B3

「ん…?」

「動くな!」

 俺が目を覚ますと――大理石の空間で磔にされ、囲まれていた。

(まさか…俺がヴァレクを殺害したと思われてんのか!?)

 頬に冷や汗が流れた。気絶する瞬間、俺の左手がが一瞬だけ赤と青に発行したのを確認していた。推測としては、それにより何故かヴァレクが死亡、後にB3の誰かに乗り込まれ、たまたまヴァレクの死体と共に倒れる俺を見て、殺害に及んだと判断したのだろう。

「お主がそんなことをするなんてな…」

「ライ!」

 包囲の中から、白い髭を生やした、如何にも仙人の様な風貌をした男…居住区管理者を除き、B3最強、十神宝剣の内の一つを所持する者―雷獣のライが現れた。

「一応聞いておこう。何故あのような惨事を行った?」

「…正直に話しても信じてもらえんのか分かんねえ。簡潔に言う。マニュレイがヴァレクを洗脳した」

「なんと!」

 俺に銃を向けていた兵たちの声が騒がしくなる。

「ってか、一回降ろしてくれないか?武器なんて持ってねえし、何より素っ裸なんだよ」

「…よかろう、杭を抜け」

 ライの指示により、強引に俺の手から杭が引き抜かれた。

「痛ってえな…もう少し丁寧にやれよ…。で、流れを説明すっとだな…イレイズから敵マシンの追跡を命じられた」

「何?あの時お主らは命を受けておらんかったはずじゃが…」

「そうなのか?」

「まあよい、続けよ」

「司令通り敵マシンを追跡し、制圧したんだが…何故かマニュレイがヴァレクを攻撃した。直後にヴァレクが苦しみだし、俺と交戦。ショットガンを撃たれたところで記憶がなくなった」

「…お主の意見と儂らの見た光景には相違があった。まず、あの空間にマニュレイはいなかった。そして、ヴァレクは血塗れで、お前は無傷でその場に倒れていた」

「当たり前だ。マニュレイはヴァレクに、俺の殺害を命令し消えたんだよ。唐突にな」

「…」

「別に信じなくてもいい。この場で俺を処刑してもいい…殺すんなら痛みはないように頼む」

 問題無い。敵に殺されるよりよっぽどマシだ。

「判断の余地はない。殺せ」

「…」

 ん?ライの反応がいつもと違う…?

[あー、あー、マイクテスト、マイクテスト]

「司令官!」

「イレイズ!」

 思わず普通に名前を呼び、ライから思い切り睨めつけられた。

「口を慎めと何時も言っておろうが」

「別にいいだろ。もともと知り合いだし」

[その辺にしておけ]

「はっ!」

[…えー、それでは、ライ=リュウデン]

「はっ!」

[お前、何故そこにいる?]

 何?

[指示などしていないし、そもそもライはここにいる]

 まさか…

[答えろ、貴様は誰だ?ロクスの処刑を進言したのは、あいつが邪魔だったからだろう。ロクスがやっていれば、私も躊躇なく処刑する。が、そもそも、爆発で吹き飛んだ例のスカイマシンを《復元の刻印》《復像の刻印》を使って解析したのだが、マニュレイが刻印らしきものを発動してから、ヴァレクがロクスを攻撃、そしてそれに対し、ロクスは一切の攻撃を加えてない。突如、左腕が光りだし、倒れたあとに…ヴァレクを串刺しにした以外はな]

「…」

[だがこれも、本人の意志はないと見える。友人だからという贔屓などではなく、少なくとも目視できる範囲ではな]

「…バレたんならしょうがねえか」

 俺のもとに居る偽ライが…俺の周りの兵士全員を、瞬く間に八つ裂きにし、俺の腹をも貫通させた。

「が…ぁ」

 意識がまた飛びかけたその時だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る