1‐4 馬車の旅。時々魔法。魔法⁉
異世界の旅、スタートです!
ゲームとかでも、始まりも街から旅立つ時って、興奮しますよね(ง •̀_•́)
――――――――――
「アランさん。これからどこに向かうんですか?」
馬車に乗り少し時間が経った頃、おしりが痛いなーなんて
――せっかく
見た目と違い、腹のうちは真っ黒である。
「グレイス王国だよ。そうだなぁ……あと二日くらいはかかるかな」
アランの話によると、グレイス王国では近々バザールが開催されるらしい。
去年までは親の手伝いだったが、今回からは自力で頑張るのだそうだ。
そんな世間話ついでに、この世界のことを色々と聞いてみた。
今私たちがいる場所はクルーラ大陸といい、人族・魔族・獣族が混じって暮らし、魔物も一定数生息する巨大大陸だ。
これだけで、この世界がハッキリ地球では無いことが分かった。それにしても、例の如くしっかりファンタジーな世界だ。
そしてなんと!ファンタジーといえばの魔法も存在するらしい!
これにはテンション上がりまくりだ。
早速、詳しく教えて貰おう!
「魔法には、火・水・風・土の基本四属性があって、その他に光と闇、空間と時間の属性があるんだ。
ただ、光と闇はかなり珍しくって、空間と時間なんて神話にのみ伝わる魔法だから、使える人はいないって聞くよ」
――これはテンプレの予感‼全部の属性が使えて無双できちゃうやつなんでしょ!そうなんでしょ!
「基本四属性初級の呪文を教えるから試してみなよ」
「はい!」
私は、本当にウキウキした気分でその呪文を唱えたんだ……
『高らかなる炎よ、燃え盛れ!!』
……
ん?
『清らかなる水よ、潤したまえ!』
…………
んん?
『精強なる風よ、吹き荒れろ』
………………
『大いなる大地よ、生み出したまえ……』
……………………
「まぁ……誰もが使えるってわけじゃないからね。
魔法を使えるってだけで、職には困らないぐらいだし」
これには涙もちょちょ切れるってもんよ。
トワはうるうると、今にも泣き出しそうな目でアランを見つめる。
「あー……光と闇はイメージするだけで使えるらしいよ。
空間と時間の方は、ごめんね。詳しくは分からないや」
一縷の望みにすがって、光を生み出す魔法、影を生み出す魔法をイメージしてみる。
…………
「なにも……起きない……」
――どうして?せっかくのファンタジーなのにあんまりじゃない?転生特典は?
無一文すっぽんぽんでなんの説明もなしに放り出された挙句魔法も使えないなんて、なんて理不尽な神様だ。
そんな時だった。
頭の中に周辺の詳細な地図と、あらゆるものの場所に状態などの情報が飛び込んできた。
「アランさん。そのカーブした道の532メートル先に、ブラックウルフが一匹います」
「え?」
「あ、ゆっくりこっちに向かってきてます。走り出した!」
アランは馬車を止め、剣を抜く。
そして、自身とトワに
「もうすぐ来ます!……今です!!」
トワの合図でアランが道から飛び出し、目の前を剣で切り裂く。
するとそこには、頭を失って倒れるブラックウルフがいた。
「本当にいた……どうやって、いやまさか……
ねえ、もしかして、今のは空間魔法かい?」
「……これが、空間魔法なんですか?」
今、トワの視界の端には、ゲームでよく見るようなミニマップが表示されている。 それに意識を向けると、先程のように詳細な情報が得られるようになる。
アランに視界が今、どんな状態か説明すると、
「凄いな。やっぱりそんな魔法、見た事も聞いたこともないよ」
との事だった。これは、もしかしなくてもそういう事か!?
――うぉォォォ!!!神様ありがとーう!!!転生特典キター!!!やっぱりこうでなくっちゃ。うんうん
「その魔法があれば、王様に仕えることもできるだろうね。貴族になって土地も貰えるかも。良かったね」
「え……キゾク、ですか。それってその……領地経営とかする方の、貴い一族の方のキゾク?」
「そうそう。その貴族だよ。羨ましいなあ」
「えっとー。出来れば、私が空間魔法を使えること、秘密にして貰えたりとかは……」
「え、どうしてだい?せっかく裕福な暮らしができるかもしれないのに」
この世界に暮らす人からしたら信じられないのかもしれないが、私は旅がしたい。
裕福な生活に憧れないと言ったら嘘になるが、それは旅が終わってからでもいいと思う。
今はとにかく、貴族なんて絶対に困る。
「アランさん。私は旅がしたいだけなんです。
この空間魔法があれば、行商の役に立つかもしれません。どうか内緒にして、私を連れて行ってくれませんか?お願いします!」
トワは深々と頭を下げる。
ここで断られたら、逃げるしかないかな。
空間魔法が使えるからと言って、目立つ真っ白な見た目の小娘一匹。
ずっと逃げ続けるのは無理かもしれない。でも――
「うん。分かった。こちらとしても、君と一緒にいられたらいい旅になりそうだ。これから、よろしくたのむよ」
「ッ!?ありがとうございます!」
――よかったぁー……異世界に来て早々逃亡生活にならなくて、ホントによかった。
「ただ、あまり人前で魔法は使わないように気をつけてね。
さすがに人の口までは塞げないから」
「はい。それはもちろん」
「うん。それじゃ、そのブラックウルフの毛皮を剥いだら先に進もう」
――毛皮を剥ぐのか。ふーん。ちょっと試しに。
そう思い、ほんの、ちょっとした出来心で、ブラックウルフの肉と毛皮の間の空間を広げるようにイメージしてみた。
「わ!できちゃった……」
イメージ通り、肉と毛皮が完全に分離したのである。
トワの後ろで、馬車から皮剥用のナイフを取り出したアランがポカンとした顔になったかと思ったら、ジトッとした視線が飛んでくる。
「……人前で使わないようにね」
「は、はい。気をつけます……」
せっかくアランが黙っていてくれると言ったのに、調子に乗ってバレたりなんてしたら最悪だ。本当に気を付けよう。
それはそうと、毛皮は馬車に詰め込まれたのだが、肉はどうするのだろうか。移動手段は馬車だし、クーラーボックスなんて無いよね?
その事を聞いたら、食べれる部分だけ食べたら後は捨ててしまうのだと。いやはや、もったいないお化けに襲われそうですなぁ。
「あ、そうだ!干し肉にするのはどうですか?塩につけて燻製?みたいにすれば――」
「いやあ無理無理。塩は結構高いんだ。そんな事に使っていたらあっという間に破産しちゃうよ」
なんとびっくり、塩が高いと。海の存在を知らないのだろうか。ああいや、輸送手段が乏しいだけか。
――んー……アイテムボックスにしまえばいけるかな?
アイテムボックスというのは、空間魔法で作り出した異空間の倉庫のことである。
魔法で色々できないか試していたら、なんか知らんができてしまったのだ。
「捨ててしまうなら、余った肉はくれませんか?
「いいけど、グレイス王国に着く頃には腐ってると思うよ」
「ちょっと中の時間を止めてみたんですよ。その確認がてら、試してみたいんです」
「時間魔法も使えるのか……」
「はい。多分」
転生特典様々。ありがと、名も知らぬ神様よ。
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