第5話 A{3,156} 独りぼっちは、寂しいもんなのね

――TIMES_A{3,156}――

 2024年9月NN日


 学校……。

 時計を、スマホを出して時計を見る。


 9月の25日水曜日、14:28


 水曜日の6時間目の授業中。


「東野さん、授業中にスマホを出して何をしてるの? 家族に何かあったのかしら?」


 そうか、授業中だ。今。

 慌ててた為、スマホを堂々と見ていて、先生に注意されてしまった。


「申し訳ありません」


 先生と周りに謝り、その場はおさまり、授業が続く。

 日頃から真面目な生徒として過ごしてるから、別に注目されない。


 そんなことより、予知夢の考察だ。

 というか、これは予知夢では無いね。


 明らかにおかしいね。

 ワタシは死んだと思ったら、次の瞬間には時間が戻っていた。


 これは、あれだ。

 死に戻りというやつだね。


 ワタシの能力の根源は死への恐怖から来ているね。


 指导ガイド役であるどんちゃんからの説明で、そう言われていたね。

 だから、ゾンビっぽいスキルがあったんだよね。


 そして、おそらくは、その能力の最終形態、死に戻り……。

 これは魔法少女の能力なんだろうか。


 異相イソウさんのむらの人たちが、していた話によれば、異能力の可能性もあるね。


 まぁ、どちらにせよワタシの能力だね。


 ふむぅ、死に戻りだったのか……。

 やはり殺されていたんだ。


 このまま過ごしていたら、また殺される。


 というか、死ぬ前は、恐怖で何故か山に逃げていたのだけど、何故か場所が分かってしまい殺された。


 それにしても、山に逃げるって、ワタシながら意味分からないね。

 というか、今も少し、頭がぼーっとするけど、今はだいぶマシになっている。

 殺される前は、頭がずっとぼーっとしてた。

 脳みそが月餅げっぺいだったね。


 何か、体調が悪かったのかね。

 死んだんだもん、体調悪くて当然かね。


 それにしても、殺しに来るあいつ、やつは、相手の居場所を探すような魔法少女のスキルでもあるのだろうかね。


 迷子探しとか、ペット探しとかの強化版みたいなものが。

 だとしたら逃げ場がない……。


 どうしよう……。

 誰かに相談……。

 いや、誰に……。


 相談する人…………。


 あの4人は下手したら相手側だし。

 少なくても宇佐美側だと聞いている。


 明渡あけどさん……。つっちゃん……。


 せめて、顾问顧問役(こもんやく) のどんちゃんに相談できれば。


 どうしようも無いな……。


 涙が出てきた。

 ワタシはひとりぼっち……。


 どうしようか。

 国外にでも逃げるか。


 そこでひっそりと暮らせば見つからないのでは、いや、相手のスキルがどんなものか分からないし……。


 ならば宇佐美を倒すしか……。


 さらに、最悪の場合、あの4人とも戦わなければならないのか……。


 でも生き残るためには、死なないためには。


 とりあえず、宇佐美がどこにいるのか探らないと。


 周りにを張り巡らせる。

 今日も学校にいないようだ。

 やつのを感じられない。


 もっと、さぐらなきゃ……。

 を探るのではなく、人物的な情報も探らないとね。


 宇佐美と親しい人物って誰だろう。

 宇佐美の行動を知ってそうな人物……。


 あの4人は学年も違うし、中等部だし、日常の行動は別々のはずだ。


 まずは宇佐美の教室に行ってクラスメイトを探ろう。


 放課後、1-Aクラスに行く。


 残っている宇佐美のクラスメイトに聞いてみるね。

 宇佐美は誰と仲が良いのか、いつも誰と一緒に行動しているのかをね。


 教室に残っている宇佐美のクラスメイトに聞く限り、いつも、やつは一人行動が多く、特に一緒に行動をしているクラスメイトはいないようだ。


 さらに踏み込んで、住んでるところを聞いてみたところ、寮暮らしだとのこと。


 学校のそばの寮に住めるのは、今年になって作られたシステムだ。

 寮に住んでたのか。


 学校から近いな。

 該当箇所は3箇所ほど。


 全ての寮を回れば行き着く。


 一年下の中等部の生徒と一緒にいることを目撃した人もいた。

 その子たちと仲が良いのではと。


 おそらく、あの4人だろう。


 やはり、あの4人から聞き出すか……。


 明渡あけどさん……つっちゃんに今は会いたく無いけど、しのごの言ってられなくなってしまった。

 命が掛かっている。


 宇佐美のクラスメイトから、聞けることは聞けたので、あの4人と接触を図ろう。


 気を探ってみると、教室に由解ユゲさんと、似吹イブキさんが残っているのが分かった。


 あの二人はさほど強く無い、というか4人とも強く無いはず。


 正直戦いたく無いが、最悪、今戦闘になって2対1だとしても問題ないはずだ。

 情報を仕入れに行こう。


 中等部の3年生のクラスに入り二人に聞く。

 ここ来るの久々かも。


「いや、宇佐美先輩のことはよく知らないです」

 由解ユゲさんが丁寧に答えてくれる。

 彼女は頭がいい、話も上手いし、知識も豊富だ。


 二人に警戒した様子は一切なく、普通に話ができた。


「東野先輩ほんとお久しぶりですね。進めてくれた本、ボク両方とも読んだよ。

 金瓶梅きんぺいばいは水滸伝より面白いくらいだし、夏姫の春秋は、呂氏の春秋より面白かったし。

 どちらも歴史観あふれて面白かったです」


 いやいや、それ人前で言う話じゃないね。


「まぁ、似吹イブキ君、また今度、ゆっくり話をしようね。あはは」


 慣れない、愛想笑いをして何とかごまかして、その場を後にする。

 というか、由解ユゲさんのあの顔、本の内容を知ってるんじゃ……。


 っと、そのことを気にしてる場合じゃないね。


 うーん、あの二人は白だと思うね。

 これが演技だとしたら勝ち目が無いけど、恐らく本当に敵意が無い。


 ワタシに敵意は隠せない。

 敵意のを探る能力は、すごく自信があるね。


 情報そのものを知らされてないかもしれないし、そもそも宇佐美の単独行動の可能性もある。


 図書室にいる異相イソウさんにも話を聞いてみたが、ツタエちゃんなら知ってるかもとのこと。


 明渡あけどさんか…………。つっちゃんか……。


 明渡あけどさんに連絡を取るのを後回しにして、先に学校の寮のある場所を回ることにした。


 宇佐美はすぐに見つかった。


 ワタシが宇佐美の気を、的確に感じ取れる範囲に入った時……、やばさに気づいた……。

 なんだ、このバカでかい気は……。


 逃げるべきだ。

 近づいては不味い。


 これは仮に魔法少女だとしても人が持ってよい気の力では無い。

 純粋な力だけでも今までに見てきたどのエグゼキューショナーよりも強い。


 というか、変身状態では無い状態のとして伝わって来る。

 これで変身してないのか……。


 宇佐美は人間なのか……?

 以前と同一人物の気のように感じるが、本当は別人、エグゼキューショナーに乗っ取られた何か……。

 その可能性すらある……。


 どっちみち不味い、逃げないと……。

 あんな化け物に、ワタシは狙われ続けるのか……。


 逃げよう。

 海外に。


 貯金を全部はたいて、遠くへ逃げよう。

 パスポートがあって良かった。


 ワタシは次の日、木曜日に日本を去った。


 家族には何も伝えてない。

 伝えられなかった……。

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