第6話 詩経〈桃夭〉

詩経〈桃夭〉


桃之夭夭

灼灼其華

之子于歸

宜其室家


桃之夭夭

有蕡其實

之子于歸

宜其家室


桃之夭夭

其葉蓁蓁

之子于歸

宜其家人


 めでためでたのお嫁さま  

  桃のめでたや

  きれいな花よ

  このお嫁にいったなら

  若旦那さま よろこぶぞ


  桃のめでたや

  たわわな果実

  この娘お嫁にいったなら

  大旦那さま よろこぶぞ


  桃のめでたや

  わかばが繁る

  この娘お嫁にいったなら

  家のみんながよろこぶぞ



 教科書にも載る有名歌。詩経からひとつ訳すならこれかなという感覚でチョイス。詩経は読まなくてはならない本のひとつ。なぜなら「Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀」のドラマCD(月下独酌とは別らしい?)の脚本家・分解刑先生が詩経三〇五篇と呟いていたから! ファンってすごい! とはいえ通読しようとして挫折し、典故に詩経とあるたび確認してもイマイチ面白さが分からない……と思っていた時に見つけたのが植田先生の訳詩。


「桃よめでたや、花はれやかに/この子嫁げば、婿むこさに似合にあう」[1]

 

 なるほど! 「あんたがたどこさ」で「赤い鳥小鳥」みたいな感じ! と言ったら首を捻られてしまうかも知れない。でもおかげでピンと来た! 植田先生の訳をみて、先に訳していたものを作り変えようと色々して、結局は今のカタチに。婚礼の祝いの歌と聞いて毒気を含んで訳す人間もいないものだと思いつつ、嫁の家目線の無邪気な売り文句に。

 そんな折、先生の講義が聴けると聞いて飛び込んだ二〇二二年十一月町田。行行重行行の講義、とてもとても面白かったです。捻くれた訳ですが先生なら笑ってくださると信じて。


引用資料:

[1]植田 渥雄「『詩経』の話 : 「桃夭」「碩鼠」「黍離」を中心に」『日中言語文化 : 桜美林大学紀要』二〇〇七年三月五巻、三─二一頁

https://obirin.repo.nii.ac.jp/index.php?action=repository_action_common_download&item_id=793&item_no=1&attribute_id=21&file_no=1&page_id=13&block_id=38


参考資料:

[2]村山吉廣『詩経の鑑賞』二玄社、二〇〇五年

最近見つけて即買いした。詩経の七五訳を複数収録。索引が最高。


[3]海音寺潮五郎『詩経』 中央公論社、一九九〇年

詩経全305篇を収める文庫。白文、読み下し文、訳がついているのでこの一冊読破できれば目標達成する。絶版である点と索引だけは玉に瑕だが圧倒的に買い。

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