12月20日 ビールと技術革新

 ちょこちょこご紹介してきたビールの技術。詳しく調べてみたら面白かったのでまとめてみます。


 ビールの三大技術は、こちらです。


・ 1866年 低温殺菌法

・ 1873年 アンモニア式冷凍機

・ 1883年 酵母純粋培養法



 まずは低温殺菌法。


 フランス出身パスツールがフランスワインの改良のために、低温殺菌法を考案しました。

 発酵は酵母、腐敗は雑菌によるものと突き止めたのもこのお方。

 残った酵母の活動を止め、雑菌を死滅させることで保存性を高めました。


 パスツールは愛国心が強く、ドイツ嫌いだったらしく、せっかくの技術がドイツビールの発展に大きく貢献したのは少し皮肉な結果になっているのかもしれません。


(日本酒でも「火入れ」という低温殺菌の工程が、パスツールの発見よりもずっと昔から行われていたそうです。すごい)




 次に、アンモニア式冷凍機です。


 当時は冬の間に氷を川から切り出して穴倉に詰め、ビールを貯蔵していたそうです。

 千リットルのビールに使う氷はなんと一トン。


 この冷凍機は一日に六トンの氷を作れたため、ビールの貯蔵が格段にしやすくなりました。

 ラガービールは冷却工程が必須なため、この技術はラガービールの普及になくてはならない存在だったといえます。




 最後の技術が、酵母純粋培養法です。


 パスツールの理論を基にしたこの技術によって、雑菌と酵母を分離することが可能になりました。さらに必要な酵母だけを培養して、麦汁に投入することで、ビールがより腐りにくくなります。


(不完全ながら、この技術より四十年ほど前から酵母の分離が行われていたようです)




 現代に染まりきった私にとっては、殺菌も不十分な環境で冷却装置もない中、美味しいビールが作れていたことがむしろ驚きです。


 嫌な言い方をしてしまうと、栄養豊富な液体に『雑菌混じりの酵母』を投入して『殺菌なし』で作るのが当時のビール。


 さらにエールは20℃前後の酵母の動きやすい温度帯――細菌やカビも活発になる温度帯で作られます。

 上面に浮き上がったあとの酵母は、非常に傷みやすくなるのだとか。


 ……ハードルが高すぎるっ!


 そのハードルを経験や工夫でカバーしてきただろう当時の職人たちはまさにプロ集団なのだなと感心してしまいます。

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