第19話 曹丕〈短歌行〉
うえみればカーテン
したみれば絨毯
そのままの書斎
人だけがいない
父の霊はあっという間
私おいていった
頼っていたかったのに
顔をみることもできない
涙わいてわいていまも
ゆうゆうと鹿は鳴き
子鹿つれてあそぶ
ゆうゆうと鳥は飛び
雛とともに棲まう
私ひとり、ひとり
胸に
「
誰か私を知るとでも!
人は、こうもいいます
「
ああ、なんと早いこと
髪がこんなに白くなりました
あなたの
口にしては
「
そんな言葉もあるのに
仰瞻帷幕
俯察几筵
其物如故
其人不存
神靈倏忽
棄我遐遷󠄁
靡瞻靡恃
泣涕連連
呦呦遊󠄁鹿
銜草鳴麑
翩翩飛鳥
挾子巢棲
我獨孤煢
懷此百離
憂心孔疚
莫我能知
人亦有言
憂令人老
嗟我白髮
生一何早
長吟永歎
懷我聖考
曰仁者壽
胡不是保
【ひとこと】
この一家はみんなして詩を詠む。曹操も曹丕も怒り方が酷く激しいイメージがあるのだが、悲しみもまた深く激しいのではないだろうか。曹丕は特に悲哀を歌うのが得意なのだと聞いた。曹丕の詩はどうにも真面目で理屈っぽくて羽目の外し方が下手なひとを彷彿とさせる。普通親の死は詩にしないという価値観の中で育ち、それをおして父の死を詠んだ人は、それも当時から有名だったろう父の詩と同じ〈短歌行〉の題で詠んだ人は、その父の死後すぐにその愛妾を囲った人は、そして愛妾を囲ったことを指して実母に罵倒されて死んだ人は、何を考えていたんだろう。
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