第5話 ぼくたちのイラストは下手だけど……
次の日、朝学校に行き、自分の席に荷物を置いて座りました。机の中に教科書とノート、筆箱とそしてスケッチブックを入れます。
服を仰いで中に五月の風を入れます。じわりとした汗をかいた肌にひんやりとした冷たい風が吹き通ります。しばらく服をぱたぱたと仰いで風を起こしています。
涼んでいると、いつの間にかカラスくんが近くにやってきました。タヌキの子くんの顔をまっすぐに見ています。
「おい! タヌキの子!」
タヌキの子くんはカラスくんのほうをじっと眺めます。
「どうしたの?」
「実はこれを見てくれないか?」
カラスくんはノートを手に持っています。そのノートをタヌキの子くんに差し出します。
「なに?」
「とりあえずノートを開いてくれないか?」
言われたとおりにタヌキの子くんはノートを開きます。すると幼稚園児が描いたようなイラストが描かれています。一枚ずつノートをめくります。タヌキの子くんはたずねます。
「だれが描いたイラスト?」
カラスくんは、むねをそらして言います。
「ぼくだよ」
そのとき、タヌキの子くんは
「ふふっ」
と笑ってしまいました。カラスくんは叫びます。
「こんにゃろー! 笑いやがったな!」
そして、タヌキの子くんのむなぐらをつかもうとします。タヌキの子くんが後ろに少し下がると、カラスくんをかわしました。そしてこう言いました。
「僕だって笑われる絵だよ」
「だけど・・・・・・」
タヌキの子くんはカラスくんのまなこをしっかりとみすえて言います。
「僕たちのイラストは笑われるくらいに下手だけど、伸びしろ、無限大のイラストだよ。それに創作はもっとふところが大きいと思うよ」
次の日からカラスくんもイラストを描くようになりました。そしてカラスくんとタヌキの子くんはお互いにライバルとしてイラストを何十年も描き続けることになったとかならないですが、なかなか芽が出なくて下積み時代がどんどん積み上がっているとかいないとか。
とっぴんぱらぷう
とっぴんぱらぷう
この物語は
タヌキの子と
カラスくんの物語
とっぴんぱらぷう
とっぴんぱらぷう
了
タヌキの子が絵を描いて、いじめられたりもするけれどやっぱり絵を描くのを辞められない話 澄ノ字 蒼 @kotatumikan9853
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます