第4話 絵を描くのやっぱり大好きなんだ
美術の授業の後、国語、算数などの授業が行われました。タヌキの子の心はほてっていました。タヌキの子は思わずつぶやきます。
「やっぱりイラストを描くのは楽しいなあ」
思わず目がうるんでしまいました。タヌキの子は涙がこぼれないように天をあおぎます。
放課後、授業が終わったと同時にリュックサックに教科書とスケッチブックを詰めて、さっさと帰ろうとしました。
すると、
「おい、待て!」
カラスくんが腕組みして仁王さまのように突っ立っていました。
「なにかよう?」
「もう帰るのか?」
「うん。友達もいないし」
カラスくんがノートとある漫画を渡してきました。
「この漫画なんだけど」
タヌキの子はノートと漫画を受け取ります。それは今流行りの漫画である『にゃんこ丸』でした。『にゃんこ丸』という漫画の話は異世界に転生し忍者となった、にゃんこ丸、というネコが江戸時代の世界を仲間たちのネコと一緒に駆け回る話です。その漫画はぐうぜんにもタヌキの子が引きこもっていたころに生きることを勇気づけられた漫画でした。
「中見ていい?」
「いいよ」
タヌキの子は漫画をぱらぱらとめくります。カラスくんは続けます。
「この漫画の、にゃんこ丸、描いてくれない?」
イラストを描けると思うと心がわくわくどきどきします。
「分かった」
狸の子は背負っているリュックサックを下ろすと筆箱を、そして中から鉛筆と消しゴムを取り出すと、ノートを開きます。
「本当に描いていいの?」
「うん」
タヌキの子は薄く線をひいてリンカクを描き始めました。
どういうイラストにしようかなと悩みます。
迷った結果、にゃんこ丸と仲間たちが両手をブイにして目を輝かせているイラストを描こうと思い立ちました。
鉛筆でにゃんこ丸を描いては消しゴムで消しまた描いては繰り返しました。
そうして『にゃんこ丸』の主人公、にゃんこ丸を描き上げました。
「カラスくん、出来たよ。にゃんこ丸!」
カラスくんににゃんこ丸を描いたノートをわたします。
カラスくんはノートを受け取るとノートに描いてあるにゃんこ丸をじっと眺めます。そしてへへっ~とにやけました。
その様子をみてタヌキの子くんは思わずおかしくなってしまったのかそれとも緊張なのか、ふっと笑ってしまいました。
いきなりカラスくんがなぐりかかってきました。カラスくんがタヌキの子くんの右のほおを思い切りパンチしました。タヌキの子くんは壁際まで吹っ飛びます。思わず叫びます。
「なんでなぐるんだよ。望むようにイラスト描いてあげたじゃん!」
カラスくんは首をぶんぶんと振りました。
「うるさい! うるさい! うるさい!」
カラスくんは続けます。
「そういうところが嫌いなんだよ」
「どういうところだよ」
「おまえが絵をかいているときに目をキラキラさせているところとか本当に大っ嫌いだ」
「むかつくんだよ」
カラスくんはなおもぽかぽかとなぐり続けてきます。思わずタヌキの子は両手で頭を抱えて体を丸めました。
「悔しかったらなぐり返して来いよ」
なおもタヌキの子は両手で頭を抱えて体を
抱えています。
「なあ、早く!」
カラスくんが先ほど渡したイラストをびりびり破きました。やっぱりタヌキの子は目をつぶって頭を抱えて丸まっています。
「こっち見ろよ」
タヌキの子くんはちらっとカラスくんのほうを見ました。すると、タヌキの子くんが一生懸命に描いた、にゃんこ丸、のイラストがびりびり破かれていました。
そのとき、タヌキの子くんの頭の中が真っ赤に染まりました。頭の中ににごった血液がどろどろどろどろと流れているような感じです。
「こんにゃろー」
タヌキの子くんはカラスくんになぐりかかっていきました。
ぽかぽかぽかぽか
どすんどすんどすん
ぽかぽかぽかぽか
どすんどすんどすん
しばらくなぐり合っていると、イタチ先生がどこからかやってきました。
「こらっ! そこケンカしない!」
タヌキの子くんとカラスくんは相変わらずなぐりあっています。
ぽかぽかぽかぽか
どすんどすんどすん
ぽかぽかぽかぽか
どすんどすんどすん
イタチ先生は二人をひきはがします。
「ケンカの原因は何かね!」
イタチ先生は動き回って、はあはあと荒い息を吐いています。
タヌキの子くんが叫びます。
「カラスくんが、ぼくの描いたイラストを破って捨てたんだ!」
イタチ先生がカラスくんのほうをみます。
「カラスくん、どうしてタヌキの子くんのイラストを破ったのかな」
カラスくんが叫びます。
「こいつが目をきらきらさせてイラストを描いているのが悪いんだよ! ちゃんと勉強しろよ」
タヌキの子くんはまたカラスくんにパンチを食らわせます。カラスくんがタヌキの子くんにキックを食らわせました。
「こらこらこら、ケンカはやめなさい」
イタチ先生がタヌキの子くんとカラスくんの間に割り込んできました。
「二人とも反省文だ!」
教室で反省文を書かせられます。教室で反省文を書いているとカラスくんがぽつんと話してきます。
「おまえってバカなの?」
「どうしてさ?」
「お前笑われても絵描いているじゃん。嫌にならないの?」
あんだけ、僕のイラストを破ったり花吹雪にして外に散らしたりしたのにまだそんなことを言うのかと心の底からあきれかえりました。思わずカラスくんの顔をまじまじと眺めます。カラスくんの顔は大真面目で真顔でむしろ怖いくらいでした。
カラスくんがその真顔で怖いくらい真剣な声、むき出しの刀が月にきらめいているような生身の声でたずねてきます。
「イラスト描くの嫌にならないの?」
タヌキの子くんは、ひっ、とおびえてしまい声が出ません。カラスくんがまた同じことを言いました。
「なあ、答えろよ」
タヌキの子くんはぼそぼそと答えます。
「一時はきらいになったんだけどね」
「うん」
「でも、やっぱりイラストを描くのは楽しいよ。創作は人を元気づけると思うよ」
「そうなの?」
「家で引きこもっていたころ死のうとしたけど漫画の続きが読みたくて生きていたって時があったんだよ」
カラスくんが
「そういや、お前。学校に来ていないときがあったな」
「そうこうしている内に自分でも漫画を描くことが楽しくなっちゃった。生きる原動力になったんだよ」
タヌキの子くんはふええ~んと泣いてしまいました。カラスくんが、
「下手でも?」
「うん。下手でも」
カラスくんは、ただ一言言いました。
「あっそ」
と。それから二人はだまって反省文を書きました。
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