第9話 陶淵明〈飮酒 其一〉

さかえ おとろえ またさかえ


  さかえ おとろえ またさかえ

  どちら ぐるぐる めぐるもの

  ショウシはたけに うりうえて

  トウリョウコウと おおちがい

  さむい あついも まためぐり

  ひとの かふくも またおなじ

  その ことわりを かいすれば

  さきざき うれう こともなし

  この いっぱいの ぐうぜんを

  ゆうひと ともに よろこぼう


衰榮無定在

彼此更共之

邵生瓜田中

寧似東陵時

寒暑有代謝

人道毎如茲

達人解其會

逝󠄁將不復疑

忽與一觴酒

日夕歡相持


【ひとこと】

 陶淵明と酒の話を聞いたのでとりあえず手元にあったこちらをアップしようというアレです。その五も訳し済みのあるので追ってアップしますね。(見たいならおだててみよう荻原を木にものぼるし空も飛ぶ)

 栄枯盛衰をうたうのは好きです。いずれ散るから満開のさくらを謳うのと同じ心ですね。

 さて白居易を読むなら陶淵明も読まなくてはいけません。そうしないと「とうえんめいのスタイルをまねる」[1]と言われても何のことかわからない……。訳詩は武部利夫氏のスタイルを真似ました。七五調のひらがなで訳詩するスタイルははじめ三野豊浩氏の訳[2]で知ったのですが三野氏もまた武部氏の影響からこのスタイルを始めたらしいですね[3](ただし三野氏は元の詩の長さによらず四句固定とするため要約の性質がより強い)。 

 このスタイルで使える言葉と、漢字かな混じりで使える言葉には差があるので一度やってみると面白いです。


◯ショウシ 「ショウ」は項羽や劉邦の時代を生きた邵平しょうへいのこと。栄枯盛衰の例としてよく詠まれている有名人。

◯トウリョウコウ 東陵侯。邵平は秦では東陵とうりょうという土地でこうの身分だったが、秦滅亡後は長安城外で瓜栽培を生業とした。


[1]武部利夫『白楽天詩集』平凡社ライブラリー、一九九八年

[2]三野豊浩「研究ノート「范成大詩選」拾遺」『愛知大学 言語と文化』No.41、二〇一八年

 https://taweb.aichi-u.ac.jp/tgoken/bulletin/pdfs/NO41/14p240-220%20MINO.pdf 二〇二二年十二月八日閲覧

[3]三野豊浩『范成大詩選』幻冬社、二〇一八年

[4]釜谷武志 著『陶淵明 新釈漢文体系 詩人編1』明治書院、二〇二一年

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