第3話 出会い 3

 開示資料を読み込み、たまにダフネの持ってきた資料のまとめの手伝いをする。マリッツはしばらくの間、そんな穏やかで変化のない日々を過ごしていた。

 そんな中、どこかの研究室が事故を起こして、室長である魔術師が大怪我をしたという話が耳に入ってきた。

 魔術の性質上、実験では予測しえない事故が起こることがある。だからこそ、人的資源等の被害を減らすために、何重にも事故への対策をした上で実験を行うので、あまり聞かない話にマリッツは珍しいと感じていた。

 ダフネもだが、マリッツにもぞんざいな部分があるので自分たちが実験を行う際には、殊更に気を付けなければいけないと話し、お互いに教訓を刻んでいつもの日々に戻っていった。



 それからまた、しばらく時間が経った頃、マリッツは施設内で顔を合わせる人間の一部から、警戒感を持たれていると感じることがあった。

 身に覚えの無いマリッツからすると、苛立ちや不安を感じるより戸惑いの方が先に立った。そんなぴりぴりした空気を時折感じながら、何の手立ても思いつかないまま過ごしていた。

 そんな中で魔術課程を学んでいた時の同期が心配そうな表情で声を掛けてきた。

「なんかおかしな噂流れているけど大丈夫か?」

「いや、今の話が初耳だけど」

「やっぱりな。知ってるにしてはえらくどっしり構えてると思ったわ」

 肩をすくめながら同期はそう言った。

「……それは良いから、噂ってのはどんな話なんだ?」

「この間、事故があったじゃないか。……そいつを仕組んだのがマリッツんとこの研究室長だっての」

「……は?」

 同期の声を落とした言葉にマリッツは間抜けた返事しか出来なかった。

「ほとんどの人間がそれを信じてる訳じゃないけど、ちょっと空気ぴりぴりしてるし、ウチの室長はいきなり出てきた話なんで、誰かが故意に流しているっぽいって話してる。ただのやっかみでないなら何か意図があるんじゃないかってさ」

「ええ……、そんな事して一体なんの利があるのさ」

「分からないけど、気を付けてな」

 同期はマリッツに打ち明けたことでいくらか気が済んだのか、すっきりした顔で去っていく。

 噂を流した相手の目的が分からないので参考になるかはいまいちのところだが、警戒している相手の視線がどんな意味か分かっただけでも収穫だとマリッツは思い直した。

(しかし、噂を流した人間の目的は何なんだろう)

 ぴりぴりとした視線の意味は納得したのだが、どうしてその噂を流したのかマリッツは腑に落ちなかった。

 多くの人間のダフネへの評判を落とすのを目的とするならば、流す噂に意外性と説得力と人を強く引き付けるような内容が必要だ。その点からすると、マリッツは怪我をした人間に悪いと思いながらも、話題の選択が地味で効果が薄いと思った。

 ならば、只の愉快犯かと別の目的を考えてみる。そんな暇人が居るのだろうかとマリッツは疑問に思う。居るなら居たで、一つの噂を流した後は何もせずに傍観し過ぎている気がした。愉快犯なので一つ噂を流した時点で飽きてしまったという可能性もある。

 あるいは本当に告発なのか、と胸中でそんな考えを思い描いたが、マリッツは首をかしげた。

 そもそも噂を否定するにも信じ込むにも、ダフネと会ってからまだそんなに長い時間が過ぎた訳ではない。なので、判断する材料が少ないのだ。敢えて今の段階で判断するなら、マリッツの見たところ、ダフネは面倒を嫌うようなので、能動的に相手が怪我をするように仕向けることは無いような気がした。そんな結論も自分を研究室に拾ってくれた事で、多少の色眼鏡が入っている可能性もある。

 どちらにせよ、相手がまだ次の動きを見せていないので対処のしようが無いとマリッツは判断して、ほんの少し入っていた肩の力を抜く。そして、相手が次にどんな行動に移るかを気を付けることにした。



 それから十日余り経ってもなんの動きもなかった。

(なんだったんだ! まさか本当に愉快犯だったのか……!)

 気を張り過ぎてぐったりしながらマリッツは胸中で愚痴る。新しい噂も無いので、ぴりぴりした周りからの視線もだいぶ和らいできた。なので気を張っているマリッツが勝手に消耗している状態だ。

(目的は俺が考え過ぎて研究の進捗が滞ることだったのか……? それなら大成功だな。……んな馬鹿な)

 寝不足と疲労でマリッツはとりとめのない考えを思い描いては否定した。

 あまりにマリッツの顔色が悪く見えたのか、普段、資料を睨んで唸っている時でさえマリッツから尋ねなければ声を掛けなかったダフネが「何かあったのか」と聞いてくる始末だ。

 その時にマリッツは特に噂の事を話題にせずに言葉を濁した。今は噂が流れているだけで不審な行動をしている人物や、何らかの対処の決め手になるような物事を見つけた訳ではない。杞憂で終わるかもしれない話題をダフネに伝えるのは躊躇われた。そもそもすでに耳に入っている話題かもしれない。

 マリッツは物事を判断する余裕を取り戻すため、入り過ぎていた力を抜くように深く息を吐いた。

 当面はいつものように過ごそうと研究の補填となる資料を借りに、課程修了者に対して解放されている資料の保管庫に足を向けた。

 そこで先日声を掛けてきた者とは別の同期と顔を合わせた。

 修了課程ぎりぎりのマリッツとは違い、同期の中でも首位争いをしていた内の一人だ。とりあえずマリッツは愛想の良さそうな表情を作って会釈して通り過ぎようとした。

「お前、ちょっと待て」

 あまり好意的でない声音でマリッツは呼び止められた。

「ええと、なんでしょう?」

「ちょっと顔を貸せ」

 マリッツが問うと有無を言わせない口調で続けられた。マリッツは従うかどうか迷ったが、上手い断りの文句が思いつかなかった。流布されている噂と関係があるのかとも思い、歩みを進めた相手に付いていった。

 連れてこられた場所は人の利用があまりない中庭の隅だった。マリッツは相手が何を言うのかと内心身構えながら待った。

「……馬鹿にしているのか」

 相手から言われた言葉はマリッツには身に覚えの無いものだった。

「何の話でしょうか」

「しらばくれるな。二つ名に取り入って、事故を装って研究室を閉鎖させた挙句に無様な姿を笑いにきたんだろう」

 マリッツは相手の言葉を反芻する。どうやら同期はダフネが事故起こした噂を信じ、その事故の首謀者がマリッツだという主張をしていると気付く。

「…………俺が?!」

 予想していなかった方向だったために、相手が言ったことに対しての反応が遅れた。そんなマリッツの反応は、同期に対してわざとらしく驚いてみせたように映ったようだ。

「馬鹿にしやがって……」

 同期は強い怒りを含んだ声を漏らすと、握りしめた拳に魔力を纏わせ始める。マリッツは同期の行動にぎょっと身をすくませる。

 学園で学ぶ条件の呪いは一生外れない。感情の高ぶりや防御的な反射からの魔術式構築があるため、現段階の同期の行動では、呪いは発動しない。だが、魔術を発動させれば、植え付けられた呪いが、体内にある魔術を構築するための器官に瑕を付ける。

 それは生きるのには何ら問題もない呪いだ。だが、同期がどんな目的で学園を訪れたのかは分からない。だが、首位にまで登り詰めるほどに力を注いだものをこんな形で失わせることになれば、その後の生に忌避と後悔を抱くのではないのか。そんなものを抱かせるのが、この学園に逃げるように身を寄せた自分では、あまりに天秤が釣り合わないとマリッツは思う。

 相手を止める言葉をマリッツは必死に探すが、誤解をされている上に怒りを煽るような言動をした自覚があるので、むしろ下手に言葉を掛けることが引き金になりかねないと言いよどむ。

 この事態に対する補填額や治療費、更には相手の術を防ぐために魔術を展開するか否かがマリッツの頭の中でぐるぐると回る。その間にも魔術式は組み立てられ、纏う魔力が強まっていく。

 しかし、同期が魔術を発動させることはなかった。その視線が自分の背後へと向けられているのを見て、マリッツは己に近づく足音に気付いた。

 マリッツが後ろを振り返るよりも先に、近付いてきた者がその襟首を掴み、強い力で後方へと投げ飛ばす。

「――っ!!」

 そのままマリッツは中庭の草の上を転がる。草まみれになりつつ、マリッツは自分を投げ飛ばした相手を見る。その人物は同期と向かい合っているのでマリッツからは後ろ姿しか見えない。整えられた長い髪は翠玉を薄く溶かしたような色だ。そんな儚いような印象とは違い、マリッツが転がされた距離は長く、かなりの膂力の持ち主のようだ。

「なんだ。あんたも二つ名やそいつを庇うのか」

 同期は第三者が現れたことで、纏わせた魔力を霧散させたものの、険しい表情のままに言葉を紡ぐ。

「……私の読書の時間を奪う者は二つ名であっても潰しますよ」

 言葉遣いに粗雑さはなかったが、苛立ちを無理矢理抑えたような平坦な声音が空気を叩き、聞く者の身をすくませた。

「それで、貴方はこの諍いをまだ続けるつもりですか?」

 薄翠玉の髪の人物は、先ほどより軽めの口調で同期に問いかけた。同期は無言で拳をほどくときびすを返して去っていった。

 その後ろ姿が通路の奥へ消えると、薄翠玉の髪の人物はほっと力を抜くように息を吐いた。マリッツはその様子を見て、最初の印象よりも心根の優しい人なのではないかと思った。

 その人物はくるりとマリッツに向き直る。思っていたよりも厳しい表情がマリッツに向けられる。

「……っ!?」

 マリッツは思わず息を飲む。

「――貴方が所属する研究室の室長に話したいことがあるのですが」

 その声には同期と相対していた時より、殊更に苛立ちの感情が含まれていた。



「すみません。貴方に対して怒るのは筋違いでした」

 あまりの迫力に硬直したマリッツに対してその人物は丁寧に謝った。

「私の名前はレトと言います。そちらの研究室で室長を待たせてもらっても良いですか?」

 先ほどまでの態度を切り替えて、そんな要求を口にしたレトの様子をそれとなく見やるが、マリッツの目には怒りを取り繕ったようには見えなかった。

 レトの要求を飲むことに迷いはあったものの、マリッツは断ることが出来なかった。

 とっさに上手い言葉を考えるのが苦手だということもあるが、同期を見送った後の所作が頭の端に残っていた。もちろん、それすら演技だったという可能性もあるのだが。

「ええと、分かりました。どんな用事ですか?」

「そうですね。頼まれていたことの報告のようなものです」

 なんとはなしに訊いた問いだったが、その答えは全てを語らぬ含むものだった。

 ダフネとなんらかの密約が交わされていて、答えられなかったのかもしれないが、マリッツは少しばかり警戒心を持った。

 会話して相手の人となりを確認するべきだと思い、他愛ない話題をひねり出すために、研究室に向かう道すがら、マリッツはぐるぐると思考を巡らせる。

 沈黙したマリッツを尻目に、レトはおもむろに口を開いた。


「貴方は、所属している研究所の室長を――ダフネのことを信用出来ると思っていますか」


 あつらえたように、レトはそんな問いをマリッツに投げたのだった。 

 その声音は、不審に思う心を押し殺したものでもなく、かといって、肯定を切に望んでいるようでもなかった。レトは真っ直ぐ前を見据えて、足を止めることなく進む。その姿は、レトの有り様を表している気がした。

 マリッツはレトの意図を真に理解することは出来なかったが、ダフネに抱いている感情の一端には触れられた。レトのことは、まだ敵とも味方とも断定することは出来ないが、少なくとも真摯に向き合ってくれるのではないかと思えた。

 レトの偽らざる感情に感化されて、マリッツもまた、偽らぬ答えを返していた。

「まだ、知り合ってそれほど月日が経っていないので分かりません」

 正直過ぎる答えに、レトが珍妙なものを見るような目をマリッツに向ける。

「いや、疑わしいとか、そういう話ではなくて、人となりがまだ分かってないってだけで……!」

 その視線に気付いたマリッツは慌ててフォローを入れる。

「ええと、でもたぶん、ウチの室長はそんなに悪い人ではないと思いますよ……?」

 本心をそのまま述べているために、大いに説得力に欠ける、弁明にすらなっていない言葉になった。

 しかし、レトはそれを聞いて、ほんの少し口元を緩めた。

「貴方“も”おかしな人なんですね」

 侮蔑とも捉えかねない言葉だが、レトのなんの気のない声に不快感なく響いた。

「レトさんって割とあけすけなんですね」

 マリッツの言葉に、ほんの少し含まれた呆れを感じたのか、レトは少しだけむすりとする。

「私はそこまで考えなしではありませんが?」

 しかし、口にしてから何かに思い当たったのか、レトが顎に手をやり考え込む。

「……すみません」

「ええと、なんです?」

 レトの唐突な謝罪にマリッツは身構える。

「事故の噂を流したのは私です」

「えっ」

「結果を焦り過ぎて手段を誤りました。大変なコトを避けられて良かったです」

「な、なるほど……?」

 思わぬところで頭を悩ませていた犯人が見つかったのと安堵と共に、自業自得ではあるが消耗していった日々が甦る。だが、レトのすました様子に、言うべき非難の言葉を見失い、マリッツはなんとかそんな返事をした。

 ほんのわずかだけ沈黙が降りる。

 歩みを進めながら、マリッツはレトに尋ねる。

「……レトさんは、ウチの室長がやったと思っているんですか?」

「さぁ、どうなんでしょうね」

 言いながらレトは軽く肩をすくめただけだった。

 それから研究室に着くまで、お互いに言葉を交わすことはなかった。



 マリッツがレトを連れて研究室へ戻ると、ダフネが戻ってきており、机の上に並べた資料を読んでいるところだった。部屋に入ってきた二人に気付くと朗らかに笑って応える。

「よう、おかえり。レトさんはしばらくぶり」

「……どうも」

 ダフネとは対照的にレトは渋い声で返した。その後にひと呼吸置いて何かを言いかけるが、そのまま口をつぐむ。

 マリッツはレトの様子に席を外した方が良いかと視線をダフネに向ける。しかし、ダフネは気にした風でもなく口を開いた。

「そちらが半年見てみた判断を聞かせてもらっていいかな」

 半年とはマリッツがダフネの研究室に所属する前の話だ。レトはちらりとマリッツを見たが促されるままに話の続きを始めた。

「半年間こちらに動きを悟らせないまま事を進めた抜け目の無い人間か、加害の方ではなかったか、と言ったところですかね」

「あれぇ?! 思ったよりも疑われてる!」

 レトの低い声と厳しい視線に、展開されている話題は、学園で起きたことよりも物騒な内容だと示唆しているように思わされた。何事かとマリッツはダフネを見るが、当人は困ったように頬を掻いていて話している内容にそぐわない軽さに見えた。

「……大多数の意見という訳ではありませんが、私一人の意見という訳でもありませんからね」

「一体何の話なんですか」

 恐る恐るマリッツは聞いてみた。

「半年前から魔術師の病死や事故がいくらか続けて起こってるらしくて、その犯人じゃないかって疑われててな」

 マリッツの予想以上に深刻な状況が軽い口調で話された。そんなダフネからは万全な対策をしてあるから問題ないといった安心感も、全く信じていないから問題にしていないといった軽さもマリッツには感じられなかった。どんな結果になろうとも無関心なのではないかとさえ思われた。

 息が詰まる。資料を読み込んでいた時に抱えた不安がマリッツを焼く。

「あんたは言われるままに犯人にされて死ぬつもりなのか!」

 自分でも驚くほどの大声でマリッツは叫んでいた。

「いや、そういうつもりは無いんだが……」

 マリッツの視線と叫びを真正面から受けて、ダフネはやんわりと否定したものの、その言葉に説得力は今一つ無かった。

 二人のやり取りを見ていたレトが口を開く。

「釣り餌になりませんか」

 その言葉を聞いたダフネが眉を寄せる。

「いや、レトさんに頼まれたのは私が信頼出来る人間かどうか確かめるまでだったろう。それ以上探りを入れるのは危ないんじゃないのか」

 提案に気が進まないような声音でダフネは言った。

「相手にしてみれば、もうすでに同じ事かもしれません。それならばとっとと犯人を引きずり出す方法を考えた方が建設的な気がします」

「なんか物騒だな! 落ち着いて本を読めない事がめちゃめちゃ堪えてないか」

 畳みかけるレトを、ダフネは慌てて宥めようとした。

「私の話は良いんです。この件に関するものかは分かりませんが、そちらの方も怪我をしそうになった事ですし、早めに対処をした方が良くはありませんか?」

 しれっとした表情でその原因を作ったレトが言う。繊細な見た目とは違って、割と目的のためには人をも巻き込むような策を練り、強かに立ち回る人だとマリッツは思った。

 ダフネは渋い顔で思案する。

「半年前に起きた事はほとんど白という話を聞いていた。今はどうなんだ」

「……濃いめの灰色が加わりました」

 レトの言葉にダフネは更に表情を厳しくした。そしておもむろに息を深く吐いてからダフネは口を開く。

「わかった。レトさんに協力するよ。でも、身内に止められたりしたら……」

「すでに許可は得ています」

「そうか」

「あの、それなら自分はどうしたら……」

 とんとん拍子で進んでいく話に置いていかれ、おずおずと手を挙げたマリッツの言葉に、ダフネとレトは顔を見合わせた。


 - - -


「なんか急な話ですみません」

「いや、こちらもちょっと困ってた事態をなんとかしてもらったみたいで、室長は逆に助かったと言っていたよ」

 石畳の通路を進みながら縮こまって謝るマリッツに、相手はそんな事を言った。 

 ダフネがレトと共に事件の下調べをする事になり、研究室を長く不在にしてしまう可能性があるので、ダフネが知っている人物に、所属する研究室の管理を代替してもらうことになった。その人物というのが、マリッツが最初に警戒して即決をしなかったことを悔やんだ室長であった。

 思わぬ所に縁が繋がっているのだな、と改めてマリッツは感じた。

「それじゃあ、元の所で研究していたものの続きをこちらでもやるのかな」

「ええ、そうですね。そんな感じです……」

「共同研究の資料集めに行くだけなんだろう。すぐに戻って声を掛けられるだろうから、あんまり気を落とさないようにね」

 覇気のないマリッツに研究員がそんな言葉を掛ける。

「……そうですね。ありがとうございます」

 マリッツは肯定の返事をして頷いた。

(そもそも出会ってあまり時間が経っていないし、自分の室長の人間関係も把握してないんだから、置いていかれても仕方のないことではあるんだ。……凹むけども)

 頭の中で冷静に分析しようとしてマリッツは気分が沈みかけた。ほんの少し息を吐きだす。

(だから、出来ることを積んでいって信頼してもらおう)

 マリッツは気を取り直して新しい研究室へ向かっていった。

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