第16話 A{0,1}~{0,2} 成功と実験

 その後は毎日、6時間目の始まりのチャイムと共にタイムリープを試みたが、ダメだった。

 それ以外はいたって普通に過ごしていった。

 変わったことは無かった。

 水曜日にエグゼキューショナーの討伐をしたことくらいかな。

 まぁ、ひと月に1、2回は討伐してきたからよくあることといえばよくあることだ。

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――TIMES_A{0,1}――

 2024年9月27日(金)


 5時間目が終わり、休み時間を経て、6時間目が始まる。

 今日も、今週毎日やってきたように、タイムリープを試みるができなかった。


 やっぱり1週間じゃないとだめなのか。

 明日に期待する。


 

――TIMES_A{0,1}――

 2024年9月28日(土)


 午前中はエグゼキューショナーの探索を行っていた。

 遭遇しなかった。

 誰も被害者がいなかったということだ。

 良いことだ。


 午後になりお昼を済ませてゆっくりしていたところ、再度セットしておいたアラームが14:10に鳴る。

 その後14:20までスマホの時計とにらめっこしてしまう。


 14:20にセットしておいたアラームが再び鳴る。

 タイムリープを試みる。



――TIMES_A{0,2}――

 2024年9月21日(土)14:20


 自分の意識の一部が粒になって沈んでいく気がする。

 それは自分であり、自分から切り離された何か。


 中心であり、末端である。そんな感覚を同時に味わう。


 末端は沈んでいく。

 が、ある程度まで沈んだ後、浮かび上がって行く。


 そして一つに統合していく。


 気が付くと額に手の感触を感じた……。


――TIMES_A{0,2}――

 2024年9月21日(土)14:21


「ウサ先輩。大丈夫ですの? 気を失ってまして? それとも、眠ってただけですの? どちらにせよ突然だったのでビックリしましたですの」


「だっ、だいじょうぶよ。手を当てるのを続けて欲しいのですけど……。13分くらいほど……」


「13分??」と、明渡アケドさんが不思議がるように言う。


「あっ、えっと、それくらいやって欲しいといいますか……」


「全然かまいませんですの」


 明渡アケドさんは私の額に手を 当て続けていてくれる。


 明渡アケドさんは私の顔を覗き込んでくる。


 一週間前のことを思い出す。

 この体勢のときは、ほとんど会話をしなかったことを。


 私から話掛けないと、会話がやはり途切れる。


 自然と、いろいろと考えごとをしてしまう。


 タイムリープに成功した。そして、記憶が失われなかった……。

 正確に言うと、失われたが回復した。

 消え去って行く感覚、沈み込んでいく感覚を味わったあと、復活した。


 計画通りといえば、その通りだが、明渡アケドさんには感謝だ。

 きっと、ゲームとかで回復魔法を掛けてもらった感じというのはこのような感じなのかもしれない。


 私のひたいあたっている明渡アケドさんの手から、私をいつくしむような感情を感じた。

 気分が良い。


 その手の感覚を味わっていると、かれこれ15分ほど経過していた。

 あまり長い時間やっていても明渡アケドさんの体勢的に辛いのではと思い、この辺で切り上げる。


 その後、明渡アケドさんとおしゃべりをする。


「そういえば、明渡アケドさんさんって魔法少女のアニメが好きなんですよね?」


「あっ、あれ、わたくし、その話をウサ先輩にしましたっけですの? あれ、言ったのですわね。 そうなのですわ」


明渡アケドさんってイメージ的に黄色って感じがしますよね」



「えっ……、そう見えますの? わたくしってあざといですかしら? といいますか、ウサ先輩ってそういうこと詳しかったですの?」


「えっと、少しは見るかしらね」

 失敗した。自分で言うのはいいけど、人に言われるのは嫌な事ってあるものね……。

 場の空気が悪くならないように、明渡アケドさんが話を変えてくれて助かったけど。


「少しは見ますかしらねぇ」


「どの魔法少女ものが好きなのですの?」


「あ、いえ、えっと、特には……」

 うーん、何があったのか思い出せない。

 確か、先週……いや前回もどれが好きか聞かれたときに困った記憶がある。

 7、8年前までは見てたけど、そんなに覚えて無いのよねぇ。

 2年前ならもう少し覚えてたけど、この2年間って忙しかったから……。


 こういうことって、明渡アケドさんの能力を借りても思い出せないのね。

 どうなってるのでしょう……。


「そうなのですの……。あ、そうだウサ先輩、ケーキ食べましょう」


少しがっかりした、明渡アケドさんだけど、場の空気が悪くならないように、さらに話を変えてくれたようだ。

 明渡アケドさんに気を使わせているかなぁ。


「あ、ケーキあるの?」


「えっ、何を言ってるんですの? さっき買ったではありませんの」


「あっ、そうだったわ。さっき……コンビニで買ったのだったわね」


 そうか、コンビニ行ってケーキを買って帰って来て今に至るのか……。

 一週間前のことを意外と忘れている……。

 タイムリープのことを忘れなかった弊害だろうか……。


 それとも、気になって無いから普通に忘れただけなのだろうか……。


 その後、二人でケーキを食べながらおしゃべりをして、明渡アケドさんはワクチンの接種があると言って帰って行った。

 午後の3時半過ぎに帰って行った。

 だいたい前回と同じ時間に帰った。

 2、3分の違いは、あるかもだけど。



 明渡アケドさんが帰ったあと、前回のこの時間――土曜日にはエグゼキューショナーを探索してなかったことを思い出す。

 前回は考え事をして過ごしてしまったのだ。


 もしかしたら、前回のこの土曜日に、いつもの習慣のように探索をしていたらエグゼキューショナーが見つかっていたかもしれない。


 謎の心配が発生する……。


 まぁ、でも前回の日曜日となるべくかぶらないところを探索しよう。


 今現在から見ると前回の日曜日は明日になるのね。

 なので、明日行った場所には今日は行かないほうがエグゼキューショナーが見つかる可能性が高くなりそうね。


 結局、その日は探索したがエグゼキューショナーは発見できなかった。

 平和で良かった。




――TIMES_A{0,2}――

 2024年9月22日(日)



 次の日は、前回の日曜と同様にエグゼキューショナーの探索をしようと思ったのだけど、試したいことを思いついたので試すことにした。


 なので人目つかない広い公園に来ている。

 23区内ではなくまでやってきた。

 寮や学校の最寄り駅から電車で6駅移動したところにある公園だ。


 何を試したいかというと、新しいスキルを取得してみることをだ。


 そして取得したスキルがタイムリープした時にどうなるかの実験だ。


 何故こんな実験をするかというと、水曜日、9月の24日にエグゼキューショナーを討伐して獲得したスキルポイントがタイムリープしたら無くなっていたからだ。


 当然といえば当然なのか??


 私は魔法少女の関連してるシステムはタイムリープの影響を受けないと勝手に思ってたけど、そうではなかったのだ。


 なので、逆にスキルポイントを使ってスキルを取り、減った分はどうなるのかを知っておきたいのだ。


 もしスキルを取って減った分はそのままリセットされないならされないで、それを知れるのでそれも良しだし。

 取ったスキル消えて、ポイントだけ減るとか無いよね??


 いずれ、取りたいスキルがあるので、今までせっせと貯めてきたポイントはあまり減らしたくないと考えてる。

 なので、必要最低限だけ実験にポイントを使うことにしよう。


 前から意味はないけど、取ってみようと思っていたスキルがある。


 召喚系で、設置スキル系のスキルだ。

 1ポイントの消費で取れる『線路』だ。


 現在244ポイントあるから、さすがに1ポイントは、誤差のうちだろう。


 説明を読むと、列車砲を召喚して、予め設置した線路に乗せセットで使う。

 そのセットで使うスキルのうち、線路の設置のスキルが、1ポイントで習得できる。


 ようは、一番低いポイントで取得できるスキルが線路の設置なので、このスキルを取ることにする。


 《 スキルポイントを1を消費して、『線路召喚』を取得できます。

 現在のスキルポイント 244 Y/N 》

 イエスを選び、線路を取得する。


 試しに使ってみるか。

 マジックポイントMPとサモンポイントSumPサムピーを使っての召喚になる。


 公園内の人気のないところを探し試してみる。

 変身をする。


「線路召喚!」 目の前に線路が召喚される。

 無生物の召喚、しかも建造物に近い地形に当たるものをだ。

 線路召喚という文言が頭に浮かんだのでその通りに発声したけど、ちょっとおかしい気がする。


 まぁでも、気にしないでおこう。

 私の存在、魔法少女自体が矛盾を抱え込んでるかもしれない。


 このスキルの詳細だけど、マジックポイントMPとサモンポイントSumPサムピーを 各々1ポイント消費して線路が召喚される。

 およそ10メートルほど。


 現在のMP:39/40


 消費MP1なら、もう一度試すか。


 もう一度、先ほど召喚した線路に繋げるように試す。

「線路召喚!」

 成功した。

 新しく召喚した線路は先ほどより長く召喚できた気がする。


 さらにもう一度、今度は繋げずに試す。


 1回で20メートルほどの線路が召喚できた。

 でも、消費は各々1だ。


 やはりスキルというのは使えば使うほど効果が高まる。


 どういうメカニズムなのだろうか。

 慣れるのだろうか。

 熟練度が溜まるのだろうか。

 細かい仕様はわからないけど……。


 そして、このスキルはその影響がより顕著に出ている。

 成長を実感し易いようだ。


 実験の結果に満足して帰ろうかと思ったけど、あれ、そういえば、この線路、勝手に消えるんだろうか……。


 こんなものを公園内に残してはいけない。

 それは、さすがに大義が無いので、私の正義にも反する。


 そういえば、スキルの中にアンサモンなる、召喚したものを消すスキルが、線路召喚のスキルを取ったら、取れるようになったのだ。


 これも獲得のためのスキルポイントの消費が1だ。


 《 スキルポイントを1を消費して、『アンサモン』を取得できます。

 現在のスキルポイント 243 Y/N 》

 イエスを選び、アンサモンを取得する。


 アンサモンのスキルを取得して、線路に対して使ってみる。

 線路は消滅していった。


 合計でスキルポイントの消費は2だ。

 まだ242ポイントあるから、誤差のうちだろう。


 取りたいスキルの『ファイナルファイアー』のスキルが300ポイントだから、もう少し頑張って貯めればなんだよね。


 取得したスキルが消えるのか、そのままなのかは、あと6日後には分かるだろう。

 次の土曜日が来たら、一週間前に戻って、そこで確認する予定だ。


 さて、試したいことも終えたし、今日もエグゼキューショナーの探索の探索をするとしよう……。


 せっかく6駅離れた大きな公園にまで来たので、その辺りの探索に励んだ。


 エグゼキューショナーは発見されなかった。

 良いことなのだろう。


 そして、今日はタイムリープで1日前に戻ることを試みなかった。

 というか出来なかった。

 何故かというと毎日なるようにセットしておいたアラームが鳴らなかったのだ。


 何故アラームが鳴らなかったかというと、アラームの設定をしていなかった。


 何を言ってるのか分からないと思うが、私も分からない。


 なので、アラームが毎日14:10と14:20になるようにセットしておく。

 明日はこれで間違いなくタイムリープを試みることができる。

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