お腹

@mannnennkinketu

第1話

都内にある某名門私立大学の司法学科

そこには,とある2人の青年がいた。


名前は四元冬馬

大学にはかなりの好成績で推薦入学しており,中学,高校の頃から様々な賞状を受賞している。

研究に熱心になり過ぎるところもあるが,基本的にフレンドリーで社交的な性格。

笑うと幼く,とても可愛らしい。

明るく愛嬌のある顔立ちをしており誰からも好かれる天才好青年だ。


もう1人の名前は一之瀬和葉

数々の天才医師を輩出している家系。

勿論両親も医者。

幼い頃から医者としての道が決まっていたが,両親の反対を押し切り私立の司法学部に入学。

そして,首席合格を果たしている。

シュッとした端正な顔立ちに、真っ黒で艶のある髪を持つ美青年。

基本人間関係は苦手で、研究や実験を口実に1人になることが多い、一匹狼。


天才であること以外はまるで正反対の2人は、お互いのことを噂程度でしか知らなかった。

きっと、関わり合うこともない。

2人ともそう思っていた。

が、きっかけというものは,案外簡単にできるものであった。

ある日、人体の生成についての講義で、2人の席が隣同士になったのだ。

普通ならそれだけだ。

が,冬馬は隣に座った和葉を見て、

「めっちゃ美人、」

と声を漏らした。

それに対して和葉は、驚きを隠しきれずにぽかんとした。

初対面にいきなりそんなことを言われたら,誰だってそうなるだろう。

「あー,ごめん。変なこといっちゃって、俺、冬馬!四元冬馬!」

「、、一之瀬、和葉です」

「じゃあ、和葉って呼んでもいい?」

根っからの陽キャである冬馬は,遠慮を知らずにぐいぐいと行く。

人見知りの和葉からしてみれば、恐怖以外の何物でもない。

社交辞令程度のぎこちない会話を2、3回しているうちに講義が始まった。

意外にも真面目な性格をしていた冬馬は、講義中,一度も和葉に話しかけることはなかった。

(あー、終わった)

これ以上話しかけられまいと、和葉はさっさと席を立ってそこから出て行こうとしたが、冬馬に呼び止められてしまった。

「和葉〜、今度また講義一緒になったら,また席隣に座ってもいーい?」

いきなり名前呼びという馴れ馴れしさに和葉は戸惑ったが,うまく断る理由もなかったので適当に返事をして研究室にもどった。

(なんだよあいつ、怖すぎんだろ)

なんてことを思いながら、和葉は研究に戻った。

調べているのは、生物の共食いに関することである。

生き物が同じ種族を食らう。

側から見れば,ひどく物騒な話だろう。

しかし、和葉は、そうは思わない。

生き物を喰らうことで,その喰われた生き物は食べたものの血となり肉となる。

そうなれば,喰われたものは喰ったものが朽ち果てるまで、いや、その後も喰ったものと共にあることができる。

弱肉強食は,大昔からの自然の原理であり、食べるということは最大限の愛情表現なのだ。

和葉はそう考えている。

もちろんそんなこと他人には教えない。

異端者であると思われるからだ。

和葉は性的嗜好障害、パラフィリアであった。











  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

お腹 @mannnennkinketu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ