奇襲集団

「やれやれ…やりやがったなノルフ、二重で裏切るなんざ」

 ハッド=ワン=ケト=ブレソナー、通称ハドン。元TT所属の軍人であり、現在はSoDの幹部を務めている。

「情け無えなぁ、武人肌が2回も裏切るなんてよ」

 横に並ぶのは、ティルス=ディアーズ。同じく、SoDの幹部格。

「ヴァーデンの技術、漏れちったら手がつけられねえよなぁ?技術はともかく、ヴァーデンの警備は甘ェんだよ」

「簡単に侵入を許しちまえばな、俺等みたいな不届きも―――」

 仲間の兵士が呟いた一言に反応し、鬼の形相で振り向くティルス。

「今、何つった…?!」

「え…は、はい??」

「SoDを不届き者って言ったのかって…聞いてんだよォォォッ!!」

 頭を切り刻まれる兵士。

「SoDこそ真の強者だァァ!良いかお前らァ、こいつは我が高貴なる軍を侮辱した!こいつこそが不届き者だァ!SoDを馬鹿にしてる奴らはァァァ!虐殺し!皆殺し!根絶やしにしろォォォォォォ!!」

 甲高い声で、ティルスは叫ぶ。

「神剣:Rリバース

 その横で、ハドンは神剣を起動した。

 ―――

 スカイマシン内。

 俺は、およそ数十km離れた位置にいるグウィンと通話していた。

〈メンタルが直ったなら良かったです〉

「完璧じゃねえけどな。ノルフみたいな奴を減らすためにも、SoDを潰さなきゃならない」

〈忘れないでください。任務はヴァーデンの防衛です、攻撃はしませんよ〉

「分かってるさ」

〈O.Wが来ている様子はありません。一度着陸します〉

「了解。こっちは交渉に向かう。カーズ、スピードを上げてくれ」

 通話終了。

 部下、遊撃隊尊将であるカーズ=ビーザーは、レグザム首相の待つ、ヴァーデンの中心――ライツルーマーへ向かうべく、スカイマシンを加速させた。

「飛ばしますよォォォ!」

 普段はまともだが、ハンドルを握ると頭がおかしくなることから、B3内での異名は暴走車バーサーカー。武装スカイマシンでの戦闘が非常に強く、機動力の高さを買われて、この遊撃隊に異動となった。

「…ん?」

 窓に映る景色の変わり方が余りにも速すぎる。

 芽生えた危機感と共に座標計を確認したところ、確かにヴァーデンのある北西方向へと向かってはいる。

 しかし、数値の変動速度が異常なまでに早い。仮にこの運転を地上で行えば、まぁ確実に死人が出るだろう。

 そして太平洋上空にはゴッドキャッスルがあり、哨戒のスカイマシンが犇めいている。

「レーサーの血が騒ぎますねェェ!」

 カーズの絶叫が聞こえ、俺は頬を冷や汗が流れる感覚がした。

 ゴッドキャッスルの哨戒車は馬鹿みたいにコストが高く、事故ればただでは済まない。怪我じゃなく、B3そのものにダメージが入るのだ。

「おい落ち着け!」

「大丈夫ですよォ!見ててください!」

 景色の変化がどんどん早くなる。

「おいこれ以上…」

 ふと気づく。

 本来、上官としてこの行いは殴ってでも止めるべき愚行。そもそも俺達は軍隊であり、ある程度厳しい規則は存在している。

 確かにこいつの運転技術は誰もが認めるところ。しかし、仮にここで殴ったとして、こいつは殴られてもなお運転できるほど強いのか?

「ゔぁぁぁらぁぁぁ!」

 奇声を上げながら暴走の極みを繰り返すカーズ。俺は呆れと諦めを抱き、大人しく眠りについた。

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