第7話 A{4,156} 改变主意

 予め異相イソウさんがグループチャットで繋げることを説明してくれたから、話が早い。


『この前はごめんね。いきなり逃げてしまって。ちょっと知られたく無いことが合って……』


『シナちゃんのせいじゃないですの。ワタクシの能力のせいで……』


『チャットでも、お嬢様言葉なんだ。あはは。ちょっと聞きたいことがあるんだけどね』


 つっちゃんの能力のことで、つっちゃんを謝らせることは、なんか違うと思い、そこには注目せず、話を進めるね。


 それにしても、返信もすぐ来るし、こんなことならもっと早くSNSを繋いで連絡すれば良かった……。


『そうよ、チャットでもいつと同じ口調ですの。長年おこなってきた仕草ですから、いきなりは変えられませんの。

 あら、なんですの?

 聞きたいこと?

 なんでも聞いてもらっても大丈夫ですの』


 なんか、つっちゃんは、ほんとにいい人なんだね。


 こんな子と小さい頃ずっと一緒にいられたなんて幸せだったんだね。

 最近までつっちゃんが、つっちゃんだって気づいて無かったけどね。


 むしろ、それもつっちゃんの能力のおかげで知れたのか……。


『えっと、つっちゃんって、宇佐美さんとは親しかったりする?』


『あらシナちゃん。タイムリーな質問ですのね。

 とても親しいのですのよ。

 何かございまして??』


 えっ、親しいのか……。

 あ、うーん情報を聞き出さないと……ね……。


『そうなんだね。

 えっと、宇佐美さんの好きなもの何かなって思って』


 うーん、なんか、思いつかなかったから、脈絡のない質問になってしまった。

 さりげなく、ちょっとずつ情報を引き出していくって難しい。


『今、実はウサ先輩と一緒にいまして、聞いてみたところ、駅弁が好きだそうですの』


 えっ、一緒にいるの?

 どういうこと……。

 というか、そんなに親しい間柄ってこと?


 一緒にいるってことは、おそらく宇佐美の家にいるってことで……。

 そんなに仲がいいのか……。


 というか、もしかしたら、宇佐美の仲間?

 あのつっちゃんが?


 いや、人の性格と立場は関係ない。

 心優しい人が、国からの招集で戦争に行くことだってある……。


 これ以上聞き出すのは逆に危ないかもしれない……。


『ありがとう つっちゃん。 ワタシが質問したことは、宇佐美さんには内緒にしといてね』


『はいですの。内緒にしておきますですの』


 ごめんね、つっちゃん……。


 つっちゃんをまた、突き放さなくてはいけなくなった……。


 それもあり、ワタシは心のダメージを意外な角度から負ってしまった。


 別につっちゃんがワタシのものというわけでは無い。


 むしろ単純に比べても、つっちゃんは、ワタシより異相イソウさんとの仲の方が良かったと思える。


 私とつっちゃんは小さい頃の幼馴染が、つっちゃんと異相イソウさんはその後の現在進行形で続いている幼馴染だ……。


 私は彼女とそもそも一番仲が良かった訳じゃない、いや、そんなことはどうでもいい……。


 ただ、つっちゃんと仲の良い相手が、あの、ワタシを殺しに来る宇佐美だということが…………。


 ダメだ。

 また、ストレスで何も考えられなくなる……。


 思考停止しては、また……殺されるのを繰り返す……だけ……


 ??


 殺されるのを繰り返す??


 そう、ワタシは死に戻りしている。

 死んでも死なない。


 これって、よく考えたら無敵なのでは??

 ワタシがとっても怖がっている死を克服出来れば、とても無敵な状態なのでは??


 考え方が違っていた。

 そう、ワタシは無敵なの。


 ならば、あの化け物みたいな宇佐美が相手でも鍛えていけば、いつかかなうのでは??


 気づいたとたんに、ワタシの心の中で何かが、少し吹っ切れた。

 ・

 ・

 ・

 それからの時間は、学校を休み、4日後の土曜日の決戦まで、修行を行った。


 父は出張中で、母は入院中だ。

 学校を休むことには問題はない。


 それに死んだら無かったことになるのだろうし。


 初撃の奇襲をなんとかしてかわさないと戦いにならない。

 そのことも意識して修行を行った。



 そして、決戦の日が訪れる。


――TIMES_A{4,156}――

 2024年9月28日(土)12:00


 もうすぐ、宇佐美が現れる。

 ワタシは森の中に隠れた。


 木を利用して、奇襲方向を限定する為だ。

 また、その後、開けた場所で戦うとなると、ワタシの暗器を使う戦いでは不利になる可能性がある。


 ほどなくして、やつは訪れた。


 初撃と奇襲、全身全霊の意識を集中して、防ぐ。


「いや、虫……。また、踏んだ……。感覚が鋭敏だと分かってしまうから、いやね」


 何を言ってるのか分からないが、戦いが始まった。


 おそらく宇佐美はワタシを麻痺させてその後、一撃必殺の、あの、ワタシに特別効果のある武器を使う。


 最初の麻痺攻撃を受けないようにしないと。


 次の瞬間、宇佐美は消えた。


 そしてワタシはまた死んだ………………。


 麻痺攻撃が来なかったのか。

 麻痺攻撃が来てからあの木剣を使ったのか。


 行動が早すぎて分からなかった。


 奇襲も防げたわけでは無いようだ……。


 そもそも奇襲をしなかったのでは無いだろうか……。

 今までも奇襲をしてなかったのでは無いだろうか……。

 ただ、速かっただけで……。


 分かったのは宇佐美が動いたと思った瞬間、もう木剣を当てられたワタシの意識が奪われということ。


 駄目だ、やはり彼我の差が大きすぎる……。


 どんどん自分のが小さくなり、まもなく意識を失った。

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