1-2 復讐と終わり。そして始まり
ここまで胸糞微グロ注意です。
次話からしっかりTS転生娘が登場します。(๑و•̀Δ•́)و
――――――――――
病院から帰ってきた僕は、トワを抱いたまま布団に倒れ込んだ。血塗れたままだと言うのに泣き続け、疲れてそのまま眠ってしまった。
翌日、大家さんが来てトワのお葬式をすることになった。
真っ白だった毛並みも、真っ赤な瞳も何もかもが消え去り、骨となって、箱に詰められて、物となる。
元気に走り回っていた姿も、美味しそうにご飯を食べる姿も、もう見ることは出来ない。
世界でたった一匹の、僕の全ての、妹にはもう会えない。
「このドッグフード、まだまだ沢山あるんだよ……」
――つらいよ。
「ねぇ……トワ。どこに、どこにいるの?」
――さびしいよ。
「あれ?この箱、トワ?
なんで、なんで……あ、そっか。そこにいるんだね」
――僕もすぐにそっちに行くからね。
何も考えられなくなった頭を必死に働かせ、台所にある包丁を手に取る。
――ガチャ
「ご飯、食べてないんじゃない?」
心配してくれたのか、大家さんが鍋を持ってきてくれたみたいだ。そんな大家さんは、僕が虚ろな目で包丁を持ってるのを見て、顔色を青くして止めてくる。
「まさか、死のうとしてるんじゃないでしょうね!?
ダメだよ!そんな簡単に!」
「……死ぬ?何言って、違いますよ。
ただ、トワに会いに行くだけです」
「トワちゃんはもう死んじゃってるんだよ。君は生きなきゃ!
ほら、なんでもいいからやりたいこと、見つけよう?何でもしてあげるから、ね?」
「やり、たいこと……」
真っ暗だった僕の頭に、二人の金髪男の姿が浮かんだ。トワを虐めて走り去って行った、二人の姿が。
――そうだ。アイツらを殺さなきゃ。
惨たらしく、産まれてきたことを後悔させてやらなきゃ。
やり返してやるんだ。お前らがやった事、全部。
「……そう、ですね。見つかりました。
やらなきゃいけないこと」
「本当かい!?何でもいっておくれ!」
「とりあえず、お腹がすきました」
「あぁ!そうだろうと思ってカレー持ってきたんだ。沢山食べな」
その夜、大家さんとカレーを食べた。
うちの秘伝の味だと得意気に言っていたが、全く味がしない。
――トワに会いに行く前に、空腹で倒れる訳にはいかないよね。
大家さんの救いの手はドス黒い感情に呑まれ、見るも無惨に砕け散っていった。
僕には、トワしかいないんだ……
問題の金髪男共だが、どこかで見たことがある気がする。いや、そうだ。別にそんな事を考えるまでも無いじゃないか。
「学校か、バイト先しかない……」
僕にとって、人の顔なんて見なければいけないのはその二箇所しかないのだ。自分で考えておいて何だが、悲しい結論に行き着いた。
「ホント、酷い人生だな」
そう呟き、瞼を閉じた。
翌日、学校から探してみようと行動を始めると、奴らはすぐに見つかった。 どうやら、二人は学校でも問題児らしい。
何か気に入らないことがあれば暴れて、暴力で解決するような奴。
それが一週間、辺りをうろつき得られた人物像だ。
そして、復讐の時は意外とすぐに巡ってきた。
週末に、学校近くの山に女性を連れていくのを目撃したのだ。
「今なら、殺れる!」
大急ぎで道具を詰め込んだカバンを手に取り、奴らの後を追う。
山に入ってしばらくすると、小屋が見えてきた。
見るからに放棄された山小屋で、窓は割れ、戸は朽ちかけている。ホラーゲームなんかに出てきたら、完璧な雰囲気だろう。
そんな山小屋からは、女性の痛々しい声が聞こえてくる。
てっきり合意の元でそういう行為に及んでいるのかと思っていたが、違うらしい。
本当に、どこまでも救いようのないクズだ。
「良かった。悲しむ人は誰もいないみたい……」
自分の顔が酷く歪んでいるのが感じられるが、そんな事はどうでもいい。
カバンから岩を取り出し、そっと山小屋の戸を開ける。
「痛いっ……もう、やめてっ……あァっごめんなさい……ごめんなさいっ」
「お前は黙って股広げときゃいいんだよ。なぁ」
――ガンッッ!!
行為に及んでいる最中の男の頭に、後ろから思い切り岩を叩きつける。そのままの勢いでもう一人の男に突っ込み、顔面を岩で何度も殴りつけた。
汚い血が飛び散り、男は壊れてゆく。
持っている岩が軽い。最高だ。
「あは、ははは……はぁ、ふふ。
見てないでさっさと逃げたら?あ、でも、警察に行くのは明日以降にしてね」
そう言われた女性は、涙でぐちゃぐちゃになった顔で小さく「分かりました。助けてくれてありがとう」と言い、山小屋を飛び出して行った。
「さて」
僕はロープを取り出し、二人が動けないようにきつく縛ると、気絶している男の脚に思い切り包丁を突き刺す。
「あァ゛っっ!?……なんっだてめぇ!!」
男の叫び声は無視し、逃げられないようになるまで、手足を完全に破壊し尽くした。
「……なん、なんだよこれ。
なんで俺がこんな目に……」
二人目の男の手足も壊し終わったところで、僕は二人に問いかける。
「一週間ほど前にさ、お前たちが殺した犬のことは覚えてる?」
「いっ、犬……?犬って、あの白いやつのことか?」
「まさか、お前、あの時の飼い主か!?
そんなことで俺たちはこんな目に合ってんのかよっ!?ふざけんなっ!」
「そんなこと?僕にとってはそんなことじゃないんだよ。
まぁ安心して。しっかり返してあげるから」
何を勘違いしたのか、二人は少し安堵したような顔をしたが、再び包丁を突き刺し始めたことで、また絶望した顔となる。
僕は、何度も何度も包丁を突き刺す。
その間、隣で許しを乞う声が聞こえていたが、そんなものは無視した。
そして、二人にしっかり返し終わり、呆然とする。
「終わった……これで、やっとトワに会いに行けるね」
血に濡れて真っ赤になった包丁を構える。
それを、今度は自分に突き刺した。
何度も何度も。
トワの受けた痛みを、今度は自分が受ける番だと言わんばかりに。
激しい痛みに気を失いそうになるが、新たな痛みを受け、何とか食いしばる。
そうして、繰り返しているうちに体が動かなくなった。
「…………」
「…………」
「……トワ?そこに……いるんだね……」
――ごめんなさい、私達のせいで。
「何、言って……ずっと、一緒にいるって約……束、し…………」
――私の魂をあげるわ。
これなら今度こそ、ずっと一緒よ。
お兄ちゃん、幸せになって。
「…………」
僕は、死んだ。
トワに魂を貰ったみたいだが、結局助からなかったようだ。
◇◆◇
視界が真っ白だ。
どれだけそこにいたかは分からない。
長い間だったのか、一瞬だったのか。
ただ一つ、その白い空間にはトワがいた気がする。
なんとなくだけど、そんな気がした。
そして目を開けると、何故か木陰で横になっていた。
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