第2話 大きくなった胸!?

 次の日の早朝、図書室。



 制服姿のヨルカが同じく制服姿のアクトの腕を引き、息を切らせて中へ入り鍵をかける。全力疾走だったのか二人とも汗だくで膝に手を置きゼェゼェと整え、先にアクトが話し出す。


「おい……はぁ……はぁ……朝から腕を引っ張って来て何なんだ! 宿題でも忘れたのか!」


 アクトが息を切らせながら訪ねると、相変わらず前髪で目元が見えないヨルカもまた息を切らせ胸を押さえながら首を横に振る。しばらくして二人が落ち着くと、今度はヨルカが泣きそうな声色でアクトに伝えてくる。


「あ、ああああ、あっ君! むむむ胸……私の胸が! 胸が!」

「胸? 胸がどうした?」

「そ、そそそそそそそその! おおおおおおおおおお大きくなっちゃって!」

「何!?」


 ヨルカがシャツの胸元を開けて手で胸を押さえながら彼に見せる。ブラは着けておらず、覗き込むとその原因がすぐにわかった。


「か、片方の胸だけ大きくなってる!?」


 アクトも驚き声を上げてしまう。

 重力で垂れ繋ぎ目も無い、彼女が押さえるとクッションのように形を変える彼女の身長とはバランスの不釣り合いな本物の巨乳が生まれていた。

 今にも泣きそうなヨルカが呟く。


「ど、どうしよう! 病気なのかな! 保健室の先生にみてもらった方が良いのかな!」

「……いいや待て」


 彼女の戸惑いにアクトは首を振り。


「俺に任せてくれ、ヨルムンガルド!」


 っと、彼はニヤリと笑みを浮かべ彼女の肩を叩いた。

 さっそく彼は準備を整え昨日と同じパーカーシルバーアクセを見にまとう。ヨルカは着替えに少し時間がかかるためそのまま待機し彼の準備を待っていた。


「それでは再び儀式を行うぞ! 迷える子羊ヨルムンガンドよ!」


 彼は大きくなった胸を極力触れないように、通常サイズの方へシールを貼る。


「ひぇ! そ、そっちに貼るの!?」


 驚くヨルカにアクトは冷静に告げる。


「よし、それじゃあ水をかけ……」


 彼が言いかけた時だった。


「ひぃ!?」


 突然ヨルカの小さかった胸がボンッと大きくなり、両方が均等なサイズに巨大化することが出来た。


「……これは」


 アクトは困惑しつつも考え込む。そんな中、半分以上パニックになるヨルカ。


「あ、ああああああああっ君!! これ変だよ! 私の身体どうなっちゃったの!?」

「戻れ」

「……え?」


 アクトが彼女の胸の前へ手をかざすと、大きかった胸が元の小さいサイズへと戻った。


「も、戻ったよ」

「目覚めよ」

「きゃ!?」


 アクトの掛け声で、またヨルカの胸が大きくなる。


「戻れ」

「も、ももどっ!?」

「拡大せよ」

「ひぇ!?」

「戻れ」

「ま、またもどっ……あ、あっ君待って!!」

「契約を果たせ」

「きゃあ!」


 大きくしたり小さくしたりを繰り返され身体を弄ばれるヨルカ。そしてアクトは気付き大きく高笑いする。


「くっくっく……フハハハハハ!」


 両手を広げ天高く高笑いする。


「ついに時がきたか……」


 アクトはシャツのはだけるヨルカの肩をガシッと掴む。


「喜べヨルムンガンド……デビルサモナーである俺は今日を持ってついに悪魔契約は成功したのだ!」

「え……ええ!? せいこう?」

「ああ、俺は人間からかけ離れた能力者へと生まれ変わったのだよ! お前の願い、そう! 胸のサイズを自在に変える能力を得ているのだ!」

「へ、へー、そうなんだ……って、えぇ!?」


 思考が追い付かないタイムラグのあるヨルカにアクトは続ける。


「もう少し能力を確認したい。何か大きくしたい物は無いか? ヨルカ」


 放心状態のヨルカに訪ねるが、思考が追い付かず彼女はボーッとしている。

 アクトは彼女の大きくなった胸を見てあることに気づく。


「ヨルカ、ブラジャーを出してくれ」

「……へ?」

「ブラジャーが大きくなるか実験しよう」

「……ええええええ!?」


 自身のバックを抱き締め抵抗するヨルカ。


「い……いやぁ……」

「ヨルカもブラを大きくしないと、今日一日ノーブラ過ごすことになるぞ」

「うう……」

「しかも今日、ヨルカのクラスは体育があるだろ? いろいろ擦れるだろうし、魑魅魍魎ちみもうりょうの男子の視線も気になるだろう」

「ううぅ……でも、下着を見せるのはちょっと……」

「俺を見くびるな!」


 アクトは真剣な表情でヨルカ説得する。


「俺達は小学生からの付き合い! もはや兄弟そのもの、血よりも濃い絆で俺達は結ばれているんだ! お前の下着を見て今更やましい気持ちになったりなどしない! 昨日も見ただろ!」

「……」

「頼むヨルカ、お前(の大きくなった胸)を救いたいんだ」


 彼の説得にヨルカは応じ、鞄から昨日とは違うレースのブラジャーを震える手で差し出した。


「い、一応、大きめのやつを……探してきたの……」

「……ん?」


 アクトは彼女のブラを受け取り見つめる。


「なんか、いつもと違う可愛い下着だな?」

「かかかか感想は良いから!!」


 ブラにシールを貼り指でパチンと音をならす。すると、一瞬で渡されたブラが大きくなった。


「フッハハハハ! やったぞ! 無機物にも効果があることを実証した!」


 特注しないと手に入れられなそう程大きくなったブラジャーを両手で広げ彼は高笑いする。


「掲げないで! あっ君、私のブラジャー早く返して!」


 涙目で必死に彼へしがみつき、下ろさせようと手を伸ばすヨルカ。

 そんな二人だが、これから更に大変な1日を過ごすことになるとは想像もつかなかっただろう。

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