12月21日 水とビール

※ エールとラガーの記事を一部修正しました。

   変更点: ラガー酵母を使い始めた理由

        (水の硬度 → 腐敗防止)


(調べてみるとバイエルン地方内でも軟水〜超硬水まで地域によって幅があるようでした)



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 今回は、実はビールの味の決め手にもなる水について調べてみました。

 日本はほぼ軟水の地域ですが、海外産などの硬水のミネラルウォーターを好む方も多いと思います。


 水中に溶けたカルシウムやマグネシウムの量が少ないのが軟水、多いのが硬水で、口当たりや風味が異なります。


 一般に醸造に使う水の硬度が高いほど、ビールの色が濃くなり、口当たりもしっかりします。

 硬水はエールビールやダークラガーに適していて、軟水はピルスナーやヘレスなど明るい色のラガーに適しているようです。


 水の硬度の影響についてわかりやすい例が、チェコ生まれのピルスナー。

 この黄金色のビールは、バイエルン州の首都ミュンヘンで醸造されていた褐色のラガーが元になっています。


 ミュンヘンは硬水の地域であるため、ビールの色が濃く出ます。(また旧式の焙燥機を使っていたため余計に色が濃くなっていたようです)

 このミュンヘンから技師を招き、同じようなレシピで醸造して出来上がったのがピルスナー。

 ピルスナーの生まれたピルゼン市が軟水の地域だったことや麦の焦げない発売したばかりの焙燥機を使用していたことで淡い色のビールに仕上がったようです。



 さて、この色や風味の差はどこからくるのでしょうか?


 硬水の場合、麦芽の穀皮からタンニンなどを多く溶け出させます。同じように、紅茶やコーヒーも水の硬度によって風味や色味が変わるそうですよ。


 また麦汁の煮沸工程でもアミノ酸と糖のメイラード反応を促進して麦汁の色を濃くするそうです。



 さらに水の硬度は酵母の働きやすさにも影響します。

 パンや日本酒で硬度の影響の例がたくさんあって、興味深かったのですが、残念ながらビールそのものの例は見つけられず……残念。


 ビールの例を見つけられなかったので、日本酒の話になってしまいますが、かつて日本酒は、硬度が高い水でしか仕込めず、美味しくさらに硬度の高い水が名水とされてきました。

 硬度の低い水を使う場合は、酵母の働きの悪さから糖が多く残り、甘くて日持ちの悪いお酒になりがちだったとか。現在は、軟水でも美味しい日本酒を仕込む技術が確立されていて、麹をしっかり育てることで酵母の働きにくさをカバーするようです。



 他にはアルカリ性の水質の場合、ビール作りにはあまり向かないようです。

 ミュンヘンやダブリンで有名な暗色のビールは、弱酸性である暗い色合いの麦芽を追加で投入したり、ホップの比率を調製するなどの工夫がされているそうですよ。



 現在は、さらに技術が進み、水質を自由に調整できるようになりました。

 そのため、技術的には日本に限らずどこででもどんな種類のビールも作れるそうです。


 ただ、製品になるまでに八倍ほどの量の水を使うので、綺麗な水はやっぱり大切みたいです。




※ WHO(世界保健機関)での定義

(水1Lあたりのカルシウムやマグネシウムの含有量)

軟水      60mg/L 未満

中程度の硬水  60~120mg/L

硬水      120~180mg/L

非常な硬水   180mg/L 以上

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