1‐3 永久の約束。新たなる世界
お待ちかねのTS娘の登場です。
やっとファンタジーな世界に移ります!(*^^)v
――――――――――
……え?
死んだはずの僕は、知らない場所にいた。
「やぁ。起きたんだね。よかった」
声をかけられた方を見ると、灰色のローブを纏った、橙色の髪に緑の目の、一目で外国人だと分かる青年が立っている。
「……誰?」
――っ声が!?
一言発した声は、僕の知るものより随分高かい。
「あー、まってまって、起き上がらないで。
その……服が」
「え?」
そう言われ下を向くと、真っ白な肌と、あるはずのない二つの小さな膨らみがあった。
そう、あるはずのものが無くなって、無いはずのものがあったのだ。
「うわっ!?ど、どういうこと……?」
「とりあえず、予備の服渡すから、着てくれるかな?」
僕はコクコクと頷き、服を受け取る。
青年は少し離れたところで後ろを向いているが、一応木の裏で服を着た。
その服は、現代日本で着ていた安物の服よりも遥かに着心地の悪い、ザラザラとしたものだ。
「ふ、服着ました」
慌てふためいた挙句、素っ裸を見られたとなるとさすがに気まずい。
「えっと、君はなんであんなところで倒れてたんだい?」
「倒れてた?」
「覚えていないのかい?少し休もうと思って通りかかった木陰に、君が倒れていたんだけど」
覚えているのは、男二人に復讐を果たした後、自分に包丁を突き刺している所までだ。
だが、さっき服を着ている時に確認したが、体に傷も、跡すらない。それに、そもそも性別が変わっている。
にわかには信じがたいが、生まれ変わったのだろうか。
というか、この現象はそうとしか考えられない。
ただ、まさか物語の世界が現実になるとは。
「大丈夫かい?ほら、水でも飲んで。それと、名前は分かる?」
差し出された水の入ったコップを受け取り、その水面を覗くと、そこには真っ白で綺麗な肌と長髪、真っ赤な瞳が映っていた。うそ、これは……
「……トワ!?」
「トワって言うのか。いい名前だね。
僕はアランだ。旅商人をしている。まぁ、始めたばかりなんだけどね」
僕の見た目は、前世?とは全く違うものに変わっている。でもこの特徴的な色。間違うはずがない。
大好きで大好きで、もう一度逢いたいと願ってやまない妹、トワだ。
と、驚愕している僕の隣でアランは気恥しそうに笑っている。
彼は彼で、始めたばかりの旅商人という職業に何か思い入れがあるようだ。
「……トワ。そっか、うん。僕、じゃなくて、私はトワ……です。えっと、旅人?なのかな?」
それで離れ離れにならないように、一つの体に合わせて転生させてくれたのだろう。
日本で一緒に暮らした、あの幸せだった頃の感情も蘇ってくる。そのおかげか、気持ちも前向きになった感じさえする。
悲しい思いをしないようにそこまでしてくれたのかと思うと、涙がボロボロと溢れて止まらなかった。
「えっ!?ちょっと。大丈夫大丈夫、落ち着いて」
「トワが……トワがっ。覚えででぐれ゛だぁ゛ぁ゛ー」
自分の名前を叫びながらわんわん泣く真っ白な女の子は不気味だろうが、アランは私が落ち着くまで優しく背中をさすってくれていた。
「落ち着いたかい?」
「はい。すみません、取り乱しました。」
――ホンットに恥ずかしい!顔あっつい!
私は精神年齢だけなら高校一年、16歳だ。
目の前のアランだって、多分それくらい。見た目的には日本にいた頃の僕とほとんど離れていないのだ。
――同い年ぐらいのやつの前でわんわん泣き喚き、背中をさすられるとは、何たる屈辱。
いやいや、もう考えるのはよそう。気にしたら負けだ。それに、私の体はかなり幼くなってるし。
そういえば、トワと出会ってだいたい十年か。
ということは、この体も十歳なんだと思うことにしよう。うん、そうしよう。
「これからトワちゃんはどうするんだい?」
――トワちゃんって……まぁいいか。
「えっと、アランさんは旅商人なんですよね?ついて行っちゃダメですか?」
――ここで捨てられるのだけはまずい。
ここのことは何も分からないし、何より無一文!!なんだから。
くぅ、背に腹はかえられんっていうし……これでもくらえっ美少女の上目遣い攻撃だ!!
「いいよ。ただ、馬車の荷台には空きがないから、御者台で良ければ、だけど」
「……わー、ありがとうございます……」
――え……すごい恥ずかしかったのに、超スルーされた気がする。
あんなに覚悟したのに……まぁいいか、捨てられなかっただけマシだよね。
「それじゃあ、早速出発しようと思うんだけど、もう大丈夫かい?」
「あ、はい。大丈夫です。行きましょう」
こうして、僕とトワそして、アランの世界旅行の第一歩が踏み出された。
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