ヒーロー その⑦

 ソレは腐女子ワタシ洗脳演説により、目となり耳に成り下がったうちの家族の一つに起きた出来事だった。

 はじめそのニンゲンの少女は、家族と一緒に例の宇宙人──少女は怪人と認識していた──を探していた。しかしいつの間にかはぐれ──しかし少女自身はその事に気づかず──いつの間にか辿り着いた、改装中と書かれた紙が貼られた大きなテントの前で、ソレを見つけた。

 肌がペンキみたいなピンク色で、服は金色。顔は見るだけで気持ち悪くて、叫び出したくなる、いやその少女はそれを見た瞬間、実際叫び声を上げていた。


「きゃあああああああああああああああああああああ!!?」


 しかしその叫び声を上げた時、父と母がいない事にやっと気づいた。そして自分が今、たった一人で悪の怪人と出会ってしまったのだと、ようやく少女は理解した。


『ナンダ、オマエ、ハ』


 頭に直接鳴り響く不気味な声。

 それだけで少女はパニックになる。


 なにこれ。なにこれ。パパ、ママ、どこ? 怖いよ、助けてよ。


『サッキカラノ妙ナ妨害ニ、関係シテイルノカ』


 怪人は顎(にみえる)に手を添え、考える素振りをみせる。

 その少女には何が何だか理解できなかったが、今なら逃げられると思いただガムシャラに怪人から走って逃げ出す。

 けれど無様な目撃者を見逃すほど、その怪人は甘くはなかった。だからこその怪人。ヒトの命を奪うことに躊躇いはない。

 宇宙人は手持ちの光量子加速指向制御砲(ニンゲン風に言えばレーザー銃)を構え、少女のがら空きの背中目掛けてレーザーを放とうとした。


 …………が、しかしそれは実行されなかった。


 何故ならその怪人の横っ面を、巨大な機械の拳が殴り飛ばしたからだ。


「Getaway from her,your bitchその子から離れろ、このアバズレ!」


 そうして可動型ロボットアームを搭載したトラック並みの大きさのパレード車を運転してきた、頭から手足の先に至るまで全身真っ赤な衣装に身を包んだ形離ヒーローはそう叫ぶのだった。

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