第二章 狂瀾怒濤 名隊五番隊編

第〇話 臥薪嘗胆 大阪国の少年


一九〇〇年 四月


 たった一ヶ月の戦争を経て、関西州かんさいしゅうの大阪国は、四国・中国州に勝利した。


 州都山口国の下関にて、四国・中国州が大阪国に併合され、実質の植民地となる『下関条約』が結ばれた。


 他国を植民地化する事例は、大日本大陸では初のことだった。



 大阪国は初のとして恐れられるとともに全国から非難の目を向けられた。


 そしてその『下関条約』の締結と同時に、


 全国に『』が声明された。



【我々大阪国家は、未開拓地を除く六つの全州を大阪国家の配下におくことを宣言する。これに逆らう州は武力にて制圧する。】



この宣言は全州を巻き込む、『第二次戦国時代』の始まりとなった。






   ◆






黙祷もくとうーっ」



 大阪国州都大阪城の前。

 一〇〇〇を超える兵士、戦学制せんがくせいが集まり、目を閉じていた。


『下関条約』締結後、兵士たちは戦死した兵士への追悼式を行っていた。




ごうさん……」


 城下を埋め尽くす隊員の中、紅の燃えるような髪をした少年が唇を噛みしめて拳を固く握った。


 先の戦で空いた席を埋めるように、再編成された『大隊だいたい』。




 その日、大阪国に最年少の隊長が生まれた。


 少年の名前は火神ひのかみ あかつき


 一六歳の戦学高等部四年生で、燃えるような紅の髪に夕焼けの瞳をした少年。


 小柄な体で大きな双剣を操る。



 暁は二年前に大阪国の裏切り者に殺された『大隊』戦闘部四番隊長、芹沢豪の愛弟子で、いままでは『大隊』にすら所属していなかった。


 『大隊』に所属せずにそのまま隊長になる事例はなく、周囲からは批判の声が相次いだ。

 それでも、暁は、最年少で、『大隊』の隊長に選ばれたのだ。


 跪く暁の前には『大隊』戦闘部一番隊長であり大阪国の王が立っている。


 その手には、紅の隊長用軍衣。

 袖口には金色の七本の線が引かれている。

 七番隊長の証だ。

 肩章には金糸で、戦闘部を表す牡丹の花が二つ刺繍されている。



「ここに、火神暁の『大阪本部直属部隊』戦闘部七番隊長就任を証明する」


 王が暁の肩に軍衣をかける。




(豪さん……。二年前、あなたが死んでから、この二年、死ぬ気で生き抜いた)


 軍衣をぐっと握った。




「必ず、仇をとります」




 その日は、一人の少年が復讐を再決意した日となった。


 

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