第23話『出発と最後の故郷』

 さあ、集落に戻ろう。立ち上がった一行がまずすることは、コリンを変身させることだった。

 「人間の こどもに変身したい」と駄々こねるコリンに、「きのうと違う顔ぶれで怪しまれるだろう」と跳ね返したアントワーヌは、そそくさとコリンを ふたたびポニーに変身させた。

「12時間の我慢だよ、コリン」

 リクがコリンを励ます。が、「12時間もポニーのままなんだ」と、逆に凹ませてしまった。


 “宿泊所”を出た一行は、寄り道せず、まっすぐ集落に向かった。

アントワーヌに手綱を引かれるコリンの後ろで、「私、はじめての野宿だった! 」と目を輝かせるリクに、「私もだよ」とゾーイが頷き、「風邪を引いていない? 」と、過保護なレアが聞いていた。

 女性陣の賑やかさを聴きながら、どこか、寂しさを感じているコリンに、いままで黙って先頭を歩いていたアントワーヌが、声を掛けてきた。それは、コリンの おおきく敏感になった馬の耳でしか聞き取れないような、かすかな声だった。

「お前の故郷を見るのは、恐らくこれで最後だ」

 後ろを振り向かぬまま、アントワーヌは続ける。

「しっかり見ておけ」

「ありがとう」

 コリンは返事をすると、すこしの間、目を潤ませていた。

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