息をつく。

「じゃ、いくぜ。アキラちゃん」

〈這いずり姫〉を駆り、トワイライトは宙に浮かんだままの〈大喰らい〉に近寄っていく。それを見とめた紅き屠龍機が体勢をくずし、落下し始める。その機体を包みこむように〈這いずり姫〉が支え起こした。

『……すまない、トワイ』

『べつにィ、ですよ? 今度もしっかり稼がせてもらうだけだしィ』

『……メイ、くん……。聞こえてる?』

『あ……は、はい』

 はい。なぜ敬語なのだろう。でも、とっさに出たのはその言葉で。

『君の望むようにはいかなかったかもしれないけれど、龍を、殺したよ。ボクは、この手で――』

 龍を殺す。その言葉には哀しみや慈悲が込められている気がした。

 気高く、そして強い生き物を殺すということ。それが人にとって許されうる所業なのかどうか、明にはまだ分からなかった。

 そして、この青年になんと言葉を掛けるべきかも。

『あの、オレ……オレは……』

『ごめんね……ちょっと、寝るから、あとで、おこ、して……』

 明がなにか言葉を紡ぎ出すまえに、〈大喰らい〉が動きを止めて、虚空に消え去る。

 〈這いずり姫〉の掌には深い眠りへと落ちつつあるジャヤの姿が残されていた。


  6


 トワイライトの判断基準は倫理基準よりもよっぽどまともなようで、撤収の手際は完璧だった。

 龍殺しはめったに行われないという。しかし、それが行われたとなると街は大騒ぎになる。すぐに解体業者と浄化処理班が駆け付け、獲物の分配や運搬、そして街の浄化と再建が始まるのだ。

 現地に残した仲間と連絡を取り合いながら、トワイライト自身は明とジャヤを連れてその場からいち早く引き上げた。曰く「龍の死骸にはその精気のおこぼれを求めて悪い精霊も多く集まってくる。今のアキラちゃんにはちと有害なんでね」ということらしかった。

 帰途、黄昏に向かい、淡く暗く沈み始めた空を見た。どこか懐かしいと感じるその色はすぐ傍にいる男の髪と目の色と同じだった。

「ぜんぶ、夢ならばいいのに」

 気がつくと、明はひとりごちていた。

 夜の底冷えする空気が、風に混ざり始めている。明はぶるりと身体を震わせた。トワイライトはなぜか今度にかぎって明を抱きしめようとはせずに、自分の上着をかけてくれた。ありがたくもなんともない。なぐさめにもならないのに、明の目から一筋、涙がこぼれた。

「アキラちゃんにとっては悪夢かもしれない、いや、そうだろうねェ。でもこれがこの世界なんだ。まァ今日見たことはほんの一側面にすぎないしィ? 元気だしてイこうぜ?」

「……かえりたい。帰りたいよ。でも、帰れたとしても、もうオレは」

 生きてはいない。そして、オレには菊理がいない。

 遠くで燃える地平線が滲み、完全に藍色へと沈んでいく。

「オレは……オレを生まれ変わらせたお前が憎い。この先もずっと消えない。多分、ずっと憎んだままだと思う」

「アキラちゃんみたいなかわい~子に憎まれるなんてむしろ光栄だね。でも、苦しくなったらおれの残りの命、一個くらいはあげてもいいぜ」

 その意味に数秒遅れて気がついた明は思わず顔をあげ、トワイライトを振り返った。

 不敵だが、どこまでも優しい笑み。

「そうさ。さすがに一度きりだがねェ、アキラちゃんになら殺されてもかまわないよ?」

「オレがお前を……そうだな。オレは、お前を殺したい」

「殺せるんならの話だけどね。そうなったらおれは全力で抵抗するし、アキラちゃんをとことん傷つけるぜ。もう二度と生まれ変われないくらいに〈治療〉してやる。それでもいいなら、いつでも待つよ。寝首をかくなりなんなり、望み通りにしてみなよォ……」

 どうやら明になら殺されても文句はない、ということらしい。

 塵肉を集め、魂魄を回収し、人間をこの世界に生まれ変わらせる禁忌の符咒。トワイライトが言ったことは、それによって転生した明の意思をどこまでも認めた上での言葉だった。

「さあ、アキラちゃん。オマエはこの世界で何を望む? アキラちゃんがこれからどうするのか、おれはその行く末をとことん楽しませてもらうつもりだよ」

 凄惨な美貌に悪意と喜悦の滴る笑みを浮かべて、トワイライトは両手を広げてみせた。

 それはまるでかつてみた戯曲のワンシーン、悪魔メフィストフェレスの誘いのようだった。

「オレは……」

 まだ、わからない。

 それでも、たったひとつ。ひとつだけ、明の心の奥底に願いが――欲望が生まれていた。



 ジャヤは夜半になって目を覚ました。

 色々な出来事が胸中で渦を巻き、うまく眠れないという明に、トワイライトはジャヤの様子を見ているようおしつけてどこか別の階へと行ってしまった。目覚めたら枕許に括りつけられた釦を押して知らせるように言われたが、明たちの世界――現世でいうナースコールのようなものなのだろうか。

 身じろぎ、目を開けたジャヤの意識は明瞭なようで、明の姿を見てすぐに困ったような淡い微笑みを浮かべ、名前を呼んだ。もっともあの「メイ」という呼び方であったが。

「……あんたが目覚めたら知らせるように言われているから」

 明がナースコールもどきを押そうとすると、ジャヤが手を伸ばしてそれを押しとどめた。浅黒い肌に、大きくて頼もしい掌だった。

「……ん、それ、ちょっと待ってくれる、かな」

「なんで」

「もうすこし。もうすこしだけ、そばにいてほしい。……いてくれるだけでいいから。あの、ええと……おねがい、します?」

 明としては複雑な気分でしかなかったが、昼間あれだけの戦いをした姿を見た後だ。その願いのささやかさと眼前のすまなそうな顔をみて、明は溜息をついた。無碍にはできまい。

「……すこしなら……」

 沈黙。いてくれるだけでいいというのだから、あえて明の方から何か言う必要もない。

 けれど、明にだって、聞きたい事や確かめたいことが沢山あった。

 だって、何が分からないかも分からないのだ。

 本当なら誰かれ構わず掴まえて質問攻めにしたいくらいだ。だけど、ここまで出会った奴らときたらそんなことすらできないような一癖も二癖もあるやつばかりで。もちろんすぐ目の前で横たわるジャヤも同じだ。

「あ、その……メイくん、身体はもう平気、なのかな」

「……まだ、よくわからない。身体はオレの意思通りに動くけど、実感がない。それに、こんな……女にされて、どうしたらいいのかもわからない」

「……ごめん」

「トイレで軽く用を足すことすら屈辱的だった」

「それは……ごめんなさい」

 もう一度「ごめんね」と言い、ジャヤが幾度か何か……もっと長いことを喋ろうとして言い淀み、結局再び沈黙が訪れる。この分だと明がナースコールもどきを押すまで同じような問答が繰り広げられるだけだろう。

 言葉にするのは――はっきりいって無理だ。完璧に思いの丈を言語化するなんて。

 けれど、今言わなければここで終わってしまう気がした。自分の心の奥底に生まれた想い。願いというにはあまりにも野蛮なそれを、明は口に出すことに決めた。

「屠龍師って」

「えっ、あ……うん?」

「……どうしたら、なれますか」

「急に、どうしたんだい」

 明が至極真面目に問うているのが分かったのか、ジャヤも真面目な顔……それにどこか諦めたような微笑みを浮かべて答えた。明が言わんとしている旨を汲んだのかもしれない。

「オレは……今日のあなたをみて、強くなりたいと思いました。強くなりたい。それだけじゃない……オレはオレの人生を取り戻したい。でも、もうそれは叶いそうにない。それなら、おれは龍を殺し、殺し尽くして、オレや菊理の……皆の身に起きたありのままをやり返してやりたい。せめてそうしないと、なにも始められない。そう、思ったんです」

「……うん」

 ジャヤは肯定も否定もしなかった。

 ただ、ひどく寂しそうな目をしていた。

 でも――なんだって、構うものか。言ってしまえ。

「だから――だから、オレに教えてください。龍の殺し方を――オレは屠龍師に……なりたいです」

「……それは、とても大変なことだよ」

「でも、貴方は勇者なのでしょう。街の人たちが緋色の勇者と呼んでいるのを聞きました」

「……たまたま、そうなれただけさ」

「それでも、オレはオレにならなければいけない。この世界で。ならば……オレに教えてください。オレの頼みなら、貴方はなんだって聞いてくれるんでしょう」

 俯いてしまったジャヤの表情は暗がりに沈み、伺い知ることはできない。逡巡しているのか。それとも、断る口実を探している?

 あるいは、明を今ここで殺して無かったことにしてしまうことだってありうるではないか。

 しかし、それでも明の心に後悔の念はなかった。

「……メイくんは、ボクのことも、トワイライトのことも、この世界のひとたちのことが憎いんだね。龍の存在だけでなく、君の運命を狂わせ、一度は殺してしまったボクらのことが。そうなんでしょう?」

「……そう、です。オレは、あなた方のことすら憎い。だから……殺す。命をいくつ使ったっていい。いつか殺しきるつもりです。だから、だからオレに――わたしに屠龍術を教えてください」

 普通だったら、ここで殺されているだろう。

 でも、ジャヤは違った。

 どこまでも遠く、未来すら射抜くような夜明け色の視線を明に向けて、頷いてみせた。

「ボクは……君がボクを、ボクらを殺しきる、その時を待っているよ。九つの命のうち、二十余年、その年月をボクにくれたら、ボクが君を一人前の屠龍師にしてあげる。そしたら――」

 明の全身が総毛立った。

 ジャヤは笑っていた。

 ひどく慈悲深く、壊れた笑み。今までみたこともないような清冽な表情で、彼は誓った。

「殺し合おう。互いの命が尽き果てるまで」




第一話 〈了〉

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