第16話 蘇軾〈縦筆 其一〉

病める翁が東坡にひとり

霜にこごえる白いひげ

良くなったねと喜ぶ子供

これは酔ってて赤いのさ



(ひらがな表記)

やめる おきな

 ①やめる おきなが とうばに ひとり

 ②しもに こごえる しろいひげ

 ③よくなったね と よろこぶ こども

 ④これは よってて あかいのさ


①寂寂東坡一病翁

②白鬚蕭散滿霜風

③小兒誤󠄁喜朱顏在

④一笑那知是酒紅


【ひとこと】

 蘇軾そしょくこと蘇東坡そとうばの作。都々逸にまるで馴染みがなく、でも知ったからには詠んでみたい7775。①②と③④の都々逸ふたつにしてみた。

 都々逸は基本的に34、43、34、5でつくるものらしい。「よくなったね/と」の61がセーフかアウトか気になりつつ、ヨの頭韻を優先した。「よくな/ったねと」のリズムで読めなくもないのでセーフだといいな。

 この詩は元々ひらがな表記のつもりで作ったのだが、漢字かな混じりの方が面白そうで悩む。いや、どう考えても漢字かな混じりにするべきなのでは……?という訳で順番は漢字かな混じりを先にした。


【訳詩の構造】

 ①②は「霜」「白」の「シ」で頭韻。頭韻するなら2回では弱い、3回したいという気はするけど限界だった。そのためややこじつけとして「ひとり」のHiの「i」が先駆けっぽく聞こえる気がしたりしなかったりすることに触れる。ついでにタイポグラフィーとして「ひとり」「ひげ」の「ひ」を合わせた。

 ③④「良くなった」「喜ぶ」「酔ってて」の「ヨ」で頭韻。こちらは理想通り3回。それも7775にたいして◯◯×◯形式の押韻!理想的!常にかくありたし。

 ①③「翁」と「子供」がついになる。翁は男性の老人、つまりお爺さんの意味。

 ②④「白」と「赤」が対。


【元の詩の解説】

翁、風、紅で押韻(脚韻)。

白居易〈醉中對紅葉〉を踏まえているらしい[1]。杜牧〈山行〉も典故だろうと勝手に思ったので先にこの2つを(カクヨムに)あげた。

 ①「東坡」は蘇軾のことと読む説[1]と、地名のことと読む説[2]がある。ここでは地名としてとった。

 ③「小兒」は小さな息子。ここでは蘇軾の三男を指す。[1]


[1]川合康三 編訳『新編 中国名詩選』岩波文庫、二〇一五年

[2]MEIWEN.com.can 美文阅读「寂寂东坡一病翁,白须萧散满霜风的意思」

 https://m.slkj.org/c/4186.html

二〇二三年一月十三日閲覧

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