第1章 覚醒変異

図書室儀式パート

第1話 男女二人で怪しい儀式!?

10年後~




 放課後。

 とある高等学校の図書室で何やら男女2人が怪しげなことしている。


「あ、あっ君……こ、これで良い?」


 背の低い黒髪ロングで前髪で目元が見えない、そしてゴシックドレスに身を包んだでの低い少女、もとい上沢うえざわヨルカが赤面しつつ震える手で平らな胸元をはだけさせ白いスポーツブラを見せる。


「あっ君じゃない。デビルサモナーマスターアクトと呼べヨルカ……じゃなかった……ヨルムンガンドよ!」


 黒いパーカーにシルバーアクセサリーを見にまとい、こちらも青少年へ成長したもとい押江おしえアクトが、ヨルムンガンドの左胸に指を伸ばし羽を模した黒いシールをそっと張り付けた。


「ひっ!?」


 ヨルムンガンドは小さく甲高い叫びを上げる。気にせずサモナーマスターアクトは霧吹きを貼ったシールの上へかける。


「ひやぁ!?」


 更にヨルムンガンドは、声量の無い悲鳴を上げて飛び上がる。


「変な声を上げるんじゃない! 誰かにバレたら儀式は失敗する。とりあえずあおいでシールを乾かすのだヨルムンガンド!」


 改めて説明するがここはとある地方の一般高校で図書室の一角。

 鍵を閉め放課後の夕日と部活動の掛け声意外何も入ってこない密室空間にこの男女がいる。図書室の真ん中に六本のロウソク床に書かれた赤い六芒星を怪しく照らす。

 ついでに部屋の角に掃除用具が用意し彼等が脱いだであろう学生服がある。学生である彼等がこんなことをして見つかればただでは済まないが、彼らにはやらなければならないことであったのだ。


「さあ、準備が出来た。これより悪魔召喚を執り行い、ヨルムンガンドの悲願を達成する。手を合わせ祈るのだ」


 マスターアクトがそう言うと、ヨルムンガンドは手を合わせ神社の参拝をするような姿勢でじっとする。

 それを確認したアクトは分厚い本を片手に日本語ではない言葉を唱え始める。

 そして、しばらくし……


「――ムシ、混沌、螺旋、特異点……でよ悪魔! 我が右腕を捧げる血の贄は整った! 我らのもとに具現化し契約を結べ! ハッ!!」


 アクトが右手をヨルムンガンドに向け、歯を食い縛り力を入れりきんでいる。しばらく彼の唸り声が響き、最後は彼は息を切らしながら手を下げる。


「もう良いぞヨルムンガンド。儀式は成功した!」

「う、うん、上手く出来たの?」

「ああ、少しやんちゃな悪魔だったが右手に封じ込めることに成功した。危うく学校が吹き飛ぶところだったが、安心してくれ」


 淡々と強敵との戦いを告げるアクトに、ヨルムンガンドの口元は緩む。


「ありがとうあっ君。私のためにいろいろ用意してくれて」

「デビルサモナーマスターアクトだ。長ければマスターで構わない。そして、礼などいらない。ヨルムンガンドよ、貴様は我が血を分け与えた眷族だ。我が配下についた以上、心に迷いがあってはならない。どんな小さな悩み事でも相談しろ。必ずこの俺が叶え道を定めてやろう。気にすることはない」

「えーっと……はい、ま、マスター」


 彼女は小さい声で頷く。

 それを見たアクトは、すぅっと笑みがこぼれる。


「よし、早く着替えて出るぞ。悪魔召喚に成功した記念だ。先程俺の魔眼イービルアイの力を駆使し自販機の下で200円も見つけてしまったからコロッケを奢ろう! ヨルカ」

「……うん!」


 と、今度はヨルムンガンドと呼ぶの止め、彼女をヨルカと呼ぶアクト。

 彼等は普通の高校生の姿に戻り、図書室を綺麗に掃除し、昔の出来事など遠い記憶のように二人は仲良く出ていった。

 あれから彼等は少し価値観が独特ながらもちゃんと成長し平和な学校生活を送っていたのだ。

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