第13話 白居易〈菊花〉

とうりのきく

はつしもに かわらの かろき よあけかな

ばしょうのは あらたにおれて やれはちす

かんのなか とうりのきくのみ りんとして

あかつきに ひらく きんかの すがすがし


一夜新霜著瓦輕

芭蕉新折敗荷傾

耐寒唯有東籬菊

金粟花開曉更淸


 白居易〈菊花〉は陶淵明〈飮酒 其五〉を踏まえて詠まれた詩。この詩はなんと白氏文集に入っていないらしい[1]。今は新釈漢文大系から白氏文集が全詩読めるし、ジャパンナレッジから検索もできるので私も調べてみたが確かにヒットしなかった。私の手元の本でこの詩が読めるのは土岐氏の本くらいだ。この詩について土岐氏の「詩としてはやや平俗というほかない」の指摘[2]には思わず笑ってしまった。だから白氏文集に載ってないのか、そも別人の作なのか。なんにせよ愛されている詩には違いない。

 菊と霜というとこれが浮かぶので置いておく。こちらをばっさりやったのは正岡子規氏だが広く愛されている点で同じ。私はどちらの詩歌も好きだ。

 

 凡河内躬恒(百人一首29番) 『古今集』秋下・二七七

  心あてに折らばや折らむ初霜のおきまどはせる白菊の花


[1]「菊花」(白居易)という漢詩の出典を知りたい。 | レファレンス協同データベースhttps://crd.ndl.go.jp/reference/modules/d3ndlcrdentry/index.php?page=ref_view&id=1000162177

 二〇二二年十二月二十五日閲覧


[2]土岐善麿『鶯の卵』筑摩書房、一九八四年(初出は一九二五年)

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