第15話 少年の初仕事
ある程度の片付けが済んだので、ようやくモンじいの鍵屋業務の話があった。
「ウチは、看板通り鍵に関することが主な業務だ。鍵を作ったり、締まっている鍵を開けたり、ドアノブ交換このパレス内のどの部屋が使われているかを踏まえた地図作成ということがある。他にも、御用聞きみたいな、ちょこちょことした仕事もあるんだが、そこにある箱型の機械あるだろ?そのコンピュータってのが使えればもっと作業が楽になるみたいだが、どうしたらいいか分からないんだ」
この場所にも、パソコンがある。衛星作れるくらいだから、あるよな~。
「ねぇ、モンじい、暇な時に、このコンピュータを触ってもいい?」
「あ~、構わんぞ。もう、ずいぶん電源すら入れてないがな」
それから、少しずつ鍵に関する説明があった。仕組みや、どのように道具を使って解錠するのか。また、専用の道具を作るための旋盤や削る技術も教えてくれ、子供にそこまで説明する?というくらい惜しげもなく知識と知恵を教えてくれる。
それから、数週間、授業というより、みっちりと伝授という作業を鍵屋内で繰り返した。
ある日、専用道具を削り出していると、鍵屋内からベル音がした。荷物をかき分け、取り出した電話機でモンじいが話し始めた。
「はーい、鍵屋です」
え、電話あるの?孤児院や医務室で見たことないし、電話局なんてなさそうだよ。
「はいはい、2階の広い部屋の鍵紛失。え~え~、今からですね。はい、伺います~」
電話を切るなり、ライトが聞いた。
「電話がなんであるの?使える仕組みは?」
「よく電話の事を知ってんな。これはな、数軒だけの直通電話だ。この番号押したら、目的の相手につながる。今のは、ヤガミ商会から急な依頼だ。ライト、助手としての初仕事だ」
ある程度、各階のよく使われる鍵型を用意してあるので、それを現地で調整しながら作業するらしい。モンじいが以前使っていたカバンに準備してあった道具を入れ、いざ、初仕事へ。
2階、ここも初めて訪れる。数名が待っており、挨拶した。
「こんちには、鍵屋です」
「なんだ、この子は?」
「孤児院からウチの働き手になった、ライトだよ」
モンじいが、ドアの前にいた人たちに紹介してくれた。
「お前、孤児院でエグい攻めをしてた子だな。覚えてるか、ヤガミだ」
「はい、見られてたのを覚えてます、ヤガミさん」
以前、孤児院での度が過ぎる悪戯被害で騒動が起きた時に声をかけてきた人だった。ヤガミ商会とか言ったな。代表者なのか。
「なんだ、顔見知りか。さて、どのドアを開けたいのかね」
「えぇ、この両開きのドアの鍵を無くしたようで。ただ特殊な部屋なので、できれば鍵穴自体交換したい」
「そうなの?ライト、オレの工具箱から、テカテカの鍵穴だしちゃって」
「・・・はい、これですね」
そそくさと、交換作業が行われている。横で補助をする自分に対して、後ろでヤガミが、じっと見ている。見られながら緊張したが、ある程度鍵を削り、仕上げをモンじいにお願いする形で作業した。
思いの外、順調に進んだので、交換作業は大した時間が、かからなかった。
「仕事が早いね。この子は、どの程度鍵開けできんの?」
「実践はまだだね。依頼が来なかったんで、ライト一人の初仕事はいつだろうな」
「この後、仕事入ってないなら1件頼んでいいかな?」
「ライトにかい?ま、オレも同行するから行ってみようかね」
急に初仕事が舞い込んだ。開けられなかったとしても・・・という考えはダメだね。こういうヤガミみたいなタイプはモンじいという保険があると思って仕事すると、二度と頼んでこないだろう。ミスしても、自分でやり遂げないとすんごい嫌がる人だと思う。
その後、自分、モンじい、ヤガミとその部下らしいが3人で、6階に移動した。うわ、6階だよ、
通路を通って、宙神会の前を通り抜ける。今回は、ドアが閉まっていたので、何かやってる最中なんだろう。ホッとしながら目的の部屋まで歩く。ずいぶん、エレベータから離れた場所の一室が目的らしい。
「では、ライト。このドアを解錠してほしい」
「はい、分かりました」
自分のかばんから、解錠に必要な道具を他の人にはなるべく見られないように取り出した。技術を盗まれないように、というモンじいの教え。多分、ヤガミ一同は知ってそうな感じだけどね。
まず、ドアが施錠されてるか確認し、金属棒を差し込み、さらに別の工具でゆっくり探る。手の感触と音で、さらに探っていく。急に感触が変わった所で、工具を動かし、カチャッという音がして、どうにか解錠できた。
「うん、出来るじゃないか」
ヤガミから一言言われた。
「はい、開いたようです」
そう答え、道具を引き抜いて、自分はドアから下がろうとした。次の瞬間、中から人が出てきた。
「なんだ、お前は!人の部屋に泥棒しにきたのか!」
ずいぶん大きな男が出てきて、自分の胸ぐらをつかんできた。
また、こういう役目ですか?
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