第九話 世はふたたび動き出す



大阪城下。

世界は、新しく生まれ変わる宿命を得た。


雲は晴れ、人々に、これからの世界を変える決意を生んだ。

現人神は、ただの人間に戻り。

戦争は終わった。


日向は、楓の身体を支えながら。

ふと思い出した。

帝の力が完全に消えて。

最後に”隠されていた過去”を思い出した。


 日向は楓を見つめ、そして、もう一度、ぎゅっと抱きしめた。




数日後。


 帝や遊虎の葬儀を終え、悲しみが、時間によって少しずつ受け入れられるころ。

 名古屋城に、人々は集まった。


 その大広間の部隊には、緑色の羽織を羽織った、名古屋戦闘部隊――改め。

 名古屋治安警察部隊の、一番隊長の少女が立っていた。

 その名は、朝日奈 日向。


 黒菊刀を帯刀した日向は、共にならぶ、元六死外道の子孫や。

 名隊の二番隊隊長の柴波たちとともに、大広間に並ぶ、名隊員を見下ろしていた。


「これから、”日本国”の新しい体制を発表する」


 日向は名古屋治安警察部隊の、一番隊長として、これからの世のために、動き出した。

 これから、それぞれの国を”県”とし、大陸を日本国として、統治することを発表した。


 政治の中心は、関東に。

 それぞれの場所に、それぞれの県長をおき、皆で日本をまとめることになった。

 世界は、新しい世代により、どんどん新しくなっていく。


 いまだ、心の傷が言えるのには時間がかかり、飲み込めない者も多くいる。

 けれど、託された者たちは、少しずつ、光ある世界を進んでいる。




 桜の咲く、名古屋城。

 新しい体制で、様々な業務に追われるなか、日向は、ふいに誘われるように、名古屋城の城下町にすすんだ。


 そこにある、名古屋の戦学にやってきた。

 その、裏庭。

 ここには、だれもこない。

 日向の見つけた、秘密の場所だ。


 そこに、彼はいた。


「楓、久しぶり」

 桜銀色の髪と、銀色の簪でまとめた――楓は、ゆっくりと振り返った。


「ええ、久しぶり、日向」

 

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