第15話 A{0,1} 筋書通り

――TIMES_A{0,1}――

 2024年9月21日(土)13:30


 学校の近くのコンビニで明渡アケドさんと会う。

 待ち合わせ場所をこのコンビニにしていた。


 明渡アケドさんは学校の制服を着ていた。


 学校に部活の用事でちょっと寄ったとのこと。

 明渡アケドさんは動画を撮る部活に入っている。


 部室にも、遊びに行ったことがある……。


 コンビニでケーキとペットボトルの紅茶を二人分買う。


 もちろん私がお金を出す。

 今日は、昨日の感謝を伝える日なのだから。


 買い物を済ませ、自分の部屋へと向かう。


「へぇ、学校の寮ってこうなってるんですのね。普通のアパートみたいですのね」


「建物自体は普通のアパートで、学生寮と命名してるだけなのではって思ってるのよ。

 去年からの始まった本格的なオンライン授業向けに、寮暮らしの方が都合のよい生徒向けのって理由で、始められたシステムっぽいの。

 だから、この学生寮のシステムは出来上がったばかりだから、間に合わせの建物なんじゃないかなぁと思うのよね。

 寮を使ってる生徒は学年で30名もいないと聞いてるわ」


「そうなんですのね」


 自分の部屋に明渡アケドさんを連れて入る。


 洗面所で二人とも手を洗う。

 手を洗う習慣は、2020年以降、とても強い概念となったと思う。


 明渡アケドさんには、部屋に一つしかない、勉強机用の椅子に座ることを勧める。

 勉強机と椅子は部屋に入って右側の奥にある。

 買って来たケーキを冷蔵庫に入れて、自分は左側にあるベッドに座る。


 部屋についてからも昨日のお礼を明渡アケドさんに言う。


 その後、雑談をする。

 明渡アケドさんが私に前々から聞きたかったらしい魔法少女の活動のことについて、色々と質問をされる。


 なんでも、明渡アケドさんのほうは、エグゼキューショナーをほとんど退治したことが無いとのこと。

 エグゼキューショナーと戦う時の戦闘の経緯などを説明した。


 その話の流れで、前回の戦いでどうやら呪いを受けてしまったことを明渡アケドさんに話す。

 この話は作り話であり、明渡アケドさんと触れ合う時間を作る為の作戦である。


「その、明渡アケドさんの手って浄化作用があるような感じがしていて」


「そっ、そうなんですの??」


明渡アケドさんってテレパス系の能力が強い、以前に言ってましたわよね?」


「はい。そうなのですの。でも、これといって使い道はありませんの。

 スマホを使った方が便利な時代ですから、もっと昔なら役に立った能力だったと思いますけど。

 私の他の魔法少女スキルも大したことありませんですの……」


「そんなことないわ。

 現に私は救われましたわ。回復しましたわ。

 恐らくなのですが、以前退治したエグゼキューショナーに精神的な攻撃を受けて、そのダメージが残っていたのだと。

 それが、昨日、明渡アケドさんが保健室で、私の額に手を当ててくれたから、私のダメージは軽くなったわ」


 そのようなダメージは本当は存在し無い。

 思いついた作り話の中で最も良いと思ったモノを採用した。


「えっ、昨日って、あの時意識あったのですの?

 えっと、えっと、と、と、もうしますか、症状が無くなったのでは無く、軽くなったのですの?

 軽くなったということは……まだ、ダメージ残ってますの?」


「えぇ、実はそうなのよ……」


 私は、困ってる顔を演じる。

 上手くできてるかなぁ……。


「あの、もしかしまして、また額に手を当てたら、もっと治るんですの?」


「そうなるとは、思うのだけど。でも、その……、悪いから……」


「そんなこと無いですの。そのようなことでしたら、いくらでもご協力しますですの」


 そう言いながら、腕を伸ばす明渡アケドさん。

 さらに、何かを思い至ったかのように、手を引っ込めて提案する。


「あっ、でも、こんな姿勢じゃ辛いですわね。

 ウサ先輩、横になってくださいまし」


 明渡アケドさんは私に、ベッドの横になるように促す。


「なんか、悪いわね……」


 そう言いながら、私は申し訳なさそうな感じでベッドに横になる。


「気にしないでくださいですの。ウサ先輩。持ちつ持たれつですの」


 私はベッドに仰向けになる。

 私の左側に明渡アケドがいる。

 明渡アケドさんはベッドに横になった私の額に右手を当ててくれた。


 計画通り………………。


――TIMES_A{0,1}――

 2024年9月21日(土)14:20


 明渡アケドさんが私のおでこに手を当ててくれている。

 その時間は10分ほど続いた。

 続けてもらった。


 その後ケーキを食べながら色々話をした。

 明渡アケド さんは魔法少女のアニメが好きなんだそうだ。


 私も少しは魔法少女のアニメを見ていたが、明渡アケド さんとは知識の差が比べ物にならなかった。

 そして、明渡アケド さんはそれが|高《こうじて魔法少女になりたかったと語っていた。


 そして念願が叶ったようだ。


 でも、その後の話を聞く限りは魔法少女としてバリバリ頑張る気はあまりないようで、その矛盾っぷりが、ある意味面白くもある。 


 良く分からないが、明渡アケド さんは自身のことをあざとい怖がり系の黄色なのではないかと言っていた。


 その後ケーキを食べ終わり、ゆっくり話した後、明渡アケド さんは今日はワクチンの接種の予定があると言って帰っていった。

 日本では女性だけが接種するワクチンだ。


 ワクチンを打つのをキャンセルすると次回の予約の取り直しが大変らしい。


 

 色々と明渡アケドさんと話した。

 久しぶりに、他人ひととゆっくり会話をした気がする。


 明渡アケド さんと私は比較的立場が近い。

 なので気楽に話が出来た。


 魔法少女になってから1年半、未だに分からないこともある。

 サムは今回の明渡アケド さんとの接触で文句を言ってくるだろうか。

 私が明渡アケド さんにすら秘密にしなければならないこと。

 サムが考えてるそれがなんなのか。

 私には未だに把握できていない。


 どっちみち、明渡アケド さんのところはうちの部門と、同盟部門って言ってたから問題は無いはずなんだけど。


 色々、心配事はあるが、やらなきゃいけないことが目白押しだ。


 部屋にセットしておいた隠しカメラで撮っていた動画をチェックする。


 明渡アケドさんが私の額に手を当ててくれた時間は14:20から14:33だ。

 13分間か。


 明日から毎日、今日の時間に戻るようにすれば良いはず。


 そしてこの日も色々と考え事をしながら過ごした。

 明日からの日常を。


 


 

――TIMES_A{0,1}――

 2024年9月22日(日)


 何かしようかとも思ったが、色々考えがまとまらずだらだらと過ごしてしまった。


 だらだらと過ごしていてもしょうがないし、昨日の土曜日に探索をしなかったから、今日はしっかりとエグゼキューショナーの探索をしよう。


 私の探索の仕方は魔法少女アイテム——モノクルを使い、探索する。

 モノクルを使い探索するとMPが減少する。


 距離に応じてもMPの消費量が変わる。

 全方位ではなく方角を絞るとMPの消費量が変わる。軽減する。


 常時発動と、ソナー的に一瞬で感知するモードでもまた消費量が変わる。


 それらを状況に応じて使い分けて探して行く。

 地面より上の全方位探知(上空を含む)を使いながら、広い範囲を歩き回ったりもする。


 日曜日の今日は、結局いつもと同じように、週末に行うエグゼキューショナー探索をして過ごすことにした。

 昼過ぎになり、残暑の厳しさを感じる中、探索を行っていた。

 14:10になりセットしておいたアラームが鳴る。


 今日から昨日にに戻ることを試みる。

 14:20を過ぎたらタイムリープをする。


 が、ダメだった。

 やはり1年半前に成功した「1週間」という区切りの良い期間でないとダメなのかな。と思う。


 その後、エグゼキューショナーの探索を続けた。


――TIMES_A{0,1}――

 2024年9月23日(月)


 5時間目が、ちょうど14:10に終わる。

 ポケットの中のスマホのアラームが鳴る。

 回りから注目を受けてしまう……。


 そして6時間目が14:20に始まる。

 偶然とはいえ、ちょうどよい。


 6時間目の始まりのチャイムと共にタイムリープを試みる。

 が、ダメだった。

 そのまま授業を受ける。


 アラームは切っておくことにした……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る