第4話 張可久〈人月圓・山中書事〉
張可久〈人月圓・山中書事〉
興亡千古繁華夢
詩眼倦天涯
孔林喬木
呉宮蔓草
楚廟寒鴉
数間茅舎
蔵書万巻
投老村家
山中何事
松花醪酒
春水煎茶
山中の書き付け
千の興亡栄華の夢に
飽いた詩人は天の
孔子の墓に
楚国の宗廟 寒がらす
五万の書物
山に暮らして何をする
※注意※これは日本語で読んで面白いことを目指した創作です。意訳というよりアクロバット大歓迎の大ボラ書いであるので、これを読めという日本語資料があったら是非ください。日本語資料欲しさに書いてます!よろしくお願いします。
※自分用のメモ
◯墓に 墓所にと迷った。涯のハテの余韻でハカ。墓所にすると宮殿や宗廟と見た目が揃うが、迷った時は耳に従う。
◯呉宮 春秋時代の呉の宮殿。厳密には句呉ではない可能性があるが、韻の都合と孫呉と区別するために句呉とした。
◯楚廟 戦国時代の楚の宗廟。「楚辭: 九章: 涉江- 燕雀烏鵲,巢堂壇兮。」と関係あるかは不明だが定型句のような……?
◯ 喬木 高木のことで少なくとも3メートル以上。後述する。
張可久は元の人。[1]Wikipediaによると約1270年-約1348年らしいが、日本語資料はとにかく手に入らない!
でも「Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀」の主人公・凜雪鴉に引用されていた詩なのでなんとかして読みたい!(←原動力のすべて!!!)
見つけたブログ[2]によると「山中の事を書きつける・「人も月も円い」の歌の節で」という意味のタイトルらしく、読解も多くをここに頼った。(←ありがとうございます!!!!)
詩中の側柏とはコノテガシワ、つまりヒノキの一種でコニファーのこと。陶淵明の作に〈諸人共遊周家墓柏下〉があり、この解説の中で常緑である点が好まれて松と並んでよく墓地に植えられるとあった。コノテガシワは十五メートル以上になるそうなので、喬木にあたる。そのためここでは側柏とした。もちろん松と理解しても構わない筈であるが、松花と被るので避けた。
コノテガシワは街路樹としてもよく見る木だが、街路樹のそれは常緑というイメージには遠く、冬の間は枯れたような茶色に変化する。ただし一口にコノテガシワと言ってもさらに細かく品種が分かれているらしいので、大陸で一般的なのは冬でも緑の品種なのかもしれないと思っている。(2022/12/13追記コノテガシワと理解するよりヒノキの一種と捉えるのがいいかもしれない[3])
[1]https://zh.m.wikipedia.org/zh-hk/张可久
[2]肝冷斎『漢文辺境・東洋古典ポストモダン』「平成27年12月9日(水)」
http://www.mugyu.biz-web.jp/nikki.27.12.09.htm 二〇二二年十二月十一日閲覧
[3]植田渥雄「『白頭翁』の話」『桜美林大学紀要 日中言語文化 第七集』二〇〇九年三月
これでも松はアカマツ、柏はコノテガシワだが、所謂コノテガシワというよりはヒノキの一種として理解する様子。
【調べたけど見つからなかったリスト】
(1)倉石 武四郎『中国古典文学大系 第20巻 宋代詞集』平凡社、一九七〇年
なお彼の他の詩ならいくつか載っていました。張可久は他にも月人円(のリズムの詩)を作っているらしいです。
(2)国会図書館(東京)に行ってまず引くべき宋詩(?)の国内文献リスト
(本の名前メモし忘れました……ごめんなさい。追って修正します)
「張可久」の名前すらなかったんですがどうしたら……
(3)文淵閣四庫全書デジタル版
「松花醸酒」もしくは「松華醸酒」が他の詩中にも見られる字句だと言うことは分かりました。張可久とどっちが古いのかはよく分からず。詩中の語でも人名でも引っかからない時の対処法も不明。
(3-1)「松花醸酒」……集部/別集類/明洪武至崇禎/草閣詩集/巻二(明の頃の本らしい)
(3-2)「松華醸酒」……集部/別集類/金至元/金臺集/巻二(元の頃の本らしい)
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